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コロナで休止していたサッカーの練習再開で気をつけたいケガのリスク、適切な練習負荷とは

公開:2020年6月 8日 更新:2020年7月 3日

キーワード:Yo-Yoテストインターバルトレーニングオンライントレーニングケガコアピラティス体幹有酸素能力練習強度肉離れ足裏長期休暇明け

新型コロナウイルスの影響で学校やスポーツ活動がストップしましたが、6月に入り、日常復帰への兆しが見え始めました。学校再開とともに、スポーツ活動も段階的に再開されるところも増えてきています。

そこで今回は日本サッカー協会のスポーツ医学委員を務める大塚一寛先生(上尾総合病院センター長)に「長期の休みを経てスポーツを再開するにあたり、気をつけておきたいこと」をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之)

 

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長期休暇明けはケガのリスクが高まります。休んだ分を取り戻そうと急激に負荷をかけるのは良くないのです

 

後編:「休んだ分を取り戻そう」はNG、Jクラブのドクターが教える長期休暇明けのコンディションを戻すのに必要な時間>>

 

■長期休暇中明けのケガリスク、多いのは筋肉系のケガ

地域によって異なりますが、自粛によって3か月程度の活動休止を余儀なくされたクラブ、子どもたちはたくさんいます。長期休止が終わり、サッカーを再開するときに気をつけたいこと。それが「ケガ」です。

大塚先生は「長期休暇明けは、ケガのリスクが非常に高まります」と注意を呼びかけます。

「これは大人の例ですが、かつてMLB(野球)やNFL(アメリカンフットボール)でストライキが起きたことがあり、シーズンが中断しました。再開した後に、選手のケガが通常は10%程度だったものが、40%に跳ね上がった例もありますので、注意が必要です」

よくあるケガは「肉離れ」だそうです。長い期間、筋肉に負荷をかけていない状態で、激しい運動を再開したことから起こる、筋肉系のケガです。ほかにも、筋肉が戻っていない状態で運動すると、イメージ通りに体が動かずに転倒し、骨折するなどのリスクがあります。

「体力が落ちている状態で身体を動かすと、イメージとしては動けているつもりでも、身体がついていかないことがあります。それがケガにつながるので、足がもつれてねんざしたり、変な手のつき方をして骨折するといったケースに注意しましょう」

活動自粛期間中に、オンラインを利用して、トレーニングをしているクラブがたくさんありました。大塚先生は「良いことだと思います」と言います。

「ベーシックな体のコアに効くトレーニングや身体の連動性のトレーニングをすることで、バランスを崩す要素が改善し、体幹を含め不安定な下肢の動きを制動できるので、傷害の予防になります」

 

■オンライントレーニングは便利だけど、故障のリスクも......

オンライントレーニングで気をつけたいのが、正しい姿勢で行うこと。そして、動かす筋肉に意識を向けることについても、いつも以上に注意深く行うことです。

「たとえば、仰向けに寝ている状態でお尻を上げるトレーニングがありますが、これは大殿筋とハムストリング、多裂筋が連動するトレーニングです。しかし、お尻は上がっているけど、大殿筋が収縮せずに、背筋やハムストリングだけで押し上げてしまうと、鍛えるべき筋肉が動いていないことになります。ヒップリフトやスクワットなどは、姿勢や意識する場所が変わると、意味がなくなるどころか、正しく行われないと肉離れなど筋肉系のケガが起きやすくなってしまいます。代償を覚えてしまうことで、腰痛や関節を痛め、パフォーマンス向上につながらないという悪循環が起きます」

チーム活動ができない長期休暇中に家でするトレーニングとしておすすめなのがピラティスだといいます。ピラティスとは身体調整法のメソッドの一つで、理想的な姿勢と動作を学ぶことで体全体を整える効果があり、四肢の筋力強化、柔軟性の向上、筋持久力の向上が期待できるエクササイズです。また、ピラティスでは独特の呼吸法と組み合わせながら、脊柱 (背骨) や骨盤などのアライメントを整えることに重点がおかれている動きが多く、運動パフォーマンスの向上だけでなく、リハビリテーションにも用いられることがあります。

大塚先生は「翌日に筋肉痛が出るような、少し高い負荷のトレーニングをすると、筋肉は有効につきます」と話し、ピラティスの有効性を次のように語ります。

「サッカーに復帰するためには、有酸素能力を高めた上で、高強度のトレーニングをすることが重要です。ピラティスは呼吸を制動しながら、負荷をかけるときに息を吐きます。ドローインをして体幹(胴回り、身体の中心部分)を保持しながら、スクワットやヒップリフトをするので、身体の連動性を高めることができます。1分間のメニューを5本やるだけでも、たくさん汗をかくので、運動強度も高いです。自重トレーニングなのでケガをしにくく、筋肉に良好な負荷がかかります。ご家庭でお母さんとお子さんと一緒にするのもいいと思います」

 

■持久力も一気に戻そうとしては傷害のもと

筋肉と同じように、長期休暇で落ちてしまうのが持久力です。大塚先生は次のように述べます。

「マラソンのような一定のスピードで走る持久力はそれほど落ちませんが、高強度での持久力は、長期間のオフをとると落ちます。YO-YOテスト(持久力や回復力を見るテスト)のデータを見ると明らかで、30%ほど落ちるというデータがあります。高強度での持久力が衰えているので、一気に戻そうとすると、傷害が起きる危険性があります

サッカーは急なダッシュ、ストップを繰り返すスポーツ。高強度での運動が求められるので、再開に向けて、準備をしておきたいところです。

「マラソンのような一定の強度ではなく、ダッシュしてジョグ、ダッシュしてジョグのようなインターバルトレーニングはすごくいいと思います。自分が速いと思うペースで走り、ゆっくりジョギングして、また速いと思うペースで走る、というのを繰り返すと良いです。例えば、30秒だけペースを上げてみて、慣れてきたら60秒、120秒と走る距離を伸ばしていきます。心肺機能を高めるために必要な、最大酸素摂取量を増やすことができます。2、3ヶ月も休むと、酸素を運搬するために必要な毛細血管の数が減ってしまいます。それを回復させるために、非常に効果があります。インターバル走は急なストップ動作がなく、傷害の発生リスクも少ないのおすすめです」

ピラティスやインターバル走でベースの体力をキープするとともに、テクニックにも目を向けましょう。

 

■足裏のセンサーが鈍るとパフォーマンスダウン

サッカーは、ボールに触っている時間が一番楽しいもの。家の中でも、ボールと遊ぶことはできます。

「家の中では、リフティングや足の間にボールを挟むなど、ボールフィーリングを養うことを続けると良いと思います。人間の身体には、固有知覚深部受容器というものがありまして、ソールが硬い靴を履いて歩くと、足裏の感覚が鈍くなります。長期間ギブスをした状態をイメージすると、わかりやすいかもしれません。固有知覚深部受容器というセンサーが鈍るとパフォーマンスが落ちるので、ボールに触る時間を意識的に作りましょう」

家の中で柔らかいボールを使って、ドリブルやリフティングをしたり、壁に向かって蹴ることも、立派なトレーニングです。練習再開に向けて、家庭でできる準備をして、外で思いっきりボールを蹴ることのできる日を楽しみに待ちましょう!

後編:「休んだ分を取り戻そう」はNG、Jクラブのドクターが教える長期休暇明けのコンディションを戻すのに必要な時間>> 

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大塚一寛(おおつか・かずひろ)
医師、上尾中央総合病院整形外科・スポーツ医学センター長。1999年からJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』や、『Jリーグチームドクター会議部部会長』を務める。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。

上尾中央総合病院・スポーツ医学センター

日本サッカー協会スポーツ医学医員

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取材・文:鈴木智之

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