インタビュー

2015年3月20日

「子どもは自由に、親は我慢」山口素弘の子育て論

■子どもの未来のために、自由を与えてあえて失敗させる

――それ以外での“こだわり”はありますか?
 
本当に挨拶以外に思い浮かばないんですよ。挨拶、片付け、約束を守る……。当たり前のことしか言ってきませんでした。自分でやれることはやる、それ以外は自由とは言いませんが、やりたいことはやらせてあげたいという気持ちが強いです。逆に言えば、“自由を与える”ことがこだわりと言えるかもしれません。どんな親もそうだと思いますが、子育てしているうえで、いろいろな葛藤があるはずです。子どもの行動を見ていていると、「こうすれば解決できるのに…」、「こうしたほうが早いのに…」と思ってしまうもの。でも、そこで先回りして子どもたちに見本を示してあげるのはどうかなと思う。もちろん、そうすることが手っ取り早いのですが、そうして答えをすぐに教えてしまうと、子どもが失敗という経験をできずに成長する。それは成長とは言えないと思うんです。
 
――失敗から学んでほしいということですか?
 
そうです。やはり失敗して学べることは、すごく多いと思うんです。だからこそ子どもは自分で考えて行動し、たくさん失敗することが大事。自分の子どもに、とにかく失敗してほしいと思う親なんていませんが、自分自身で行動して失敗することは、子どもの成長には絶対に必要です。たとえば、四つん這いになって歩き始める、いわゆる“ハイハイ”は赤ちゃんが成長するうえで必要な動作です。でも、赤ちゃんはハイハイのやり方を誰からも教わっていない。つまり自分自身で考えて決めた動作なんです。それを見守ってあげることが大事だと思うんですよ。
 
――言いたいけれど言わないという“こだわり”ですか?
 
こだわりと言うものではありませんが、僕の子育ての基本はある意味、自分自身が我慢すること(笑)。子どもが大きくなってきて、「あれをやってはいけない」、「これをやってはダメ」と言って、チャレンジする機会が失われてしまうのはどうなのかな。サッカーでも同じことが言えると思うんです。やはり、誰でも褒められると嬉しいじゃないですか。ぼくもサッカーが好きになった理由はまさにそれで、自分で自由に選択できるところがすごく楽しい。自分で考えて自分で行動した結果を、監督やコーチが褒めてくれることが嬉しかった。言われたことをやって褒められるのとは違う。当然、成功と同じくらい失敗もありました。それを叱られることもありましたけど、自分がやったことを認められると自信につながりましたから。
 
――少年時代の失敗体験なくして成功体験なし、ですね。
 
そうですね。子どもたちに自由を与えて成長させてあげたい——。親としてもコーチという立場としても、そのスタンスは変わりません。転ぶことが分かっていながらも手を出さないことに親としてのジレンマはありますが、子育てというのは子どもの未来のためですから、やはり親のほうが我慢することが多いものだと思っています。
 
次回・後編は、父親・山口素弘さんが「長男」「次男」「三男」のそれぞれの性格と育て方の違いについて語ってもらいます>>
 
■山口素弘さんの他記事はこちら
・自分たちで考えて練習した小学生時代
・負けず嫌いがサッカー選手のベースになる
 
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