こころ

2016年6月 9日

子どものサッカーがうまくなる方法は、答えを与えることじゃなく彼らが見つけた答えを後押ししてあげること

 

■コーチングのコツは、成功したプレーの再現性を高めること

サッカーを楽しめる環境づくりはコーチが担っています。『子どもが楽しみながらうまくなる』という点では、コーチの指導力が大きく左右するのです。
 
「あるアメリカ人コーチが野球を知らないロシア人にバッティングを教えたときの話です。ロシア人は初めてバットを振ったとき、左右バラバラの位置でグリップを握ったそうです。当然、バットは振りづらいし、ボールには当たりません。そこでコーチが『こうやって握るんだ』と伝えたら『うるさい』と怒ったそうです。だから、黙って見守ることにしました。ある選手が左右の手を揃えてグリップを握ったらスムーズにバットを振れたそうです。そのとき、アメリカ人コーチが『それだ!』というと、選手全員が同じようにバットを握ってバッティング練習をしたそうです。
 
根本的なことですが、誰かに言われたことを再現するには努力が必要になります。そもそも言われたことを知らないし、やったこともないことだから。だけど、自分が発見してやれたことを「それ!」と後押しして続けさせることは、その後の再現性が高いんです。やれたことなんだから当たり前ですよね。
 
コーチングの基本は、コーチが『どうなりたいの?』『どんなボールを蹴りたいの?』『どこにパスを出したいの?』『どこまでやれるようになりたいの?』…そういう声をかけながら、子どもにイメージを作らせ、イメージを持たせることです。そして、知っておくべきことは『イメージは消えるもの』だということです。だから重要なのは、コーチはつねに子どもにイメージを意識させ、選手と同じ目線で言葉をかけ続けることです」
 
最後に「経営者や組織のトップにコーチングをすると、何が変わるんですか?」と、伊藤さんに質問をしてみました。すると、こんな答えが返ってきました。
 
「部下とのコミュニケーションの量が倍になり、その質が向上します。彼らが話したくなるような題材をちりばめながら会話を重ねるようにコーチングします。すると、自らの置かれた状況を整理し、やるべきことが明確になるなど部下にプラスに働くことがたくさん起こるんです」
 
風通しがよくなれば会社全体の雰囲気がよくなり、部下にとっては働きやすい環境になります。そうなると当然、会社の業績は上がります。これはスポーツの世界にも十分に置き換えられますし、サッカーにおいてはなおさらです。ぜひ、伊藤さんに教えていただいたコミュニケーションに関することを生かしてみてください。
 
 
伊藤守
株式会社コーチ・エィ 創業者/代表取締役
日本人で最初の国際コーチ連盟(ICF)マスター認定コーチ。コーチングを日本に紹介し、1997年に、日本で最初のコーチ養成プログラム(現「コーチャカデミア」)を開始。人と人との関係や、コミュニケーションに対する研究は35年に渡り、それらをテーマに、教育、スポーツ、医療機関や地方公共団体、経営者協会などで講演活動や執筆を行う。また、出版社、アンチ・エイジング・クリニック、インターネット・コンサルティング会社も経営。コーチ・エィのメールマガジン「コーチ メルマガ」に執筆中。
 
 

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