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手に当たったらハンド、じゃない! お父さんコーチが知っておきたい、昔と今でこれだけ変わったサッカーのルール

公開:2021年4月20日 更新:2021年5月18日

キーワード:お父さんコーチオフサイドゴールキックサッカールールハンドファウル審判競技規則

4月は新学期のスタート。新たにコーチになったり、審判をやってみる方も多いのではないでしょうか? 

そこで今回は3級審判資格を取得し、主に「サッカー審判批評」という分野でジャーナリストとして活躍する石井紘人さんに、「2021年4月版の最新ルール解釈」について、話をうかがいました。

ハンドやゴールキック、PK時のGKの立ち位置など、昔に比べてルールの解釈が変わっている箇所もあるので、これを読んで情報をアップデートさせましょう!
(取材・文:鈴木智之)

 

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この春お父さんコーチを始める人が知っておきたい、昔と今ではこんなに違うサッカーのルールとは

 

後編:昔はなかった 「飲水タイム」と「クーリングブレイク」とは? 新米お父さんコーチに覚えてほしい育成の新常識 >>

 

■ハンドのルールが大きく変わった

サッカーの試合で争点になる反則。それが「ハンドの反則」です。

「試合中、手にボールが当たったらハンド」と思っている人もいるかもしれませんが、それは違います。2020/21の最新の競技規則によると手や腕にボールが当たっても必ずしもハンドの反則にはなりません。たとえば、ニュートラルな位置にある腕にボールが当たってもハンドの反則にはならないのです。

分かりやすいのが、昔ロベルト・バッジョがDFのニュートラルな位置にある腕にあえてボールをあてて、PKをとったことがあるのですが、現在の競技規則ではハンドの反則にはなりません。

一方で、手を伸ばしてボールに当たりに行く未必の故意、浮いたボールを手でコントロールしようとする動作は、明らかに不自然なのでハンドの反則になります。

<ハンドの定義>


ボールを手または腕で扱う(P108)
ハンドの反則を判定するにあたり、腕の上限は脇の下の最も奥の位置までのところとする(P164)

競技者が次のことを行った場合、反則となる(P108)
・手や腕をボールの方向に動かす場合を含め、手や腕を用いて意図的にボールに触れる。
・ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する。

偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に(P164)
・ 相手競技者のゴールに得点する。
・ 得点の機会を作り出す。

次のように手や腕でボールに触れたとき(P108)
・ 手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。
・ 競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある(競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く)。

引用:サッカー競技規則2020/21 (競技規則日本語訳:日本サッカー協会)

石井さんは現在のハンドの反則を次のように説明します。

「競技規則が改正になる前のハンドの反則は、レフェリーの主観が強い反則でした。腕にあたったとしても、主審にどう見えたかで判定が変わっていました。しかし、VARの導入により、腕に当たった事実が見えるようになりました。映像で腕に当たっている事実が見えるようになると、ハンドの反則をとらない決断は難しいですよね。ロシアワールドカップの決勝が最たる例です。そこで、そういったVARに合わせて『腕の上限は脇の下の最も奥の位置まで』『競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある』という言葉が入り、ハンドの反則のグレーさを減らしたのだと思います。」

 

■「手に当たったらハンド」ではない

ジュニアの試合で多いのが、二つ。

一つは、至近距離でシュートを打たれ、それが守備側のニュートラルな位置にある手に当たるケースです。これは手や腕を用いて体を不自然に大きくしていないため、ハンドの反則にはなりません。

もう一つが、転んでしまった時の支え手にボールが当たることです。この場合も、腕が体から横または縦方向に伸ばされていない限り、ハンドの反則にはなりません。

このケースを抑えておくだけでも、試合中に手に当たったからといって「ハンドだろ!」と騒ぐことも無くなりそうです。これは指導者やレフェリーを担当する人だけでなく、試合を観戦する保護者も知っておきたいポイントです。

「ハンドという単語は手という意味ですよね。なので、指導者も保護者も、『ハンド!』とアピールするのではなく、競技規則を知って、『ハンドの反則だろ!』とアピールするようになったら、理解も進むのかもしれないと思っています」

 

■「不自然」ではなくてもハンドになるケースとは

「不自然」ではなくても、ハンドになるケースもあります。それが「手に当たったボールがゴールインしたとき」です。石井さんはその背景を、次のように説明します。

「現代はVARがあるので、ボールが手に当たってゴールインした場合、誰の目にも明らかになります。FIFA(国際サッカー連盟)は、ビッグマッチで決まったゴールが、手によるものというケースは避けたいのでしょう。そう考えると、マラドーナの神の手ゴールは、いまの時代は100%生まれないことになります」

さらに言うと、偶発的に手に当たったボールが味方の前にこぼれ、それをシュートしてゴールが決まったとしても、ハンドの反則でゴールにはなりません。

が、これは今年の夏の競技規則改正で変わるようで「偶発的でも手や腕にボールが当たった選手自身が直後に得点することに限定されそうです」とのこと。

「ジュニアの場合、ボールが自分の方へ飛んできたときに、咄嗟に手でお腹や顔を防ぐことがあります。そのプレーで、手に当たったからといって、わざわざハンドの反則を取る必要はないと思います。その場面は見逃してあげて、試合が終わった後に『手でボールに触ると、ハンドの反則をとられる可能性があるから、気をつけようね』とアドバイスをしてあげるといいと思います。

また指導者や保護者側もVAR向けのハンドの反則の細かい条文を、VARがない試合、ましてやアマチュアの試合で審判員に要求するのは違うと思います。審判団が競技規則を理解し、ベストを尽くそうと走っていたのであれば、審判団に委ねる姿勢を持つことが子どもへの教育になると思います」

 

■ルールは選手を罰するためのものではない

ジュニア年代のレフェリーは、子どもたちに正しいルールを教えてあげる「指導者」の側面もあります。杓子定規に競技規則を守り、反則を見落とさない、取り締まることがレフェリーの役割ではありません。

子どもがサッカーを楽しみ、成長するためのサポート役。それがレフェリーの役割のひとつと言えるのではないでしょうか。

「競技規則の理念を読むとわかりますが、ルールは選手を罰するために作られたものではないんですね。ルールとは、サッカーを公正に、公平にするためにあるものです。ハンドの反則を見落とさないように"減点法"で見ていくと、些細なこともファウルのように見えるかもしれません。でも、ルールというものが生まれた背景は、そうではないことを知ってほしいです」

 

■オフサイドもゴールキックも解釈が変わっている

ルールは時代とともに変化しています。これを読んでいるあなたが子どもの頃に知り得たものとは、ハンドもオフサイドもゴールキックも、解釈が変わっています。サッカーの進化と同じように、ルールも合わせて変化しているのです。

「いまはレフェリーの方がSNSなどを使って情報発信していますし、日本サッカー協会のWebサイトやYou Tubeを見ると、ルールに関する最新の情報が掲載されています。まずはそれを読んだり、見たりすることが、レフェリーを始めるための第一歩になると思います」

 

■昔はOKだったものがいまはファウルになっていることも

昔はOKだったものが、いまはファウルになったり、その逆もあるので、まずは「いまのルールをどうなっているのか」に目を向けてみてください。サッカーの指導同様、ルールについてもアップデートしていくことが、子どもたちの成長につながるはずです。

次回の記事では「ゴールキック」「オフサイド」「PK時の、GKの立ち位置」について、石井さんに解説をしてもらいます。

 

 

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石井紘人(いしい・はやと)
過去、日本サッカー協会C級ライセンスと三級審判員取得。
サッカーは審判批評、他に運動生理学の批評を専門とする。『TokyoNHK2020』サイトで一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、現在は『J-cast』にて東京五輪へ向けたオリンピアンへのインタビューを連載中。
著作に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)、プロデュース作品に久保竜彦が出演した『弾丸シュートを蹴る方法』(JVD)がある。株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作したドキュメントDVD『審判~ピッチ上の、もう一つのチーム~』やJリーグベストゴールズ『メモリーズ&アーカイブス』の版元でもある。自身のサイトは『週刊審判批評』。

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取材・文:鈴木智之

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