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子どもの出来=親の評価 ではない。できる子と比べて焦ったりモヤモヤしがちな親の「心を軽くする」方法

公開:2019年12月17日

キーワード:しつもんアドラー心理学他の子と比較承認欲求柘植陽一郎焦り自己肯定感藤代圭一課題の分離

サカイクには、保護者の方からたくさんの相談メールが届きます。その中で多いのが「つい、自分の子どもとよその子を比べてしまう」というもの。比べても意味がないのはわかっているのに、「あの子に比べてうちの子は......」と考えて、暗い気持ちになってしまうことがあるそうです。

そこで今回は一般社団法人フィールド・フロー代表で、メンタルコーチの柘植陽一郎さんと、しつもんメンタルトレーニングでおなじみ、藤代圭一さんに話をうかがいました。

「心が軽くなるヒント」満載の対談を、2回に分けてお届けします。

(取材・文:鈴木智之)

 

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無意識のうちに自分の子と他の子を比べ、イライラ、モヤモヤしていませんか?

 

■子どもの出来=親の評価 ではない

藤代:自分の子どもを他の子と比べて「できないなぁ」と感じてイライラしたり、不安になってしまう。これは親なら誰しも、経験があると思います。勉強もサッカーも競争のシステムがあるので、無意識のうちに比べてしまうのはよくあることです。子どもの出来が、親としての自分の評価につながると感じる人も多いようです。でも、本来はお子さんの出来と自分の評価はイコールではありませんよね。

 

柘植:そう思います。アドラー心理学に「課題の分離」という考え方があるのですが、目の前の問題が、自分の問題なのか、それとも子どもの問題なのかを整理するといいと思います。そこが整理ができていないので、モヤモヤして、焦ってしまうんです。

 

藤代:多くの保護者は子どもにかける時間が増え、気になることも増えているかもしれません。けれど、ある程度は子どもに決断する機会を与えることも必要です。そして、「うちの子はサッカーがそれほど上手じゃないけど、この子なりに素晴らしい人生を歩むはずだから、心配する必要はないわ」という考え方ができれば、気持ちも楽になるのではないでしょうか。

 

柘植:お子さんがあまりサッカーが上手ではないことに対して、自分が恥ずかしいのか、本当に子どものことを思って考えているのかを分けて、考えてみるのもいいかもしれません。一度、整理をするだけでも、受け取り方が違ってくると思うんです。お子さんの問題と自分の問題を一緒にしてしまうと、がんじがらめになってしまいます。

 

藤代:その場合、保護者の方に「自分の問題なのか、子どもの問題なのか、どちらだと思いますか?」と、直接的な質問をするのですか?

 

柘植:はい。まずは「課題の分離が大切ですよ」という話をして、自分の問題なのか、子どもの問題なのかを考えて、どうやって問題を整理しましょうか? と問いかけます。保護者の方は、目の前の問題に対して、どうしていいかわからないから止まってしまう、困ってしまうんです。問題を分けて考えることで、安心できることも増えてきます。

 

藤代:僕の場合は、親御さんに「子どもと同じように、何でも叶えられるのであれば、何を叶えたいですか?」というしつもんをします。そうすると、質問者様のような方の多くは、「子どもにこうなってほしい」と答えるんですね。自分ではなくて、「子どもにサッカー選手になって欲しい」とか「かけっこで一番になってほしい」とか。保護者の夢を聞いているのに、お子さんの夢と統合されてしまって、分離されていないんです。それでは苦しくなってしまいますよね。

 

■本来親が褒めるべきポイント

柘植:その問いを投げると、気がつく方は多いですよね。「そっか、自分が恥ずかしい思いをしたくないんだ」「あの子と比較して、苦しんでいるのは自分なんだ」と気がついて、子どもにとって何が大切なんだろう? と考えた時に「他の子と比較することは、我が子のためになっているのかな?」と気がつきます。

 

藤代:どうして、保護者は我が子を他の子と比較してしまうのだと思いますか?

 

柘植:親自身が良く思われたい、自分の子育てが間違っていないことを証明したいといったことが理由だと思います。でも、子どもからすると、比較されるのは一番嫌なことですよね。スポーツにおいて、子ども自身が探求したいのは「昨日できていなかったことが、今日はちょっとでもできるようになること」です。跳び箱が3段跳べる子が、4段を跳べるようになると嬉しいわけです。それを5段跳べる子と比べてどうこう言われても、何も嬉しくないですよね。

 

藤代:まさに、そのとおりです。

 

柘植:基本的には、自分自身が跳び箱で4段跳べるようになったのが嬉しいわけで、そこに焦点を当ててあげないといけない。5段跳べる子と比較しても、その子にとって良いことは何もないわけです。その子が昨日は跳べなかったけど、今日は跳べそうだというのが、スポーツの楽しみだと思います。その子のちょっとした成長実感に対して、保護者も一緒に楽しめるような関わり方がいいと思います。

 

■自分のタイムラインを書いてみることで、今自分がどうすればいいかわかる

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自分のタイムラインを描くことで、親としてどうありたいのかに気付くことができるのです(C)吉田孝光

 

藤代:保護者自身は「子どもの成長を通じて、自分を認めて欲しい」という感情に気がついていると思いますか? 「自分を認めてほしい、褒められたい」という感情に気がつくと、行動が変わるのでしょうか?

 

柘植:気づいただけでも、一歩踏み出せると思います。僕は親御さんに、お子さんと一緒にタイムラインを歩いてもらうことがあります。自分が生まれたときの年齢から、イメージする臨終までの年齢を書いて、そこにお子さんの年齢を入れていきます。そこには、自分の親の年齢も書き入れるのですが、そうすると「父母って、自分がこのぐらいの年にはいなくなっちゃうんだ」といったことに気がつきます。

 

藤代:自分の人生を客観的に見ることができるわけですね。

 

柘植:そうなんです。その結果、自分はどういう人生を歩みたいのか。自分は親として、どうなりたいのかと考えが深まっていきます。タイムラインを書くと、子どもに関わってる時間は、それほど長くはないことがわかります。親が関われるのは、子どもが二十歳になる頃までで、その先はそれぞれの人生が待っています。タイムラインを見ながら「今の自分にアドバイスをして下さい」というワークをすると視点が変わって、いつもと違うアドバイスができるようになります。

 

藤代:自分を客観視することは、とても大事なことですよね。保護者だけでなく、指導者もそうですけど、うまくいかないことや欠点は目につきやすいので、探しやすいんです。そこで「うまくいっていることはなんですか?」としつもんをすると、答えられない親御さんもいます。自分がうまくいっていることを見つけられないということは、他者に対しても同じことが起こりうると思うので、まずは自分自身のどんなところがうまくいっているかを探してみるのも良いと思います。

 

柘植:それはすごく良いですね。

 

藤代:この対談を読んでいる方は、「自分がいまうまくいっていることは、何があるだろう?」というしつもんを自分自身にしてみてください。うまくいっていることが実感できれば、それが自信につながり、自分を肯定することにもなります。その結果、「自分は自分なんだ」という当たり前のことに気がつくので、お子さんを誰かと比べるという考え方も、徐々になくなっていくのではないかと思います。

 

 


対談の前半はいかがでしたか。

親のこころが良い状態にあると、子どもも安心してサッカーに勉強に取り組めるもの。すぐには難しくても、少しずつ実践してみることであなたの心がスッと軽くなっていくはずですので、「うまくいっていること」を意識してみてください。

 

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柘植陽一郎(つげ・よういちろう)
一般社団法人フィールド・フロー代表 コーチングディレクター
専門はメンタル、コミュニケーション、チームビルディング。
2006年より本格的にアスリートのサポートを開始。メンタルスキル指導とは一線を画す「メンタルコーチング」を用いて、2008年北京五輪・2012年ロンドン五輪で金メダリストや指導者をサポート。2011年~2014年までソチ五輪で3つのメダルを獲得したスノーボードナショナルチームを、2016年リオ五輪で48年ぶりの4位入賞の女子体操では、コーチと選手をサポート。その他ラグビートップリーグチームやサッカー日本代表選手、プロ野球など、プロ・オリンピック代表から部活動まで様々な世代・競技を幅広くサポートする。
著書に「最強の選手・チームを育てるスポーツメンタルコーチング」(洋泉社)、「成長のための答えは、選手の中にある」(洋泉社)

 

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藤代圭一(ふじしろ・けいいち)
スポーツメンタルコーチ
スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どものやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝を目指す様々な年代のチームから地域で1勝を目指すチームまでスポーツジャンルを問わずメンタルコーチを務める。全国各地でワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。2016年からは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中を目指して」というビジョンを掲げ、全国にインストラクターを養成している。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)などがある。 

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取材・文:鈴木智之

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