テクニック

2022年1月 7日

「第45回全日本U-12サッカー選手権大会」優勝。レジスタFCが貫いた「サッカーの本質」

2021年末に鹿児島で行われた、「第45回全日本U-12サッカー選手権大会」。優勝したのは埼玉県の街クラブ「レジスタFC」だった。埼玉県大会決勝で浦和レッズジュニアを下し、全国大会ではヴィッセル神戸U-12、大分トリニータU-12、鹿島アントラーズジュニアといったJクラブに完勝。攻守にハードワークし、直線的にゴールを目指すスタイルの完成度は群を抜いていた。

全国優勝は前回出場時(2015年)に続く、2度目である。セレクションをしない街クラブ、レジスタの強さの秘密はなんだろうか? 監督を務める中城勉氏の言葉とともに紐解いてみたい。(文・鈴木智之)

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(グループJ、1次ラウンド第2節。ヴィッセル神戸U-12(白)vs レジスタFC(青))

他のチームを上回っていた「相手からボールを奪う強さ」

全日本U-12サッカー選手権大会、レジスタFCの初戦の相手は西崎FC(沖縄)だった。この試合を3対0で勝利すると、2試合目は中城監督が「組み合わせが決まった時点で、神戸戦が一つのポイントだと選手たちに伝えた」と話した、ヴィッセル神戸との試合だ。

試合は開始1分に藤澤開次のゴールで先制すると、直後に同点に追いつかれたが、持ち前の素早い寄せ、攻守の切り替え、サイド攻撃が機能。五十嵐陵、山﨑佑太という攻撃のキーマンがゴールを奪い、3対1で勝利した。

試合後、中城監督は「神戸さんとは初対戦だったんですけど、一人ひとりが上手いと聞いていました。上手い相手に対して、うちのストロングポイントである『ボールを奪いに行くこと』がはまればうちのペースになるし、はまらなければ相手のゲームになると伝えました」と振り返っている。

大会を通じて、レジスタが他のチームを上回っていたのが、この『相手からボールを奪うプレー』だ。さらには、ボールを奪った後の守備から攻撃、攻撃から守備への切り替えは、目を見張るものがあった。

加えて、選手たちにはプレッシャーを受けた状態でも、正確な技術を発揮する素地が備わっており、ただがむしゃらにプレーするチームではないことは一目瞭然だ。中城監督は言う。

「当然ですが、次のステージ(中学年代)に行くと、技術的な要素が求められます。子どもたちはサッカーが好きなので、技術の練習はこちらが言わなくてもするし、練習するので上手くなります。一方で、試合を通じてハードワークすること、攻守の切り替え、球際の強さは、自分で気がつかない限り、高校生でもできない子はできません。そこは小学生のサッカーが8人制になったことで、より一層ごまかしが効かなくなったところでもあります」

小学生年代が11人制から8人制になり、ピッチが狭くなった結果、選手一人ひとりがプレーに関わる機会が増えた。おのずと球際の攻防に関わる局面も増加し、そこでの勝率が、試合の結果に影響を及ぼすことが多くなった。

「8人制になってから、より球際やハードワークを意識するようになりました。そこを大事にして育ててあげた方が、次のステージに行ったときに、例えば技術がそれほどなくても『この選手は切り替えが速い』『球際が強い』と評価してもらえるようになります。うちから少しずつJリーガーが出てきましたが、プロになった選手って、いま言っていることがだいたいできているんですよね」

ジュニアからハードワークや球際の大切さを伝えていきたい(中城監督)

レジスタ出身のJリーガーには、杉岡大暉、蓮川壮大、品田愛斗などがいる。いずれも、攻守に関わり続けるプレーと安定した技術が持ち味の選手だ。加えて、岡庭愁人(明治大学)が、2022年シーズンよりFC東京でプレーすることが決まっている。

「岡庭が良い例で、小学生の頃から切り替えは速いし、球際は強いし、負けず嫌いでした。明治大の常盤(亨太)も、攻守の切り替えが速く、予測能力とポジショニングが抜群でした。ハードワークができる選手は評価されますし、チームに必要な存在ですよね。そういう選手を、ひとりでも多く育ててられればと思っています」

中城監督は「その意味で、うちはブレずにやりたいです」と話す。

「他のチームに行ったら、それよりも他のことが大事だと言われるかもしれないけど、うちはこのやり方でプロ選手が生まれて、基準ができてきました。小学生年代は成長が早かったり、体が大きかったりすると、フィジカルやパワーで通用することがあります。でも、周りの成長とともにいずれは追いつかれて、抜かされてしまいます。それならば、いまは体が小さくても、強度の高い練習を通じて、しっかりとボールに行けるようにしたい。正しくぶつかれば、ケガをしないことも伝えたいです」

以前、COACH UNITED ACADEMYで、レジスタのトレーニングを紹介したが、筆者は当時、『中城氏はトレーニング中、選手から片時も目を離すことなく、シンクロしながらコーチングをしている。そこで強調するのが、ボールへの寄せの鋭さと、ボールを奪うこと。そしてゴールを決めるという、サッカーの本質的な部分だ』と記した。

今回、全日本U-12サッカー選手権大会で、ひさしぶりにレジスタの試合を見たが、その部分はブレるどころか、ハイプレッシャー下での技術の発揮、プレーのアイデアなど、さらに進化しているように見えた。

「目の前の頑張りが、将来につながるんです。うちはJリーグのアカデミーのように、セレクションで選手を集めているわけではないので、同じことをしたら勝てません。それもあって、選手をうまくさせるのは前提として、将来長くサッカーをする中で、自分の目標に近づいていくためには、ハードワークや球際、攻守の切り替えも大事だと、ジュニアのうちに伝えています」


(ヴィッセル神戸U-12との試合後にインタビューを受ける中城監督)

全日本U-12サッカー選手権大会では、チームのスタイル、選手の持ち味を存分に生かしたレジスタが、並み居るJクラブを波のように飲み込んだ。どこよりも、速くて、強くて、上手い。文句なしの優勝だった。

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