テクニック

2021年3月12日

サッカーは相手ありきのスポーツ。相手の守備戦術を理解し駆け引きを楽しむ/RIP ACEの戦術的トレーニング

COACH UNITED ACADEMYでは、2016年のクラブユース選手権(U-15)でベスト8という好成績を残し、Jリーグのアカデミーや、高体連の強豪校で活躍する選手を数多く輩出している大阪府堺市のRIP ACE SCジュニアユース(U-15)のトレーニングを紹介。

プレーモデルを基準とした戦術的ピリオダイゼーションを取り入れているRIP ACE SC。「バイタルエリアの攻略」をテーマにした後編では、相手の守備戦術に応じたポジショニングと駆け引きについて今村康太監督にトレーニングを実践してもらった。(文:貞永晃二)

(※COACH UNITED 2018年5月21日掲載記事より転載)

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相手の守備戦術を理解しポジショニングと駆け引きを行う

今村監督によれば、前編のトレーニングから「相手の守備戦術を理解し、自分たちの立ち位置を変えバイタルエリアを奪う」という狙いが追加された。

後編最初のトレーニングは「5対5+1フリーマン」(フリーマンがアンカー役で攻撃側につく)(図参照)。

フリーマンを使ってボールを回し、守備側のウラを狙うトレーニングではあるが、今村監督は「(攻撃は)4バック、アンカー、トップ下。守備は中盤4枚とFWね」とポジションを意識するように指示を出した。リップエースが採るシステムが主に「1-4-1-4-1」であるので、この指示で攻撃方向が決まり、個々の選手はポジションのバランスを考えてプレーすることにつながる。これがRIP ACEの特徴である自チームのプレーモデルに即したトレーニングである。

今村監督は、「どこを狙うの?バイタルだよ」、「守備はタテもヨコもコンパクト!」と攻守のポイントを示し、「はがすのか、タテに刺すのかでポジションを変えろ!」、「優先順位は前、最初から後ろ(=バックパス)を選ぶな」、「どうしたいのか立ち位置を決めて判断して!」と意図のないプレーには厳しい声を掛ける。

守備側にも、「いくらギャップを締めても近づかれたら通っちゃうよ。アプローチに行かないと!」、「行ったら、寄せろ!」とアグレッシブさを要求しながら、「罠を仕掛けろ。わざと空けておいて、蹴られた瞬間に動く!」と守備時の駆け引きのヒントを与えることも忘れてはいけないポイントだろう。

トレーニング中に守備側の配置を変更し臨機応変な対応力を求める

後編2番目のトレーニングは「6対6+1フリーマン」。

攻守に1人ずつ増やすことで、トレーニングをより実戦(11対11)に近づけていく。今村監督は、「守備側はワンボランチ、中盤4枚とFW、保持側は4バックとトップ下2、フリーマンはアンカーで」と指示して、最初の5対5同様に選手にポジションをしっかりと意識させる。

ところが、プレーが始まってすぐ笛を吹いて、「やめよう。守備側は2トップにしよう。立ち位置が変わるぞ、4-2だよ」と変更を指示した。頭の中を整理する時間的余裕のなさに選手が戸惑いを見せると、「立ち位置が低くないか、相手は2トップだぞ、サイドハーフが下がっているんだから」とすかさず声を掛ける。この守備の配置変更は、実際の試合で相手のシステムが想定外だったり、途中で変更してきたりした場合にどう対応するかのシミュレーションになる。

練習を流れ作業のように進めるのが、いつもいい練習なのではなく、こういう変更が臨機応変な対応力を身に着けるために必要だということも学んでほしい点だ。

今村監督はこの練習でも「テクニックでカバーするな。難しくないぞ、いい立ち位置で!」とポジショニングの大切さを強調していた。

そして、さらなる配置変え。「ワンボランチ、中盤4人、ワントップ」と最初の形に戻ることになった。ここでまた混乱する選手たち。「何か言ったか?伝えたか?」コーチングもなかったのだ。そこで監督は、「守備のクオリティが低すぎる!そんなのじゃ攻撃が上手くならないよ!30秒でミーティング!」と話し合いをさせて、選手の自発的な修正を促そうとした。

直後、守備側がラインを揃えることに意識が行ったのを見て一人の選手がスルスルと単独ドリブルでラインゴールを駆け抜けた。「ナイス!いい判断だ!」今村監督はすかさず褒めた。

相手を理解し、自分たちを理解し、駆け引きを楽しむ

今村監督はこう締めくくった。「フットボールはフットボールをすることで上手くなる」これを大前提にしてトレーニングを行っています。フットボールは相手ありきのスポーツ。相手の守備戦術を理解し、相手選手の特徴を理解し、自分たちを理解し、駆け引きを楽しむ。各構成要素を細分化した戦術的負荷のかからないトレーニングばかりをしてしまって、実際の試合では力を発揮できない、そのような本末転倒にならないように、フットボールIQを育てて、イマジネーション豊かな選手育成に励んでいます」。

RIP ACE出身の選手が高校年代の色々なチームで活躍できる理由をぜひCOACH UNITED ACADEMYの動画で見て感じ取っていただきたいと思う。

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【講師】今村康太/
習志野高校時代に本田裕一郎監督(現・流通経済大学付属柏高校)の指導下でプレー。桃山学院大学在学中から指導者の道に入り、2002年大学卒業と同時にチームメートだった守山真悟氏と「RIP ACE (リップエース)サッカークラブ」を創設。一昨年のクラブユース選手権(U-15)では町クラブながらベスト8入り。OBには米澤令衣(C大阪)、薮内健人(FC岐阜)、嫁阪翔太(グルージャ盛岡)らJリーガーも輩出しており、全国的に注目を集めている。

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