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テクニック

「上手い選手は身体の正面でボールが扱える」/笑顔で楽しくプレーする京都精華の個を高める練習法

公開:2021年11月19日 更新:2021年11月23日

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、テクニカルな選手の育成で、注目を集める京都精華学園高校女子サッカー部のトレーニングを紹介中だ。

後編では越智健一郎監督による判断とスキルのアップを目指すリフティングとドリブルのメニューを紹介しながら、ゲーム形式のメニューを紹介していく。いずれも、サッカーに必要なスキルと判断が自然と身に付くメニューばかりだ。(文・森田将義)

(※COACH UNITED 2021年8月16日掲載記事より転載)

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身体の正面でボールを扱うことが重要

ミスをなくすために重要な動き作りが狙いのリフティングを前編では複数紹介したが、まだまだ紹介し切れていないメニューはある。その一つが、リフティングをしながら、左右前後へと移動するメニューだ。リフティングをしていた位置から、ボールを落とさず移動する際に、足先だけでプレーしてはリフティングを継続できない。移動した先でもしっかりボールをコントロールするためには身体全体をボールの落下地点に移動しなければいけない。

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ボールに対して身体の重心を移動させる場面は、サッカーのあらゆる場面で生まれてくる。例えば、コントロールに失敗し、身体からボールが離れた瞬間に足先だけ伸ばすとマイボールにしづらいが、素早く身体の中心でボールを扱うことができれば、相手に寄せられてもしっかりマイボールにできる。

また、落下点を読む空間認知力はヘディングや背後へのボールへの対応にも活きてくる。

越智監督が育成年代やJクラブを率いる監督に「どんな選手が良い選手ですか?」と尋ねると、「ボールを正面で扱える選手」、「ボールが動いても正面にい続けられる選手」との答えが返ってきたというのも、そうしたプレーに繋がるためだ。

より遠くの落下点に移動できる選手ほど良い選手と言えるため、慣れないうちは移動した先でのコントロールが失敗しても問題はない。リフティングを重ねながら、少しずつ移動できる距離を伸ばすことを優先的に考えて欲しい。

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京都精華学園のトレーニングでは慣れてきたら、頭までの高さにボールを上げて、最初に移動した3倍の距離にチャレンジしている。

コーンドリブルは身体ごとすり抜けるイメージで行う

リフティングとともに、越智監督の象徴的なトレーニングメニューと言えるのが「ドリブル」だ。動画では、メニューのベースとなっているプロサッカーコーチ・三木利章さんにドリブル指導を受けてきた3選手に、メニュー紹介をしてもらっている。

紹介しているドリブルのコースは3種類。いずれも、インサイドロール、アウトサイドロール、足裏など複数の種類を組み合わせて、高速でカラーコーンの間をすり抜けていく。

・3つのカラーコーンを縦一直線に並べた配置(インサイドロール、アウトサイドロール、足裏などを組み合わせてドリブル)

・4つのカラーコーンを台形に配置(後ろ通し、インサイドロール、ダブルタッチを組み合わせてドリブル)

・4つのカラーコーンを縦一直線に配置(インサイドロール、後ろ通し、アウトサイドロールの順番でドリブル)

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リフティング同様、ドリブルも身体の動き作りがメニューの狙い。ボールを意識しすぎては、素早くカラーコーンの間をすり抜けられないため、身体ごとすり抜けるイメージでプレーするのがポイントだ。足先だけでなく、へそや腰など身体の中心を意識しながらドリブルをすると、きちんと身体の重心を移動してプレーできるようになる。

展開に変化をつける2種類のパス

ドリブルのメニューでは、アウトサイドを使う機会が多かったが、パス回しでも同じだ。越智監督の京都精華学園でよく行うポゼッション形式のメニューが、「6vs1で行うワンタッチのポゼッション」。実際の試合で外ばかりで回していては展開に変化が生まれないため、同じ方向に3本以上回してはいけないルールで行う。

パス回しに変化をつけるために、リターンや飛ばしのパスを入れながら、テンポよくボールを回していく。また、グリッドは設定していないが、常にコンパクトな状態を保ちながらプレーするよう心掛けている。

多くの場合はパスミスをした選手が鬼と交替するが、京都精華学園の場合、ボール回しの円から外に出た際に右側にいた選手が鬼と交替するのがルールだ。これは、パスミスが起きたとしても受ける側の選手が、しっかり身体を移動させていればミスにならないという意識を高める意味がある。

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重要なのは、京都精華学園では「渡せ」「通せ」と呼んでいる2種類のパスだ。近くにいる選手にはボールを「渡すパス」、反対サイドに展開するボールを「通すパス」と使い分けることで展開に変化をつける。

ゲームはコンパクトなコートで少人数で行う

トレーニングのラストにゲームを行うが、京都精華学園の場合は一人ひとりがボールに触る時間を増やすために、フルコートでの11対11は行わない。

カラーコーンで縦8m、横5mのグリッドを作って行う「3対3のミニゲーム」を実施する。カラーコーンで作った縦のラインを通過すれば、1点というルールだ。6vs1のポゼッション同様、パスをする際はなるべく出し所が読まれにくいアウトサイドやインステップでのパスを選択して欲しいため、インサイドのタッチでのボールロストやパスミスは、その場で腹筋1回というルールで行う。

一定の回数を重ねると5号球と3号球の2種類を使ったメニューへと移行。攻撃する際はボールを2球持っていないとドリブル通過できないルールで行う。

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重要なのは2球をマイボールにするための奪う力。機転が利く選手がいるチームの場合、相手が1人でボールを持っている選手に対して2人がかりで奪いに行くなど、守備での工夫ができるようになる。

越智監督の場合は、そうしたメニューの意図を選手には伝えず、コーチングによってヒントを与えながら、選手自身が気付いて欲しいと考えている。また、こうしたゲーム形式のメニューを行う際にも、ビブスを使わない。分かりやすい目印が無ければ、敵と味方を判別するために、顔を上げて周囲を見る習慣がつくと考えているためだ。

越智監督が紹介した今回のトレーニングは、サッカー選手に必要なスキルの向上が期待ができる内容になっており、特に各メニューのオーガナイズは様々な工夫があるので、ぜひ動画で確認してみてほしい。また、紹介してきたメニューは一人で実践できるものがたくさんあるため、自主練習にも役立ててみてはいかがだろうか。

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【講師】越智健一郎/
1974年8月20日生まれ、愛知県出身。瀬戸高校、日本体育大学出身。卒業後は愛知県内の高校での講師を経て、2006年に京都精華女子高校(現・京都精華学園高校)女子サッカー部の監督に就任。2012年には選手権3位、2014年にインターハイ準優勝を達成した。

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