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心の健康:前編 子どもの心が危ない?将来的なうつ病から守る方法

公開:2013年12月 4日 更新:2013年12月 6日

キーワード:悩み

突然ですが、普段の生活の中で「うつ病」を意識したがあるでしょうか? 以前は「特殊な病気」だったうつ病も、患者数の増加とともに「誰もが患う可能性のある身近な病気」として認識されつつあります。「それでもやっぱり、うつ病は他人ごと」と思っている人も多いかもしれませんが、うつ病を含む気分障害は実は子どもたちにも増えているというのです。
 
 今回は、うつ病やパニック障害、睡眠障害などのストレス疾患の専門家、『しのだの森ホスピタル』の信田広晶院長に、子どもたちの「心の健康」についてお話をお聞きしました。
 
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■親子関係は人間関係のスタート地点

「子どものうつ病が爆発的に増えているという事実はありませんが、子どもたちを取り巻く環境、社会の大きな変化によって、いまの子どもたちが大人になったときにうつ病になる可能性を高めてしまうような危険性、潜在的な心の問題を抱えている子どもたちが増えているのは事実です」
 
 信田院長のクリニックでも、うつ病で子育てに悩む親や心に悩みを抱えている子どもたちが来院することがあると言います。
「誰にとっても親子関係は人間関係のスタートです。ここでつまずいてしまうと、将来的にうつ病になったり、心の健康を損ねたりする危険性があると言えますね」
 
 

■本当は危ない? スポーツを“させたがる”親

 子ども時代の親子関係は、親にとっても子どもにとっても重要なものですが、信田院長によると、その関係性を阻害するいくつかの理由の中に、サッカーなどのスポーツ、クラブ活動が挙げられる場合があると言うのです。
 
「サッカーだけが特別ではありませんが、スポーツをやっているお子さんの保護者の過干渉は子どもの心の健康に大きな影響を与える可能性があります」
 
校庭で自然発生的に始まり、そこから部活動へと発展していった以前のスポーツ環境とは違い、いまやスポーツも“習い事”や“将来のため”にするものになっています。当時の子どもたちは遊びの中の人間関係で他者との関係性を学ぶ機会を得ていたのですが、現代ではどうしても与えられた枠組みが先に来てしまいます。
 
「ステージママ、お受験ママの問題はずいぶん以前から指摘されていたのですが、親が子どもの教育に熱心になるあまり、過度なプレッシャーを与えてしまう。これはご本人にはわかりづらいものです。みんな子どものために、良かれと思ってしていることですからね」
 
 信田院長は「そういえば」と、スポーツを熱心にやっている子どもとその親が相談に来た際のエピソードを話してくれました。
「その子はチームでも中心選手だったそうです。急に『もうやめたい』と言い出して、普段の生活でも元気がなくなった。ご両親は心配して相談に来たわけですが、お子さんは黙っている。そこで、個別に話を聞いてみると、その子は『他にやりたいことがある』と、ぽつりぽつり話し出したのです」
 
 相談に来た子どもは小学校高学年だったそうですが、スポーツではなく音楽に興味が出てきたというのです。「運動をやっていると勉強する時間もなくて」その子は、思いの外うまくプレーできるようになったために、親をがっかりさせたくない、周囲の期待を裏切るのがつらくてそれを言い出せなかったのです。
 
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■子どもは優しくて繊細

「子どもというのは親が思っている以上に親の期待に応えようとするものです。親がやってほしいから、親が期待しているから、子どもたちは自分の気持ちを押し込めて、言いたいことを言えなくなってしまうのです」
 
 結局その子はやっていたスポーツをやめ、好きなことに時間を割けるようになって、元の明るさを取り戻したそうです。
 
信田先生によると親子というのは3歳くらいまでは一体化した存在で、そこから徐々に分化していき、やがて自立を迎えるのだそうです。常に親にプレッシャーを与えられて育った子どもは、心に防衛本能が働き、言いたいことを言い出せない、思っていることを言わないようになるといいます。
「そのときは一見“いい子”に見えても、こういう子どもが大人になったときにどうなるかはきっとみなさんにも想像がつくでしょう」
 
 自分の意思や気持ちを抑圧されたまま自立するタイミングを失い、うつ病になったり、ひきこもり、アダルトチルドレンなど、現代の心の病を患う可能性が高まります。
 
「まさか、そんな大げさな」と驚かれた方もいると思いますが、子どものうちは小さな出来事でも、将来的に心に傷を残すケースは多くあります。自分が大人になって、小さいころショックだった出来事を親に話すと親は覚えていない! こんなことはよくある話ですが、子どもは心の問題やショックを受けたことを、そのときに口で説明したり、声に出して言わないものなのです。
 
 まずは問題の認識として、子どもたちの心の繊細さをお伝えしましたが、後編では子どもたちの心の健康をチェックする方法、サインを読み取るポイント、心の健康を保つ予防策についてお話します。
 
心の健康:後編 肩こりは注意?危険を測る7つのチェックポイント>>
 
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信田広晶(しのだひろあき)
東邦大学医学部卒業。東京女子医科大学病院勤務を経て、しのだの森ホスピタル理事長。千葉県八千代市にあるクリニック、しのだの森ホスピタルでうつ病などの気分障害、精神疾患の治療に取り組む。早くから患者個人に合わせたオーダーメイド治療の必要性を訴え、個別性を重視する多様なプログラムを提供している。
 
医療法人社団心癒会 しのだの森ホスピタル
千葉県八千代市島田台1212番地
 
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)

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