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「休んだ分を取り戻そう」はNG、Jクラブのドクターが教える長期休暇明けのコンディションを戻すのに必要な時間

公開:2020年7月 3日

キーワード:コロナストレスボールフィーリングマスク熱中症体幹熱中症熱中症対策腰痛

学校が再開され、スポーツのチーム活動も再始動しているかと思います。3か月近い自粛期間を経て、サッカーを再開するにあたって気をつけるべきこととは何でしょうか? 日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターも務める大塚一寛先生(上尾総合病院スポーツ医学センター長)のインタビュー後編では、例年以上に気をつけたい「熱中症」について、話をうかがいます。

(取材・文:鈴木智之)

 

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休んだ分を取り戻そうと負荷の高いトレーニングを長時間行うのは禁物(写真は少年サッカーのイメージ)

 

<<前編:休校明け、チーム練習再開で気をつけたいケガのリスク、適切な練習負荷とは

 

■外気が30℃の場合、マスクの下は42℃にも。マスク熱中症に注意

日に日に気温の上昇が見られます。このときに気をつけたいのが熱中症。とくに、気温や湿度が急激に変化する時期は、連日猛暑が続く時以上に注意が必要なようです。

「今年は自粛の影響で家の中にいる時間が長くなり、外気に触れる機会が少なかったお子さんも多いと思います。急に暑くなったり、気温が下がるときはとくに注意してください。たとえば18℃の日が4日続き、気温が突然28℃になったときに、前日と同じ強度のトレーニングをすると、熱中症になるリスクが高まります。それほど、急激な気温の変化には、気をつけなくてはいけないのです」

真夏の30度越えが連日続くとき以上に、涼しい日から一転して真夏日になるようなときは、気温や湿度の急激な変化に身体が対応できず、熱中症になりやすいそうです。

昨今、新型コロナウイルスの影響で授業中のマスクが必須になっていますが、スポーツ庁からは「体育の授業はマスク不要」と全国の教育委員会に連絡されています。大塚先生もまた「運動中のマスクは危険なので外しましょう」と呼びかけます。

「マスクをつけて運動をすると、外気が30℃の場合、マスクの下は42℃ほどになります。いわゆる"マスク熱中症"になる危険性があります。とくに、子どもたちは昼間に練習することが多いので、指導者は正しい知識を頭に入れておいてください」

とくに気をつけたいのが、試合中、ベンチに座っている子どもたちです。

「マスクをしたままベンチに座っている子は、炎天下の中でじっとしているので体温が上がり、マスクの中も高温になります。中国でN95マスクをつけて運動した中学生が死亡した例がありますが、気密性が高いマスクをして運動をするのは極めて危険ですので、絶対にしないようにしましょう。サッカーのプレー中にマスクをするのは、現実的ではありません」

熱中症だけでなく、ウイルス対策もしなければいけないので、今年の夏は気をつけるべきことがたくさんあります。飲水にも注意が必要です。いままでのように、スクイーズボトルを使って回し飲みをすることは、ウイルス対策の観点からは避けなくてはいけません。

「ウイルス対策の観点からすると、試合中に誰が口をつけたかわからないボトルを飲むわけにはいかないので、飲水タイムを設けて、各自のボトルから飲むようにすることも検討するべきでしょう」

 

■成長期だと自粛前と後で身体やボールフィーリングが変わっている子も

学校やスポーツ活動も再開していますが、急に3か月前と同じ強度のトレーニング、試合をするのは避けたほうが良さそうです。

「子どもの場合、基礎的なトレーニングから、試合と同じ強度のトレーニングに移行するのに、6週間ほどかかります。そこから逆算して、試合は何日から開催すると決めた方がいいでしょう。とくに子どもの場合は、慎重に段階を経て強度を上げていくこと。急に強度の高い練習を長時間すると、外傷リスクは確実に上がります

活動自粛によって失われた時間を焦って取り戻そうとすると、ケガのリスクが上がります。結果として、長期間サッカーができなくなることになるので、自粛明けの指導者には、トレーニングの時間や強度をコントロールすることが、いつも以上に求められそうです。

「トレーニングをしていない期間が8週間ある場合、もとに戻るのに8週間かかります。それを2、3週間で戻そうとすると、大幅にギャップがあるので、ケガをするのは当たり前です。すぐに戻そうとせず、時間をかけて戻さなければいけません。とくに小学生年代は身長が急激に伸びる時期なので、自粛前と自粛開けとでは身体のサイズ等の状態が違います。それなのに、2ヶ月前の感覚でやろうとすると代償が起こったり、整合性がとれなくなります」

長い休みによって、身長が急激に伸びる子もいます。自粛前と後では、身体やボールフィーリングの感覚が違うことは、頭に入れておいた方が良さそうです。

「極端な例ですが、フィギュアスケートの選手が、14歳のときにトリプルアクセルが跳べたのに、20歳になると同じように跳べなくなることがあります。それと似たようなことが、長期休暇明けの子どもたちの身体に起こる可能性があるので、とくに注意深く見ることが必要だと思います」

 

■今年ならではの、子どもに腰痛が出やすい理由

さらに、こう続けます。

「コロナの自粛時期はストレスが溜まっていた子が多いので、腰痛になる子が通常よりも出やすいと言えます。家の中でゲームばかりしていると背中が丸まり、体幹(※胴回りのこと)も弱くなります。"コロナ巣ごもり"のあとは、筋力の衰えとストレスや悪い姿勢から来る腰痛に気をつけてほしいと思います」

ウイルス対策と熱中症予防に加え、長期休暇開けの子どもたちに、どの程度のトレーニング量、強度で行うのかは、指導者の腕の見せ所です。夏はすぐそこに来ています。大人も子どもも例年以上に注意深く行動し、先の見えない時期を乗り越えましょう!

 

<<前編:休校明け、チーム練習再開で気をつけたいケガのリスク、適切な練習負荷とは 

 

Dr.otsuka_profile.JPG

大塚一寛(おおつか・かずひろ)
医師、上尾中央総合病院整形外科・スポーツ医学センター長。1999年からJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』や、『Jリーグチームドクター会議部部会長』を務める。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。

上尾中央総合病院・スポーツ医学センター

日本サッカー協会スポーツ医学医員

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取材・文:鈴木智之

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