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愛知のジュニアチャンピオンチームが実践するポゼッショントレーニングを少年団で実践するには?

公開:2022年4月27日 更新:2022年10月17日

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、Jクラブや街クラブの指導者が実演する、トレーニング動画を配信中だ。

動画の視聴者や読者から「トレーニングの内容が、自分のチームには難しい」「動画に出ている選手のレベルが高く、自分のチームのレベルに合わない」など、「どうやって、自分のチームに取り入れればいいの?」という悩みをいただいた。

そこで今回は、筑波大学大学院サッカーコーチング論研究室で研究活動をする傍ら、選手育成や普及活動を行う内藤清志氏に、COACH UNITED ACADEMYで配信している動画を、「どのようにアレンジすれば、自分が指導している年代やレベルのチームでも実施できるのか」をテーマに解説してもらった。

今回の対象となる動画は、愛知県のジュニアチャンピオン『FC ALONZA(アロンザ)』が実践する「個とグループで優位性を高めるポゼッショントレーニング」。どのようにアレンジすることで、選手たちのレベルに合わせていくのだろうか?(文・鈴木智之)

FC ALONZA(アロンザ)の
トレーニングの詳細はこちら

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ポゼッショントレーニングは「二人称」から始めてみる

最初のトレーニングは「3対1」。6m四方のグリッド内で、条件付きのボールポゼッションを行う。ルールは以下のとおりで、時間とともに変えていく。

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1:インサイドのみ
2:出し手はインステップのみ(ダイレクトはインサイドOK)
3:運びながら数的優位を作る
4:ワンツーを入れながら背後を取りに行く
5:中央にコーンを設置して縦パス(パス7本で1点、コーンと敵の間を通すと1点)

【内藤さんの提案】
ボールポゼッションやビルドアップに必要な要素が2つあります。それが認知や状況把握、判断などの要素からなる戦術的思考力と、ボールを操作する能力である技術力です。

また、私はトレーニングを一人称のトレーニング、二人称のトレーニング、三人称のトレーニングと表現していますが、一人称はボールと自分です。主に身体操作やボール操作など、技術力を高めるトレーニングになることが多いです。

二人称は自分と味方という部分にフォーカスしたトレーニングで、パスの出し手と受け手のタイミングやポイントのような視点です。三人称は自分と味方と相手チームです。当然のことですが、試合には相手がいるので三人称になります。

トレーニングが上手くいっていないなと感じるときは、どこに課題があるのかを見極めることが大切です。相手と味方の状況を見ながら判断はしているが、そもそも技術力が低く、狙ったところに意図したボールを蹴ることができない。それが理由でパスがつながらない場合は、一人称の練習をしましょう。

パスを出すタイミングがわからなかったり、味方の動きの逆方向に出してしまったりといった場合は、二人称のトレーニングをする必要があります。

この「3対1」のトレーニングでレベルを落とすとしたら、相手の存在をなくしてしまい、自分と味方、つまりトレーニングを二人称で行う方法が考えられます。

具体的には相手を取り除き、コーンを等間隔に3つ並べて、それぞれにビブスを着た人を立てます。コーチが3色のビブスのどれかを上げると、同じビブスの色を着た選手だけがコーンから離れ、そこに味方がパスを出すというトレーニングです。

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パスを出す選手は、3人のどの選手にもパスを出せる位置にボールを置くことに意識を向けることができますし(一人称のトレーニング)、味方の動きを見てポイントにパスを出すという二人称のトレーニングにもなります。

FC ALONZAのトレーニングは
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3対2は、守備側のどこにスペースが空いているかが見つけやすい

2つ目のトレーニングは「4対2」。

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7m四方のグリッドでロンドを行う。プレー方法としては、攻撃側は1人がグリッドの中央に入り、周囲の3人+中1人でボールを保持していく。

【内藤さんの提案】
このトレーニングで難しいのは、内側を向いて「中の選手にボールを入れる」ことを意識させることです。レベルの高くない選手からすると「なぜ?」という戦術的要素が入っている部分です。

通常4対2の場合、外側で4人が囲み、中央に守備側が2人入る形が多いと思います。このトレーニングはそうではなく、攻撃の選手があえて守備側2人の間に入ります。

結果として、そこにボールが入ると相手が内側を絞るようになり、再び外側がフリーになるという戦術的なやりとりがあります。立ち位置の説明は、先ほどの練習でいう1人称・2人称の技術が伴っていないと難しくなります。

そのため「ビルドアップ」をテーマに考えた場合、設定を3対2にして、攻撃の人数を一人減らし、攻撃を一歩通行にします。攻撃3人、守備2人と攻撃を1人減らすので、難しくなるように感じるかもしれませんが、守備の間や外側のラインと守備の間など、誰がどこを通って前進していくかといった部分にフォーカスしやすくなります。

攻撃側3人の配置は横並びではなく、前に1人、後ろに2人。もしくは前に2人、後ろに1人でもいいと思います。

人数に傾斜がある練習を「アウトナンバープレー」と言い、バスケットボールなどのトレーニングでよく用います。3対2にすると攻撃側が人数が多い分、有利になるので、守備側のどこにスペースが空いているかを見る時間が生まれます。

グリッドは縦25m、横16.5mにします。25mの縦幅を半分で区切り、前側のグリッドはオフサイドありにします。グリッド内に5人が収まることになるので、パスの移動時間が短くなることが考えられます。

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パスの移動時間が短いと、ボールを奪いに来る守備の矢印が、攻撃側に対してそこまで激しく来ることがなくなります。それでも守備側がボールを奪いに食いついてくるのであれば、背後にできたスペースを狙うこともできます。

ビルドアップでは「止める」「蹴る」に加えて、「どこに立つか」「何を見るか」が重要です。設定を3対2にすることで、「どこが空いているか」を見て、考えて立ち位置をとるようにうながすことができます。

また、グリッドを縦3つのレーンに区切ると、選手たちには「どこのレーンが空いている?」「空いているレーンにいつ走り込む?」などの声かけができます。

ビルドアップのポイントはポジションごとに優位性を作りながら、相手と出会わずにラインを越えていくことです。そのためにはパスだけでなく、「運ぶ」というドリブルの重要性にも気がつくはずです。

ドリブルしか選択肢のない中でのドリブルではなく、味方が意図的にポジションを取った上で、相手の対応次第でドリブルを選択する。その部分で再現性を生み出すことができれば、試合でのボールの流れがスムーズになると思います。

そのためには「どこに立つか」が重要になるのですが、このトレーニングは、ボール保持者のボールの持ち方や体の向きを見ながら、周囲の選手はいつ、どこに、どのタイミングで入って行ってボールを受けるかなどにフォーカスしやすくなるでしょう。

さらに発展させるなら、5対5のゲーム形式が考えられます。グリッドを半分に分け、前線2人、後方3人の布陣でゲームをします。この布陣にすることで、互いに中間ポジションを探り合いながら、誰が誰をつかむのかという判断が生じます。ボール保持側は、相手につかまれない位置をとることが大事ですし、それは3対2のトレーニングと同じです。

後方の3人の右の選手が前に出て行ったときに、守備をする方は2トップの片方がついていった方がいいのか、後ろの3人の外側の選手が前に出た方がいいのか。その判断が求められます。周囲の状況を見て、立ち位置をとることにもアプローチできるので、ぜひチャレンジしてみてください。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。

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