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考える力

ボールをよく見なさい。その一言が子どもの動きを制限する

2014年4月 7日

キーワード:コーチング指導

いま、緊張していませんか? スマホを操作する指先に、マウスを操作する手先に、見つめている画面に、意識がとらわれていませんか? それは、サッカーでいえばボールにとらわれて周囲の状況が見えていない状態です。アレクサンダーテクニークをサッカーに応用すれば、不要な癖や緊張から開放されて、自分の思い通りのプレーができるようになるかもしれません。
 
今回は日本アレクサンダーテクニーク協会教師であり、自身もサッカーの指導に携わってきた高椋浩史さんにお話を伺いました。
 
高椋浩史さん
 

■緊張やクセを取り除くアレクサンダーテクニーク

「アレクサンダーテクニークとは、自分の体についてしまった悪いクセや習慣を取り除き、より効率的に体を使おうという考えです。サッカーでは余り聞き慣れない言葉ですね。主に俳優や音楽家の間で活用されているものです。スポーツでは、テニスのジョン・マッケンロー選手、サッカーでは元ドイツ代表FWのアーロン・ハント選手が取り入れています。元々はスポーツというよりも、人間が本来持っている能力を最大限発揮するために、緊張や癖を辞めようという考えです」
 
「アレクサンダーテクニークを活用すれば、緊張やクセから開放されて、思い通りのプレーができるようになります。また、自分の本来の動きを取り戻し、より効率的な運動や、疲労の軽減にもつながるでしょう。例えば、ゴール前でGKと1対1の場面で、緊張してしまってハズしてしまったことはありませんか? そういった場面でも、緊張せずに冷静にプレーできるようになります」
 
今回アレクサンダーテクニークに注目したのは、緊張やクセを意識的に取り除けるものだからです。個人的に、緊張やクセの類は経験を積むことでしか解消されないと思っていました。しかし、アレクサンダーテクニークは意図的に緊張状態から抜け出すことを目指しています。
 
まず最初に、緊張やクセが生まれてしまう原因を知る必要があるでしょう。
 
「さまざまな原因が考えられます。たとえば、ミラーニューロンという動きを真似する神経回路があり、親や先生の動きを無意識に学んでしまうことがあります。子どもがお父さんの動きを、無意識のうちに真似してしまう現象です。子どもがお父さんとそっくりな歩き方をしているのをよく見かけますよね。また、学校の授業で1日4~5時間も机に座っていることになりますが、それも子どもによっては原因になりえます」
 
原因は悪い習慣から発生するケースもあると言います。
 
「サッカーに限らず、頭を下に向けて固めてしまうのが一番悪い習慣ですね。首の緊張につながってしまいます。首は全身の動きに影響を与えます。脊椎が縮むようなクセがついてしまうと、動きが邪魔されてしまいます。“固める”というのもいろいろあって、肩に力が入って縮こまっている状態もあれば、伸ばして固まっていることもあります。大切なのは、首が自由に動かせる状態にあることです」
 
試合中
 

■「ボールをよく見なさい」が、子どもの動きが制限する!?

身に覚えのある話が続きます。ここからの話は、自分が子どもだった頃に、あるいはあなたが子どもに投げかける言葉の中に、心当たりがあるかもしれません。
 
「例えば、『気をつけ!』と言われると、動きが制限されませんか? サッカーだと『姿勢を意識して』と指示すると、逆に選手の動きが固まることはありませんか? 本当は動きを改善したいはずなのに、これだと逆に動きを制限してしまう指示になっています。頭を固めるクセは、サッカー選手に多く見られます。なぜなら、ボールが下にあるからです。ボールを見にいくとどうしても固まってしまいます。『ボールをよく見なさい』『丁寧にプレーしなさい』と言われると、選手は必要以上に見ることを重視してしまいます」
 
それでは、アレクサンダーテクニークの視点からみてお手本となるような世界のトッププレーヤーとは?
 
「誰が見ても素晴らしいと思う選手、たとえばマラドーナやクリスティアーノ・ロナウドなどはいいお手本です。彼らは自然な動きができています。頭は下に向いていなくとも、自由自在にボールを扱っています。一方で、ジダンはすごくボールに集中してみていますが、頭を下向きには固めていません。それが彼の本来の動きなので、まったく妨げになっていないんです。じつは動き方はなんでもありなんですよ(笑)。大事なのは、その人本来の動きができているかです」
 
なんとなくアレクサンダーテクニークの言いたいことがわかってきました。では、実際に緊張を取り除くためには、どういった声がけやトレーニングが必要なのでしょうか?
 
「親や指導者は、なるべく選手にクセをつけさせないことです。そしてその方法はひとつではありません。たとえば、先に挙げた『丁寧にプレーしなさい』という指示。これも、選手がどう受け取るかで変わってきます。“丁寧に”と言って選手の動きがスムーズになるなら、じつはそれで問題ないんです」
 
「言葉による指導は本当に難しく、受け取る人間によってとらえ方が180度変わることもあります。親の意図と子どもの受け取り方が違うことも日常茶飯事です。自分の言葉にどう反応したか、それを一人ひとり見ていくことが大切だと思います」
 
「もうひとつは、自分自身が緊張から自由になることでしょう。子どもにデモプレーを見せるとき、あるいは声をかけるとき、自分の首が固まっているのに『自由にしましょう』と言っても伝わりません。選手たちは無意識にその緊張を見てしまいますから」
 
一人ひとりのコーチングの仕方を変える。自分自身が自由になる。改めて指導の基本に立ち返ることが必要なのかもしれません。次回は、具体的に子どもたちがなにを意識すれば良いのかをお届けします。
 
 
高椋浩史
大学時代は筑波大学蹴球部に所属。毎週少年サッカーの指導を行う中で、選手が伸び伸びと自分の力を発揮するためにはどのような指導をすればよいかということを探求し始める。卒業後は一般企業に就職するが、好きなサッカーに関わっていきたいという思いから退社し、筑波大学大学院に入学しサッカーコーチ学を学ぶ。日本サッカー協会の指導者養成コースの補助員を行い、日本のトップコーチ陣の指導を間近で見て学ぶ。
 
2001年から2年間、青年海外協力隊員としてバングラデシュへ赴任。サッカーを指導する。そこで出会った人たち、特に肉体労働をしている人たちの身のこなしの美しさや強さ、精神的なたくましさ、人間的な器の大きさなどに衝撃を受ける。探求をしていたカラダの使い方のお手本のような人達をみて、自分もカラダの使い方を教えることができるようになりたいと思い、様々な身体鍛錬法やメソッドを学んだなかで最後に出会ったのがアレクサンダー・テクニークであった。
 
2006年からはBODYCHANCE教師養成コースで学び始め、2010年に認定を受け教え始める。2012年11月に吉祥寺にアレクサンダー・テクニーク教室FUN!を設立、現在に至る。
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文/中村僚 写真/サカイク編集部・田川秀之

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