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サッカー豆知識

誰かが作った「良いお母さん像」にとらわれない! あなたが頑張りすぎないことが子どものサッカーも伸ばすワケ

公開:2019年12月24日

キーワード:しつもんアドラー心理学他の子と比較承認欲求柘植陽一郎焦り自己肯定感藤代圭一

サカイクには、保護者の方からたくさんの相談メールが届きます。その中で多いのが「つい、自分の子どもとよその子を比べてしまう」というもの。比べても意味がないのはわかっているのに、「あの子に比べてうちの子は......」と考えて、暗い気持ちになってしまうことがあるそうです。

そこで今回は一般社団法人フィールド・フロー代表で、メンタルコーチの柘植陽一郎さんと、しつもんメンタルトレーニングでおなじみ、藤代圭一さんに話をうかがいました。お二人に「心が軽くなるヒント」を授けてもらう対談。

後編では「自分の子どもとよその子を比較してしまう」という話から、スポーツをする人が、自分と他者を比べることの良し悪しについて、話は展開していきます。

(取材・文:鈴木智之)

<<前編:子どもの出来=親の評価 ではない。できる子と比べて焦ったりモヤモヤしがちな親の「心を軽くする」方法

 

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他の子と比較するより、子どもの行動レベルでのチャレンジに目を向けましょう

 

■ほかの子と比較するときに、親の「こうなってほしい」が見え隠れする

藤代:前編では、些細なことでいいので、「うまくいっていること」を自分自身にしつもんすることを提案しました。それを考えることによって、自分に自信を持つことができます。柘植さんはアスリートに対して、自分と他の選手を比較してしまいがちな選手に、どんなアドバイスをしますか?

 

柘植:「あの選手がいるから、自分も頑張れる」という考えの選手であれば、比較することは悪いことではないと思います。他者と比較することで、「自己効力感」や、日々の行動の質が高まるのであれば、それもOK。ただ、本質的には、自分自身がどうしたいか、が大切なので、保護者がお子さんと接するときは、他の子と比較することよりも、子ども自身の行動レベルでのチャレンジや小さな成長に焦点を当ててあげるほうが良いと思います。

 

藤代:なぜ子どもたちが比較されることを嫌がるのかというと、コントロールされている気持ちになるからだと思います。「○○くんと比較して、うちの子もこうなってほしい」という、親の気持ちが見え隠れするから、プレッシャーを感じるんです。「○○くんは、毎日家で1時間、勉強しているんだって」と言われた子どもは、自分も毎日勉強しろってこと? と思いますよね。比較されることによって、行動をコントロールされることの嫌さもあると思います。

 

柘植:保護者の期待がプレッシャーになることは、よくありますからね。

 

■親が先回りするほど、やる気がなくなる

藤代:とくに小さい子どもって、「自分でやりたい!」と言うじゃないですか。まずはそれが欲求としてあるので、自分でやりたい気持ちを親が奪ってコントロールしようとすると、反発したくなります。自分で決めてやるという「自己決定理論」という言葉がありますが、子どものやる気は自己決定が大きいほど、高まります(自己決定理論)。その機会を奪えば奪うほど、やる気がなくなってしまうんです。とくにお母さんって、子どもが自分で決める機会を奪ってしまいがちかもしれません。「きみは何歳なの?」と子どもが聞かれているのに、お母さんが「3歳だよね」と先回りして答えてしまう。それは柘植さんがおっしゃる、アドラー心理学の「課題の分離」と同じことで、自分の問題と子どもの問題を統合してしまっているんです。

 

柘植:子どもには、自分なりに、そのスポーツと関わりたい気持ちの度合いがあります。僕は小学校時代、サッカーをしていたのですが、Bチーム(二番手のチーム)にいたんですね。たまに「Aチームで試合に出なさい」と言われるのですが、誘われても行きたくなかったんです。なぜかというと、Aチームの指導者の方針は、サッカーを楽しむことより試合で勝利することだったので、みんなで楽しくサッカーをやりたかった私はBチームにいたかったのです。いまだに、Bチームにいて良かったと思っています。みんなで和気あいあいとサッカーができたわけですから。誰もが、クラブの中でAチームに入って、大会で優勝を目指すことがハッピーかというと、決してそうではないと思います。僕は、小学校でのサッカーの体験が本当に良い思い出となっています。無理やりAチームに入れられていたら、そうはならなかったかもしれません。

 

藤代:その子のやる気やスポーツとの向き合い方によって、何が幸せかは変わりますよね。そこに目を向けずに、うまくなるんだ、強いチームに入るんだ、大会で優勝するんだという目標を大人に押し付けられると、子どもは苦しくなって、最終的にはそのスポーツを嫌いになることもあります。

 

柘植:そのためには、子どもの様子をしっかり観ることが大切です。この子は何にワクワクするんだろう? と、ワクワクするポイントを見つけてあげて、ふっと表情が明るくなったり、前のめりになることを見逃さない。サッカーのプレー自体はそこまで楽しいと思っていないけど、友達と一緒の行き帰りの時間が楽しい子もいれば、一人で黙々とボールを蹴ることが好きな子もいるわけで、その子がどんなことをしているときに、プラスのエネルギーが出ているのかを逃さずにキャッチしてあげてほしい。自分と比較して似ているところを見つけるのではなく、全く違う一人の人として、その子の独自の世界観を楽しみながら見守り、観察してあげてほしいのです。

 

■SNSを通じて他人と比較してしまう

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SNSでキラキラ充実しているように見えるかもしれないけれど、逐一自分と比較しないようにしましょう

 

藤代:現代は比較する対象が溢れていますよね。SNSを見れば、多くのキラキラしたものが目に入るわけで、友達のあの人はいまどこにいて、何をしているかがわかります。その意味では比較したくなくても、ついついしてしまうこともあると思いますが、柘植さんはどうやってご自身をコントロールしていますか。

 

柘植:僕は祖母の考え方に、大きな影響を受けています。祖母は日本人で初めて、シカゴ大学でカール・ロジャーズ(編注:アメリカの著名な心理学者)のもとで学んだ人だったのですが、「みんな違っていて良いし、人には自分で課題を解決する力がある」と信じてくれる人だったんですね。指示や命令をするのではなく、その人の価値観を大事にして、共感の心とともに、そばにいてくれるんです。

 

藤代:すごく素敵な方ですね。

 

柘植:小中高と多感な時期に祖母がいてくれたので、そのパワーというか「大丈夫だよ、自分でちゃんと答えをみつけられるよ」と信じてくれることのパワフルさや空気感は、いまだに僕の心の中にあります。それは、指導する立場の人にすごく大切なことだと思っていて、オリンピックの大事な場面で、どんな声掛けをしようかと考えたときに、「うまくいってもいかなくても大丈夫。きっと素敵な人生になる。どうなっても大丈夫だから」と言えるかどうか。指導者に信じてもらえることは、選手にとって、何よりも勇気づけられることなんです。

 

藤代:「どんなことがあっても、あなたは大丈夫だよ」と言ってもらうだけで、安心しますよね。

 

柘植:その選手、その子を信じて横にいてあげることは、すごく大切なことだと思います。指導者や保護者がその状態になるためには、なによりも自分自身が良い状態でいること。そのためには自分を大事にしてあげて、心のケアをしてあげる。いつも思い詰めるのではなくて、ときにはリラックスして、「子どもに対して、いろいろしている自分は立派じゃないか」と、自分で自分を認めてあげること。ときには楽しい食事をしたり、温泉に行ったり、趣味に没頭するなど、自分の時間を作ることも必要だと思います。

 

藤代:「うまくいくこと、いかないことがあるけど、頑張っているじゃないか」というスタンスですよね。

 

柘植:自分で自分を認めてあげて、良い状態でいることを意識する。指導者もそうなんですけど、あれもこれもやらなければといっぱいいっぱいになると、イライラして、良くない状態で選手の前に立つことになります。実はそれが、選手にとって一番迷惑なんです。それならば何も言わずにニコニコして、横にいてくれたほうがよっぽど良いんです(笑)。

 

■誰かが作った「良いお母さん像」にとらわれないこと。頑張りすぎないことも大事

藤代:保護者の方も、がんばりすぎないことが大事ですよね。家事など、アウトソーシングできることであれば、検討しても良いと思います。まずは自分自身が良い状態でいるためにはどうすればいいかを考えて、時間や心の余裕を作ることを考えてみてほしいと思います。母親だからって、全部完璧にやらなくてもいいんです。時間と心に余裕ができればイライラする事も減りますし、お子さんの良いところにも自然と目が行くようになると思います。結果、お母さんの魅力たっぷりに子どもと関わることができます。メディアやSNSなどで発信される情報など、「誰か」が作る「良いお母さん像」にがんじがらめにならないように、力を抜くことも大事なのかなと思います。

 

柘植:保護者の方にアドバイスをするならば、「人はみんな違っていいし、子どもとの接し方もみんな違っていい」ですね。子育てに正解不正解はないですし、不安になったら、自分一人で抱え込まずに、信頼できる人にたくさん話しを聞いてもらってください。自分自身がいい状態でいることが何より大切なことです。

 

藤代:僕からのアドバイスは「どのようにして力を抜きますか?」というしつもんを自分にしてみてください。サッカーもそうですが、力を抜いて、リラックスした状態でないと、良いプレーはできません。自分がやることとやらないことを決めて、日々の暮らし方や接し方を見つめ直してみると自然と心が軽くなるかもしれません。

 

柘植:「自分が良い状態でいるために、何ができるだろう?」「何を手放したらいいだろう?」と考えることが、結局、子どものためになるんですよね。

 

藤代:そう思います。今回のお話が、子育てに悩んでいる方々のヒントになればうれしいですね。

 

柘植:そうですね。ありがとうございました。

 

前後編にわたってお送りした「心を軽くする方法」はいかがでしたか? 他の子と比較してイライラ、モヤモヤしているよりも、あなたが良い状態でいる方が子どもは安心して伸びていくのです。便利で綺麗な世の中です。家の事も少しぐらい手を抜いたところで命にかかわる事態にはなりません。なんでも完璧を目指すより、心穏やかに毎日を過ごせるために、何を手放せるかを考えるきっかけにしてみませんか。

 

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柘植陽一郎(つげ・よういちろう)
一般社団法人フィールド・フロー代表 コーチングディレクター
専門はメンタル、コミュニケーション、チームビルディング。
2006年より本格的にアスリートのサポートを開始。メンタルスキル指導とは一線を画す「メンタルコーチング」を用いて、2008年北京五輪・2012年ロンドン五輪で金メダリストや指導者をサポート。2011年~2014年までソチ五輪で3つのメダルを獲得したスノーボードナショナルチームを、2016年リオ五輪で48年ぶりの4位入賞の女子体操では、コーチと選手をサポート。その他ラグビートップリーグチームやサッカー日本代表選手、プロ野球など、プロ・オリンピック代表から部活動まで様々な世代・競技を幅広くサポートする。
著書に「最強の選手・チームを育てるスポーツメンタルコーチング」(洋泉社)、「成長のための答えは、選手の中にある」(洋泉社)

 

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藤代圭一(ふじしろ・けいいち)
スポーツメンタルコーチ
スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どものやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝を目指す様々な年代のチームから地域で1勝を目指すチームまでスポーツジャンルを問わずメンタルコーチを務める。全国各地でワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。2016年からは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中を目指して」というビジョンを掲げ、全国にインストラクターを養成している。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)などがある。 

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取材・文:鈴木智之

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