考える力

2013年5月 1日

「"楽しんでうまくなる"という形が理想」FCアビリスタ(埼玉県川口市)【前編】

 
一昨年に発売を開始し、大きな反響を呼んだ『知のサッカー(DVD)』シリーズ。スペインの世界的プロ育成集団サッカーサービス社が監修した『知のサッカー』は少年団からプロチームまで、様々なカテゴリーの指導者から、「参考になった」「チームのトレーニングに取り入れてみようと思います」などの感想が寄せられました。
そこで今回は、『知のサッカーを巡る旅』と題して、知のサッカー[第1巻]を活用中のチームに伺い、導入内容や効果について聞いてみることにしました。記念すべき第一回は埼玉県川口市で活動しているキッズ、ジュニア、ジュニアユース年代のクラブ、FCアビリスタさん。練習場である小学校のグラウンドへお邪魔してきました。
 
FCアビリスタは少年団の強豪ひしめく埼玉県において、存在感を発揮しているクラブです。卒団後はJクラブのjrユースに進む選手もおり、県内の大会で上位に進出する成績を残しています。今回、話を伺ったのが石塚洋輔コーチ。自身もアビリスタの前身である、小学校のクラブ出身です。
 
 

■「Habil(巧みな)」「Lista(賢い)」選手を育てる

石塚コーチは『知のサッカー』と出会った経緯について、このように語ります。「もともとサッカーの本などをよく読んでいて、知識に対する欲はあったんです。雑誌やインターネットで知のサッカーのDVDを知りまして、ヨハン・クライフスポーツ大学やカタルーニャサッカー協会で導入されていることなどから興味を持ちました。DVDを見た感想としては、自分のサッカーに対する考え方、アビリスタのサッカーに対する考え方とリンクする部分が非常に多いと感じましたね」
 
石塚コーチ、アビリスタのサッカー観とは「技術と判断を高める」というもの。「目の前の試合に勝つことだけを考えれば、足の速い選手、背の高い選手を集めて、フィジカルに頼ったサッカーをすれば、勝つ確率は高いかもしれません。しかし、それをしてしまうと、周囲との体格差やフィジカルの差がなくなってきた時点で、その選手は通用しなくなってしまいます。アビリスタではジュニア年代で身に付けるべき技術と判断を磨くこと、個を伸ばすことを大切にしています。その点は知のサッカーのコンセプトと似ていると思います」(石塚コーチ)
 
 
チーム名のアビリスタ(Habilista)とは、スペイン語のアビル「Habil(巧みな)」とリスタ「Lista(賢い)」を結びつけた造語です。「上手くて賢い選手を育てたい」という気持ちが、チーム名に込められています。
 
 

■「自分で考えて身につけたものは忘れないと思うんです」

石塚コーチはチームの方針を次のように話します。「チームとしての優先順位は、まず楽しむこと。そして技術・判断を身につけること。楽しんでうまくなるという形が理想です。長期的にひとりの選手を見た時に、その子が持っている伸びしろの最大限まで引き上げてあげられるように、考えて接していきたいと思っています」
 
技術や判断など、サッカー選手としての土台を作るために重要なことがあり、それを小学生のうちに身に付けておくと、身体が大きくなるに連れて、選手として成長することができます。その前提となるのが、サッカーを楽しむこと。楽しむためには、指導者が押し付けるのではなく、子どもたちが自分から「もっとやりたい」「うまくなりたい」という気持ちになることが大切。子どもへの声掛けは、自主性を促すためにも重要なポイントです。
 
 
「FCアビリスタでは子どもたちに、直接的には答えを教えないようにしています。成功したら、なぜうまく行ったのか、失敗したら、なぜ失敗したのか。そこで、じゃあどうすれば良かったかな? と問いかけて考えさせるように、教えすぎないことを意識しています。自分で考えて身につけたものは忘れないと思うんです。ジュニア年代の指導者は、子どもたちをどれだけ楽しませることができるかが大切だと思っています。子どもたちが、『今日はどんなテーマで、なんの練習をするのかな?』とワクワクしながらグラウンドに来るような。そうやって練習していく中で、技術や判断が身について、週末の試合で勝てたら最高ですよね」(石塚コーチ)
 
 
選手たちは練習開始前からグラウンドに集まり、校庭の遊具を使ってウォーミングアップをしたり、ボールを蹴ったりと楽しそうにしていました。子どもたちの笑顔を見ていると、全身から『サッカーが好きだ』という気持ちが発せられているようでした。サッカーを楽しみながら学び、上手くなる。その結果、試合に勝って喜ぶことができる。アビリスタには、ポジティブなサイクルが回っているようにも見えました。【後編】では、実際に行なっている練習メニューとポイントを解説してもらいます。お楽しみに!
 
「子ども達が興味を持っていることにアプローチする」FCアビリスタ(埼玉県川口市)【後編】>>
 
 
石塚 洋輔//
社会人として関東サッカーリーグなどでプレーした後、自らが小学生時代を過ごしたクラブで指導者の道へ。現在は、FCアビリスタU-12の監督を務める。
 
FCアビリスタ//
フィジカルの強さや体躯の大きさ重視せず、個人の技術と判断を活かしたスキルフルな選手の育成を目指す。個々が個性的かつ創造性の高い魅力的なプレーヤーとして、高校生年代以降も高いレベルでサッカーを続けられるよう指導している。
 
【2012年度FCアビリスタU-12】
・全日本少年サッカー大会埼玉県大会第三位
・関東少年サッカー大会第三位
・バーモントカップ全日本少年フットサル埼玉県大会第三位
 
FCアビリスタ公式ホームページ>>
 

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