考える力

2015年7月 8日

サッカー歴30年の親が子どものプレーを指摘し過ぎてはダメな理由 【クラウスの金言】

練習中に自分の子どもに付きっきりで指示を出すお父さん、あなたの周りにはいませんか? 指示を出される子どもはどんな表情をしているでしょうか? その子のパフォーマンスは、お父さんの指示を受けた後に向上しているでしょうか? サッカー少年は、親とコーチが作り出す環境によって育ちます。サッカー少年が成長する環境とはどのような環境を指すのでしょうか? 子どもたちがよい環境でサッカーをするために、我々大人ができることはなんでしょうか?

ドイツサッカーの育成第一人者であるクラウス・パブスト氏に聞きました。(取材・文 中野吉之伴 写真 田丸由美子)

■試合に完敗してもゴールを決めたことは認めてあげよう

先日ドイツでこんな記事を見かけました。

「フィリップはサッカーが大好きな8歳の男の子。土曜日に試合から帰ってくると、一目散に家族がくつろぐ居間に駆け込んできました。パパとママはコーヒーを飲みながら、休みの午後を楽しんでいました。パパがフィリップに『今日の試合はどうだったんだい?』と聞くと、『あのね、3対11だったんだ!』とそれはとても嬉しそうに話すのです。パパは眉間にしわを作りながら、『そんなにボロ負けだったのに、なんでそんなに嬉しそうなんだ?』と尋ねると、フィリップはこう答えたそうです」

『パパ、だって僕は今日、ゴールを決めたんだよ!!!』

子どもたちが“負けてもいいや”と思いながらサッカーをすることはありません。他人よりよく評価してもらいたいと思うのは子どもたちが本来持つ自然な欲求だからです。ミスなんて誰もしたくないし、だれだって、かっこいいプロ選手のようなプレーをしたいと思ってボールを追っています。だから練習や試合が終わると「ミニゲームでは負けたけどゴールを決めた」「あまりボールには触れなかったけどゲームには勝てた」と何でもいいから褒めてもらいたい。そんな子どもたちに対して、評価を大人基準でばかり考えると歪みが生まれると思いませんか?

親はこうした子どものバランス感覚を養うためにもとても大切な存在です。子どもの支えになりたいとどんな親も思っていることでしょう。しかし我が子のプレーを目の前にするとなかなかそうも思ってられないのも事実あると思います。「他の子はできているのにうちの子は!」とか、「点は取ったかもしれないけど、完敗だった」とネガティブなことが頭に浮かんでしまう。

この点に関してクラウスは子どもとの最適な距離を保ち、適切なサポートをすることの難しさに理解も示しています。

「家族はとても大事な存在だ。補うことはできないんだ。子どものころだけではなく、大人になっても両親の存在は大切だ。だが、やり過ぎてしまう親というのは、残念ながら世界中どこにでもいる。この問題は本当に根深いし、難しい。僕もいろいろと試みてきたが、答えはまだ見つかっていない」

「うちのクラブにはスポーツ学を学び、卒業したコーチがいる。サッカーのことも育成のことも何でも知っているはずなんだ。でも自分の息子に対しては、他の親とまったく同じような反応をしてみせる。普段はオープンでフレンドリーなのに、自分の子どもとなると、気持ちの中で歯止めが利きにくくなることがある。その気持もわかる」

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