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考える力

修正に半年かかるクセをダルビッシュが2日で治せる理由

2014年4月 8日

キーワード:リラックス

前回、身体の余計な緊張やクセを取りのぞくことで、本来のパフォーマンスを発揮することができるアレクサンダーテクニークの考え方をご紹介しました。「ボールをよく見なさい」というコーチングのなかにも落とし穴がある、その理由をわかっていただけたでしょうか。今回は子どもたちがどのようなことに気をつけてプレーをするべきかを伝授していきます。
 
<<ボールをよく見なさい。その一言が子どもの動きを制限する
 
試合中
 

■「いま緊張している」と自覚できるか

「子どもがプレーしている最中に『いま緊張してるな』と気付けるかどうかがポイントでしょう。野球のイチロー選手やダルビッシュ選手は、自分がどう動いたか、なにをしたかを明確に説明できます。それは自分がなにをしたか、どう動いたかを理解しているからです。理解できれば修正も簡単にできるのが道理。ダルビッシュ選手は、普通なら半年かかるステップの修正を2日でやってしまったそうです。最近では、タレントの武井壮さんがテレビ番組で語っていましたが、彼らは自分がなにをしているのか、どう動いているのかを理解しています。そういった習慣をつければ自分の身体のどこが緊張しているか気付けるはずです。アレクサンダーテクニークでいうと、首が固まっているかどうか、それを自覚することが重要です」
 
首が固まっているかどうかが最大のキーになることはわかりました。では、子どもたちが自分の首が固まっているか自由になっているかを見極めるには、どういった要素に注目すれば良いのでしょうか?
 
「一番難しいところですね。動きの質がナチュラルなのか、それとも固まっているように見えるのか、これがポイントです。ただ、各選手によって身体の作りは違いますし、そうなれば当然動き方は違います。指導者が見極められるようになるには時間がかかると思います。動きのいい選手と固まっている選手を見比べることが、子どもの動きの質を見極めるトレーニングにもなります。見比べることで質の違いがなんとなく伝わると思います。その『なんとなく』がはっきりわかるようになれば、目が養われていくでしょう」
 
「メッシのような選手になれば、当然、動きはスムーズですよね(笑)。逆に言えば、プロの中でも身体の一部が緊張しているように映る選手はいます。サッカーはグループ戦術も関わってくるので、身体の動きが悪いからといって必ずしも活躍できないわけではありません。しかし、体の動きが改善されればもっと上のレベルにいけると思う選手もたくさんいます」
 

■テーブルのコップを取ってみてください

では、緊張やクセに気づくスキルを磨くためのトレーニングには、どういったものがあるのでしょうか。
 
「ビデオで自分のプレーを見るというのは有効だと思います。自分のプレーを見て悪いところを確認するのもいいですし、いい選手のプレーを見て真似ることもできます。それこそミラーニューロンで父親の真似をするのと同じ原理ですよね。そこに、さらに親や指導者が適切な言葉をかけてあげると効果も増していくでしょう」
 
しかし、たとえば右利きで足の回転も遅い選手が、メッシのプレーを真似しようとしても難しいのでは?
 
「その子がメッシをどう観察してなにを学ぶかによります。メッシを見て『力が抜けているな』『自然にプレーしているな』という部分を真似すれば、それは効果的です。なんとなく見てなんとなく真似するくらいがいいでしょう。メッシのプレーに自分を当てはめようとしてしまうと、無理が出て固まってしまうでしょう」
 
実際に体験してもらうのがいいのでしょう。テーブルのコップを取ってみてください。意識はどこにありましたか? おそらくコップや手先にあったと思います。首に意識がありましたか? それはすでにコップに意識にとらわれているんです。サッカーで言えば、ボールや相手にとらわれている状態です。これを『自分がここにいる、首はここにある』と思いながら、なんとなく取ってみてください。それだけで体の動かし方がまったく違います。これがアレクサンダーテクニークの考え方です。
 
「サッカーのトレーニングに落とし込むなら、たとえばパス回しの最中にまったく別のところからゴムボールを投げて当ててみる、などですね。ボールにとらわれていなければ、周りの状況把握ができていて避けられるはずです。とらわれていると、ゴムボールは見えないので当然避けられません。ここでいう『とらわれる』とは、首が固まって意識がボールにしかない状態です」
 
首の緊張を取る高椋さん
取材したライター中村の首の緊張を取る高椋さん。この方法が誰にも当てはまるわけではない
 
 
アレクサンダーテクニークはマニュアルやテクニックにするのがとても難しいと高椋さんは言います。それは具体的になった時点で固まってしまうからです。「自分で意識的に変化を起こしていけるようになる」。これがアレクサンダーテクニークの目指すところ。これができれば、一旦スランプに陥っても自分の力で抜け出すことができます。才能だけでプレーしていて自分がなぜ上手くプレーできているかを理解していない選手は、一旦崩れてしまうとなかなか立ち直れません。自分のプレーを理解している選手は、なにが悪いのかを分析して改善します。「絶対に決めてやるぞ! と考えるからシュートするときに緊張するんだな」といった具合に、なぜ緊張するのか、その原因に気づくのです。
 
過度な緊張は子どもの成長にとってマイナスです。まずは、自分が送った言葉に子どもの体がどんな反応をしているのか、緊張したのか、リラックスしたのか、それに気づけるようになることから始めましょう。
 
 
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高椋浩史
大学時代は筑波大学蹴球部に所属。毎週少年サッカーの指導を行う中で、選手が伸び伸びと自分の力を発揮するためにはどのような指導をすればよいかということを探求し始める。卒業後は一般企業に就職するが、好きなサッカーに関わっていきたいという思いから退社し、筑波大学大学院に入学しサッカーコーチ学を学ぶ。日本サッカー協会の指導者養成コースの補助員を行い、日本のトップコーチ陣の指導を間近で見て学ぶ。
 
2001年から2年間、青年海外協力隊員としてバングラデシュへ赴任。サッカーを指導する。そこで出会った人たち、特に肉体労働をしている人たちの身のこなしの美しさや強さ、精神的なたくましさ、人間的な器の大きさなどに衝撃を受ける。探求をしていたカラダの使い方のお手本のような人達をみて、自分もカラダの使い方を教えることができるようになりたいと思い、様々な身体鍛錬法やメソッドを学んだなかで最後に出会ったのがアレクサンダー・テクニークであった。
 
2006年からはBODYCHANCE教師養成コースで学び始め、2010年に認定を受け教え始める。2012年11月に吉祥寺にアレクサンダー・テクニーク教室FUN!を設立、現在に至る。
 
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文/中村僚 写真/サカイク編集部・田川秀之

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