テクニック

2023年7月22日

パスを最優先にしない。ドリブルとパスを使い分けてボールを保持しながら相手のゴールに迫るトレーニング

創設5年にして、2020年の「第44回全日本U-12サッカー選手権大会」で優勝し、日本一に輝いた、FCトリアネーロ町田。ハイレベルな個人の技術、判断とグループの融合をテーマに、質の高い選手を輩出している。

前回に続き、U-11、12のコーチを務める吉田武史による「個とグループを使い分けて優位性を保つ、オフェンストレーニング」。後編は「人数が増えた状況でパスとドリブルを使い分ける実践練習」をテーマに「5対3のボールポゼッション」「4対3」の様子を紹介したい。(文・鈴木智之)

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スペースがある数的優位な状況では、ドリブルで運ぶことを意識する

川崎フロンターレアカデミー出身の吉田コーチは、止める・蹴るの技術に加えて、相手を外すことや、数人で連動して崩すことなど、子どもたちにわかりやすい言葉で指導している。その様子は、前編の動画からもおわかりいただけると思う。

後編のトレーニング、最初は「5対3のボールポゼッション」。縦20m、横15mのグリッド内でボールポゼッションをし、守備側はボールを奪ったらグリッドの外に出るか(1人交代)、味方にパスをつなぐ(2人交代)。

このトレーニングで吉田コーチが強調したのが「相手がマークしずらい位置に立つこと」だ。

「相手の間など、相手が来にくい場所に立ち、食いつかせておいて広げるとか、相手を寄せておいて逆サイドを使うなど、真ん中に立っている人の関わりが大事になる」と話し、ボールを持っていないときに、常に周囲を見ながら、どこにポジションをとればいいかを考えるようにうながしていく。

トレーニングの目的はボールをポゼッションすることだが、パスだけをつなごうとしても上手くいかない。そこで重要になるのが「ドリブルとパスの使い分け」だ。

吉田コーチは「5対3の数的優位なので、スペースはあるよね。だからといって、まずパスコースを探すのではなく、ドリブルで運ぶ意識を持ちながらプレーしよう」とアドバイス。

ドリブルで前進することで、相手は中央を閉じてくる。そうするとサイドが空き、ボールを展開しやすくなる。「パスが最優先にならないように。相手をはがせるときははがそう」と、ボールを運ぶことや突破の意識を持ちながらプレーすることを強調していた。

ボールの動かし方は、相手を食いつかせておいて、できたスペースに運んで行くことが理想だ。そのためには、ボールを持っていない選手のポジショニングが重要になる。

「パスを出した後に動き直して、角度をつけたポジションをとろう。自分がいいポジションをとらないと、相手は動いてくれない。立ち位置ですべて決まるよ。ボールが来る前に、味方のボールの持ち方、守備の寄せ方を見てポジションを変えよう」

さらには、味方の選手の特徴に合わせて、周囲の選手が動くことにも言及。

「自分がボールを受けるだけでなく、コースを空けてあげて、別の選手にボールが入った後に関わるのもいいよね。全部自分が受けるのではなく、味方が受けやすくなるための動きも大事。味方の動きを見ながら動こう」

動画では、パスがつながらず、ロングキックを蹴って相手ボールになった場面でストップし、どうすれば良かったかをコーチング。わかりやすく解説しているので、ぜひ確認してほしい。

相手のゴール前ではドリブルやワンツーでDFがずれる状況を作る

後編最後のトレーニングは「4対3」。縦15m、横20mのグリッド内で4対3を実施。攻撃側がシュートを決めるか、守備がボールを奪い、ラインを突破したら終了。ボールがグリッドの外に出たら、コーチから配球する。(攻撃回数は2回、オフサイドあり)。

このトレーニングの目的は「ゴールを奪うこと」。吉田コーチは「サイドと中央のどちらから攻めるほうが速い?」と質問。子どもたちから「中から攻めたほうが速い」と答えが返ってくる。

「そうだね。パスだけにならず、2対1を利用してドリブルも使おう。そうすると相手がずれてくる。相手が中を絞ってきたら外が空く。パスだけになると相手は守りやすい。ゴールに向かって、相手のギャップにボールを運ぼう。そうしてできた変化を見て動こう」

さらには具体的な動き方、状況把握にも言及し、「攻撃側は、相手の守備がどうなっていると崩しやすい?」と問いかけていく。

「守備の3人が横並びだと、段差ができないのでスペースを使いずらい。そうならないために、相手の背後を狙う動きを入れよう。サイドの選手も、外に張っているのではなく、内側に入って行こう。そうして相手を食いつかせ、段差を使って突破できるようにしよう。味方にパスを当てて、ワンツーを入れるのもいいよね」

続いては、個で相手を外すためのポイントをレクチャー。攻撃の選手に対して「相手の体重が前に乗っているときは背中をとる。背中に体重が乗っているときは食いつかせる。タイミングを図って、逆をとることが大切。勢いでやらないこと」と、具体的な動きを指示していた。

吉田コーチの指導は的確で、主導権を握ってプレーするために必要な考え方、相手と駆け引きをする際のポイントが詰まっている。現代サッカーに求められる要素を、小学生にどう指導するのか。今回の動画はその一端を知ることができる、貴重なものになっている。

ゴール前で相手を崩すことができない、攻撃がゴールに結びつかないと悩んでいる指導者、選手はぜひ見て学んでほしい。相手を攻略するためのヒントを得ることができるはずだ。

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【講師】吉田武史/
1995年6月11日生まれ。川崎フロンターレU-15、U-18でプレーし、2020年からトリアネーロ町田で指導者としてのキャリアをスタート。現在は、U-11、U-12カテゴリの担当コーチを務める。2020年に行われた「第44回全日本U-12サッカー選手権大会」では、クラブ初となる大会優勝に貢献した。

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