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インタビュー

2017年12月12日

「ゴールまでの逆算」 鹿島を世界2位に導いた名将・石井正忠監督が語る、伸びる選手が備えているスキル

キーワード:大宮アルディージャ指導者柴崎岳石井正忠鹿島アントラーズ

2016年のFIFAクラブワールドカップ決勝であのレアル・マドリードに対して善戦を繰り広げ、世界2位に導いた石井正忠監督。鹿島アントラーズのユースのコーチ、トップチーム監督を経て、現在は大宮アルディージャで指揮を執る石井正忠監督と一緒に考える「子どもを伸ばすための大人の接し方、親子の距離感」の前編では、「大人の接し方」について考えました。

石井監督がしてきたように、ただ正解を教えるのではなく、選手自身で考え、納得して成長していけるように、自主性を促す接し方を心掛けるために、子どもとどのような距離感を保つのがいいのでしょうか。

後編も石井監督の言葉に触れながら、「親子の距離感」に迫っていきます。(取材・写真・文:本田好伸)

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<<前編:スパルタではない"厳しさ"で選手を強くする。石井正忠監督が考える「子どもを伸ばす大人の接し方」

■周囲に見守られてこそ成長できる環境

サカイク10か条で、「サッカー以外のことを大切にしよう」と推奨しているように、小さい頃から"サッカーだけ"を続けることが、必ずしもプロ選手を目指す子どもの将来のためになるとは言えません。石井監督も"サッカー以外の経験"の重要性を感じているそうです。

「子どもには本当にいろんな能力がありますが、それがいつ花開くのか、また、どんなきっかけで何に興味を持つのかも分かりません。だからこそ、子どもに様々な稽古を勧める親御さんは、選択肢を与えることで子どもの可能性を広げたいと考えているのではないでしょうか。いろんな経験は確かに、子どもの将来に役立つのではないかと思います」

可能性を広げるために、子どもに選択肢を与えることは有効だと思います。ただし、子どものためを思って選択肢を与える行動が、「あれもしてみなさい」、「これもしてみなさい」と、逆に子どもを窮屈に縛りつけてしまう可能性もあります。子どもは、サッカー以外にも様々な経験に触れたほうがいい。でも、親がそれを強要してしまったり、選択肢を与えすぎてしまったりするのはよくない。では、どうするべきなのでしょうか。

「本人が『やりたい』ということに対して、『こういう方法があるけどどう?』 と選択肢を示してあげるのはどうでしょうか。私は、子どものプレッシャーにならないように、自分の好きなことをやってくれたらいいと思っています。もしそれに飽きたら、きっと別の興味を持って、また好きなものを見つけていくでしょう」

こうした考え方は、石井監督が、ご両親から"見守られて"育ったことの影響を受けているようです。「両親は、勉強もスポーツも、『こうしたほうがいい』とか『これはしないほうがいい』ということを言わず、私の意志をずっと尊重してくれました。放任ではなく、私がやりたいとことを、すごくサポートしてくれていました」。千葉県の地元で日本料理屋を営む父親と石井監督の高校時代には、ちょっとしたエピソードがあります。

「父は父母会のまとめ役をしていて、キャンプなどで料理を提供することもあったのですが、私には絶対に会わない。友だちが、『お前の親父さんが来ていたよ』と教えてくれるんです。どこかでこっそりと見ていたんじゃないですかね。直接、何かを褒められたり、サッカーの話をしたり、そういうことはほとんどありませんでした」

石井監督は"日本料理屋の息子"として知られ、周囲からもよく声を掛けてもらっていたそうです。「だからこそ、親に何かを言われなくても、道を踏み外さずにやってこれたのかなと感じています」と、多くの人に見守られて成長していったようです。

「知らないうちにサポートしてくれて、いつも見てくれている。私は、両親のそういうところが好きでした。それに加えて、私には周囲の人からの声掛けがありました。だから私は、『周りの人に育てられた』と感じています」

石井監督にとって、子どもの頃から絶妙な距離感を保って両親が見守ってくれていたことは、何よりも大きかったはずです。こうした実体験から、石井監督は指導者として、親として、子どもとの接し方や距離感を自然と学んでいったのではないでしょうか。

■自分で考えて納得することの大切さ

石井監督は、鹿島アントラーズの監督時代、子どもの大会などで、スタンドでから声を出して応援する親御さんの姿に、以前とは異なる感覚を覚えたことがあるそうです。

子ども同士は、お互いに声を出し合ったほうが絶対にうまくいくと思います。でも、ピッチではあまりコミュニケーションが取れていなかった。それで子どもたちに『お母さんたちのほうが声を出しているよね』と冗談っぽく伝えました。それは本当のことだったのですが、ただ親御さんの声掛けは、子どものプレーに対してよりも、どちらかというと精神的な部分、『あきらめるな』とか、『もっと追い掛けろ』とか、そういう応援の仕方でした。それは子どもにとってもサポートに感じるかもしれないと思いました」

子どもと親との適切な距離感を考える上では、「家に帰ってどう接するのかも大切です」ということも忘れてはいけないテーマでしょう。

「クラブではコーチや監督が一生懸命教えてくれているので、親はそれをサポートしてあげる声掛けがいいのかなと思います。『あのコーチはこう言っていたけど、もっとこうしてみたら?』ではなく、その子自身を心からサポートしてあげられたらいいですよね」

■結果や正解を求めすぎないこと

自主性を促す意味でも、見守ってあげることが重要です。ただ同時に、それこそ子どもがプロを目指しているのであれば、きちんと伝えてあげないといけないこともあります。

「プロが始まった瞬間、プロ生活が終わるまでのカウントダウンも始まります。そういう厳しさや体、食事のことなど、親として教えてあげられることはありますから、本気でやらないといけない。でも、結果や正解を求めすぎてはいけませんよね」。

石井監督が言うように、"答え"ばかりを探したり、それを直接的に子どもに伝えて成果を得ようと考えてしまうことはあります。

「答えを導き出すのに時間の掛かることもあると思いますし、むしろ本当は時間を掛けたほうがいいこともたくさんあります。答えにこだわると、子どもは納得していなくても正解が分かってしまいます。子どもにとっては、あれこれ試行錯誤して、その結果こうだったんだと納得できることが、その子のためになります」

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文・写真:本田好伸

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