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相手がいる状況でトレーニングを行う重要性/岩政大樹が考える練習の目的を明確にする「逆算型」の指導法

公開:2021年5月28日

選手の自主性というテーマは非常に難しい。教えすぎるのはよくない。それでも何も教えないと、練習が機能しない。時にこれらの二元論は「バランス」という言葉で雑に片付けられることも多いが、ではそのちょうど良い線引きはできないのだろうか。岩政大樹氏によると、以上の二元論で考えられるべきではなく、"どこ"に言及するかで分けられるべきだという。

岩政氏は言わずと知れた元プロサッカー選手であり、鹿島アントラーズや日本代表など、プロとして15年間にわたり活躍。選手として最後に在籍した東京ユナイテッドFCや東京大学でコーチを経験し、そこから指導者としてのキャリアがスタート。その後、文化学園大学杉並中学・高等学校で2年間、現在は上武大学で指導を行っている。

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、そんなプロとしても経験豊富な岩政氏に、自身が指導者となってこれまでにまとめてきた指導者としての在り方や考え方を共有していただいた。(文・内藤秀明)

(※COACH UNITED 2021年3月22日掲載記事より転載)

この内容を動画で詳しく見る

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指導者として意識すべきこと

まず、岩政氏は指導者として選手へ言葉をかけるときに意識していることについて語った。

「私が現役だったときの経験から言うと、プレー中は選手の頭の中に『判断基準・原則・コツ』が浮かんでおり、その後『判断』が下され、『現象』として目に見える形でプレーが現れます。その中で指導者が意識すべきなのは、選手に対して『判断基準・原則・コツ』を明示した上で、各々が下す『判断』に関しては選手自身に考えさせる余白を残しておくことです」

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岩政氏自身の選手時代にあった経験からも、プレー中に自らが下した判断に関して指導者に多くのことを言われるのは嫌だったと語っており、その場合、選手は窮屈感を感じるのだそう。あくまで指導者は、選手に対してはプレーの基準について話をすべきであり、その基準を言語化したものを岩政氏は「コンセプトワード」として選手に伝えているのだという。

指導に必要な「判断基準・原則・コツ」をまとめたコンセプトワード

指導者が、チームとしてプレーするためのコンセプトとなる「判断基準・原則・コツ」を自分でまとめ、それらを実際にプレーする選手へ伝えるために言語化したものを岩政氏は「コンセプトワード」と呼んでいる。

「コンセプトワードを設定し、練習から共通言語として選手と共有することで、そのコンセプトワードを意識するようになり、高い再現性をもって選手間で同じ絵を描けるようになります。特に攻撃のコンセプトワードを設定するときは、"相手"という存在を含めた考えを提示してあげることが非常に重要です。例えば『5レーン理論』を使って指導する際にも、そこに"相手"を含めてあげないと、試合で対応されてしまったときに選手はどう動けばいいか分からなくなってしまいます」

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サッカーという競技には常に"相手"がいることを、ピッチの外にいる指導者も忘れてはならない。

選手ができることを徐々に広げていく「積み上げ型」の指導は行わない

岩政氏には、実際に選手を指導する手順についても伺った。

「私は、最初に基礎技術を身につけさせてから、選手ができることや能力を徐々に広げていく『積み上げ型』の指導は行いません。もちろん基礎技術は必要ですが、私のアプローチとしては『逆算型』で指導を行っていきます。まず選手に対してプレーする上での原則を提示し、その原則に従ってプレーをさせます。その過程で実行しようとしたプレーがうまくいかなかったときに、はじめて足りなかった技術や能力を補うような指導を行います」

目的から逆算した手順で指導を行うのが岩政氏の考える効果的な指導方法であり、選手も「何のために練習をしているのか」が分かるため、前向きに取り組むことができるという。

具体的には、岩政氏は自身で考案した「トライアングル→ダイアモンド」という攻撃におけるコンセプトワードを最初に教える。簡単に説明すると、味方がボールを持っているときのパスコース作りにおける原則である。その「トライアングル→ダイアモンド」を習得する過程で生じた足りない技術や能力を選手に自覚させた上で、逆算的に後から必要な技術を身につけさせていくのだ。

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また、岩政氏が選手を指導する上で注意しているのが、サッカーの全体像までを提示しないこと。あくまで選手に提示するのをコンセプトワードという言葉だけに留めることで、その先にある共通の全体像を描かせる作業は選手たちに委ね、自分たちでそのイメージを見つけさせるのだという。

岩政氏の持つコンセプトワードには、チーム全体の連動に関する「ドミノ」や、崩しの際のオフザボールの動きに関する「セナラン」といった非常に興味深いものまで存在する。その具体的な内容については動画をご覧いただきたい。

この内容を動画で詳しく見る

【講師】岩政大樹/
2004年、大学卒業後に鹿島アントラーズに入団し、リーグ優勝を3回経験するなど活躍。2008年には日本代表に初招集された。2014年に10年在籍した鹿島を退団し、BECテロ・サーサナFC、ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドなどでプレーした後、2018年に現役引退。現在は上武大学サッカー部の監督を務めるほか、解説者としてメディアに出演するなど多方面で活躍している。

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