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子どもがサッカーを辞めたいと言い出した。その時あなたは?

公開:2012年3月 2日

キーワード:コミュニケーションメンタル悩み

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現在、2012年スカパー!Jリーグ中継解説に備え、心技体の調整に余念のない大西貴さんですが、先日、こんな深刻なお悩みが先日まで連載されていた「大西貴の親子でサッカーを楽しもう!」を見ていただいたお父さんから届きました。親であれば当然抱く子どもへの期待。その期待をどうやって親子コントロールしていけばいいのか?同じ悩みを持つみなさんの一助になれば幸いです。
 
 
<<ご相談内容 ※原文のまま掲載しています>>
 
小4の息子が、地域の少年団で1年生からサッカーをプレーしています。小学校入学を期にスポーツをしてほしかったので、野球、サッカー、空手の中からやりたい競技を本人に選ばせ、サッカーを選びました。
 
チームは弱小で人数も少ないのですが、友達もいて良いチームだと思います。少人数とはいえ競争はあるので、最初は中々試合にも出られず面白くない様子でしたので、1年生の後半から親子で練習する様になりました。同時期に、チームからお父さんコーチとしての協力を求められて引き受けることにしました。チームの活動は週末に限られているので、息子には平日にサッカースクールに通わせることにし、毎日練習する様になりました。
 
練習量に比例して技量は向上していき、チームで中心となる選手に成長していきましたが、最近になってサッカーを辞めたいと言う様になってしまいました。気を付けていたのですが、サッカーに関して息子を叱責することが多くなっていました。身代わりアスリートということかもしれないですが、決してプロを目指しているとかサッカーで食べていくというわけではないのです。一人っ子ということもあって一人で生きていける力を付けさせてやりたく、サッカーを通じて教育しているつもりでした。
 
年齢的に第二次反抗期を迎えていることもあって心にモヤモヤがある様でしたが、3ヶ月前の試合の時に息子が過呼吸になった時に頭の中が真っ白になってしまいました。体調に問題があった訳ではなく、100%メンタルの拒否反応です。それから同様の症状が時々現れる様になりました。何ともなく楽しくサッカーしていることもありますが、ダメな時もあります。私の責任だと思います。深く深く反省しております。
 
本当にサッカーが嫌いでやりたくないなら辞めていいのですが、サッカーそのものは嫌いだとは思えません。責めることは一切辞めて落ち着いて話しあってみましたが、本人も混乱しており、よくわからないということです。私がコーチを辞めてサッカーに関わらなければいいのかなとも考えますが、それで解決するのかわかりません。
 
息子には4年生の終わりまでは今まで通りやっていこうと話しました。その時にどういう気持ちかでそれからのことを考えようと伝えました。
 
どうすればいいのかわかりません。アドバイスの程、何卒よろしくお願いいたします。
 
 
 

■支えたいという思いがプレッシャーになることも

――これは・・・深刻な問題ですねえ。
 
大西「重いですねえ・・・。この問題については『こうしたらよくなる』というこたえはありませんからねえ。ただ、まず僕が思うのは『平日にサッカースクールまで行ってサッカーをする必要があるのかな?』ということ。この子自身、サッカー自体が嫌いではないのだと思うんですけど、サッカーをし過ぎて嫌いになってきているかもしれないですね。
 
この質問を見ると、子を持つ親として子どもに協力してあげたい気持ちや、『サッカーがうまくなってほしい』という思いは手に取るように分かります。子どもとじっくり話をしたこともわかります。でも、ここはお父さん以外の方。お母さんやチームといった周りの協力を得ていくことも『あり』だと思います。小学4年生のこの子にとってお父さんはお父さんですから、お父さん以外の人とサッカーの話をしていくことも必要じゃないかと思うんです。
 
そうすると今自分が抱えている心の問題をお父さん以外に言えるようになるかもしれない。お父さんが子どもを支えてあげることは大事なのですが、今はそれが逆に子どもにとってプレッシャーになっているような気がしますね。たとえば、卵が好きな子どもでも毎日卵を食べていたら『卵は嫌いじゃないけど、ちょっと飽きた』となってしまうじゃないですか?それと同じだと思うんですよ」
 
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■「親と子」の関係だけでなく、みんなの力を借りて成長を見守る

――「卵は嫌いじゃないけど、もう飽きた」。確かに的を射た表現だと思います。
 
大西「となると、彼は少しサッカーから離れることもひょっとしたら必要かもしれない。だって、サッカーの大前提は『サッカーが楽しい』と思うことなんですから。練習をしていく中でも、子どもさんがサッカーが楽しいのでもっとサッカーがしたいと思うこと。自分だって子どもの頃にサッカーが楽しくてもっとしたいと思ったから、今に至っているんです。
 
また、試合中に過呼吸になってしまう原因は、仲間の問題かも知れないし、お父さんだけの責任ではないかもしれないですよ。最初はサッカーが楽しいと思っても、成長していく過程でチームの中心選手になっていく中で、『もっともっと』とみんなが負荷を与えたことで、『もういいや』となってしまった点もあるかもしれない。
 
さらに小学校4年生は反抗期に入る時期ですから、サッカーをすることが好きであったとしても、辛いそぶりをしているかもしれない。そういった思いのたけを聴いてあげることも必要でしょうね。
 
――「一人っ子なので、一人で生きていける力を付けさせてやりたく、サッカーを通じて教育しているつもり」というお父さんの言葉がありましたけど、そこに関してはどうですか? 
 
大西「実は僕自身も一人っ子なんです。周囲には見えないと言われますけど(笑)。でも、僕自身の体験からも人間が1人で生きていくには周りと協調していくことが不可欠ですし、周りの力がないと生きていけない。そこは『一人で生きる力を付ける』というお父さんがプレッシャーをかけてしまったところもあると思うんです。そこを小学校4年生の子ども自身に自己分析してもらうのはまだ難しいですから、先ほど言ったようにお母さんやクラブ・スクールのコーチなどに協力してもらうのがいいと思います。
 
周囲で子どもの成長を見守ってあげること。そこがポイントだと思います」
 
――この質問を拝見すると、お父さんは「親と子」の関係だけで悩んでしまっている様子がありますね? 
 
大西「お父さんだけが悩んでしまっている姿を見せることも、子どもに『僕のせいでお父さんが悩んでいる』というプレッシャーの要因になっているとは思います」
 
――すなわち「一人で生きる」ということは1人で全てやることではなく、先ほど大西さんが言われたように、「周りのみなさんと協調して、協力してもらう」ことこそが「一人で生きる」ことにつながる。ですから、いい意味でみなさんに頼ることも必要ですよね?
 
大西「そうなんです。この時期にプレッシャーをかけて叱る必要もないし、もっとお父さんも楽になった方がいい。お父さんが悩むこと自体が子どもにとってプレッシャーになることもあるんですから。ですから、お父さんも『コーチを辞める』という考えにならず、もっと楽にした方が子どもにもいいと思いますよ。
 
ですから、今起こっている現象は受け止めつつ、これからもっと周りのみなさんと子どもが話をしていく。これが全ての正解とは思いませんけど、解決方法の一つになるかなと。それによって子どもがサッカーやプレッシャーに対して楽になり、自分はお父さんとの関係だけでなく、周りとの関係によって成り立っていることを感じてくれればいいのではないかと思います」
 
 

■情報がたくさんある時代でも、顔を合わせて話し合うことが必要

――ところで、大西さんのお父さんはプロ野球選手だったそうですが、子どものころにご両親から「プロ選手になれ」というプレッシャーはなかったのですか?
 
大西「父は僕が生まれてすぐに亡くなったのであまり父からの影響はなかったですが、その後、母からも周囲からもそのようなプレッシャーを与えられることは一切なかったです。ですから、最初に野球を始め、5年生からサッカーもやり始め、中学生でどちらの部活を選択しなければならないときも、「サッカーをやる」と自分で決めて進みました。
 
そうすると、自分で決めたことに責任が生じるし、その中で自分がうまくなったり、チームが強くなったりすることに喜びを感じてくる。そして南宇和高校で石橋智之先生(現:愛光学園高校サッカー部監督)に出会ったことで色々なことを考えるようになって、指導者になれたと思います、。ですから自分自身は当時悪いこともしながらも、周りとのコミュニケーションは普通に身についていきましたね。
 
だから、このお子さんも、サッカーを通じて面白さ、出会いを知ってほしい。色々な方と知り合ってほしいですね」
 
――今は子ども、親、コーチ、チームメイト、親同士が別々になっている印象がありますからね。
 
大西「今は様々な情報を手に入れることができますが、昔はそれがない分、みなさんが顔を合わせて話し合う機会が多かったと思います。子どものことで大人が話し合うことが多かった。そういったことももしかしたら必要かもしれないですよ」
 
――「自分の子だけでなく、隣の子も気になる。隣の親は自分の子も気になる」関係を作れればいいですね。今回はどうもありがとうございました! 
 
 
 
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大西 貴(おおにし・たかし)※写真の後列中央//
1971年・愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ入団し主にDFとして広島で3年間、京都で1年間プレーしJ1・21試合に出場。広島時代はマンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験する。そして1998年には当時四国リーグ所属だった愛媛へ里帰り。愛媛FCでサッカースクールコーチを務めつつ2001~2003年には選手兼監督・2004年には監督専任で4年間JFLでも采配を振るった。その後は2年間の愛媛ユース監督経験を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチ、スカパー!愛媛中継解説者として活躍中。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持。
 
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取材・文/寺下 友徳、写真/小川博久

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