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考える力

プレーするチャンスを公平に フィンランドの「オールスターズ」

2013年10月 9日

キーワード:欧州サッカー育成

 チームの勝利や目の前の結果ばかりにとらわれてしまいついつい忘れてしまうこともありますが、子どもたちのサッカーで一番大切に考えたいのは、プレーする子どもたち一人ひとりのこと。多くの子どもたちがサッカーを始める小学生年代では特に「すべての選手を主役に」という思いを持って接したいものです。
 
 サカイクでも先日全員が試合に出ることに重きを置いた兵庫FCの取り組みをご紹介しましたが、どんなスポーツでも試合に出る頻度、プレーに関わる機会を均等にすることは並大抵のことではありません。
 
<<すべての人にサッカーを UEFAが大切にするグラスルーツの理念
 
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■すべての子どもに均等なプレー機会を

 昨日ご紹介したUEFAグラスルーツプログラムでは、地域のサッカー、草の根を活動の振興を目的としていますが、このプログラムが誕生する以前から、こうした活動に積極的に取り組んでいる国があります。「ムーミンの国」としてもお馴染みのフィンランドです。
 
 フィンランドは国の公共サービスが充実しているといわれる北欧諸国の中でも特に教育大国として知られています。またフィンランドのボランティア活動や身体活動、スポーツ活動への参加率は世界一といわれ、2011年には首都ヘルシンキから北に100㎞の場所にあるハメーンリンナという街の地域クラブが、UEFAグラスルーツ賞を受賞しています。
 

■フィンランド「オールスターズ」プログラム

 フィンランド協会が国を挙げて取り組んでいるのが「オールスターズ」という育成プログラムです。2000年10月にスタートしたこのプログラムは、0歳から20歳までのプレイヤーをすべて「スター」と捉え、それぞれのカテゴリーでたくさんボールに触れる環境、サッカーをプレーするフェアな機会を作ることを目的にしています。
 
楽しみの世界 0歳から11歳
0歳から11歳は「楽しみの世界」。ボールにはじめて触れる子どもから、ゴールデンエイジを迎え、飛躍的にテクニックを伸ばす子どもまでをカバーするこの年代では、プレーする全員が最低でも試合の半分はプレーするようにと明文化されています。
そうなると、プレー人数の問題も出てきますが、フィンランドでは11歳までは5人制と7人制を併用しています。このほかにもフットサルが行われていて、できるだけ試合を増やし、プレー機会を均等にすることが常識になっています。11歳の選手たちは次年代への準備として9人制でもプレーします。
 また、この年代では試合中にレッドカードやイエローカードは提示されません。出されるのはグリーンカードのみ。実はこのグリーンカード、1998年に世界で最初に取り入れ、実践したのがフィンランドでした。
 
友だちの世界 12歳から15歳
 本格的にサッカーに取り組む日本の中学生に当たる年代では英語にすると「buddy=バディ」、友情をテーマに取り組む年代になります。クラブのプレーレベルによって7人制と11人制と使い分けることが決まっていて、トップを目指す選抜チームなどでは11人制サッカーが本格化します。フィンランド協会では「オールスター」を掲げていますから、地域で週一回ボールを蹴る子どもたち、それと同時にナショナルチームや欧州トップクラブを目指す子どもたちの育成もこのシステムの中で育てようと志しているのです。
 もちろんプレー機会を得られやすい5人制やフットサルも併用され、12歳ではそれまで親しんだ9人制のサッカーが行われることもあるようです。
 
将来の世界 16歳から20歳
 今後サッカーとどう付き合っていくか? 16歳から20歳までの年代は将来のプランを考える時期です。フィンランドではこの年代ではじめて全国規模の大会が行われます。
「友だちの世界」で身に付けたサッカーのルールを主体的に考え、レフェリングやイベントの運営、コーチングにいたるまで、自分たちがサッカーをプレーする以外にもサッカーに関わる様々なことが学べるようなカリキュラムが用意されています。
 
 ご紹介したいフィンランド協会のオールスターズの取り組みはまだまだあります。「サッカーを始めてみようかな?」と思い立った子どもには1ヵ月は無料で保険をカバーするというスポーツ保険のトライアル制度は「まずやってみよう」という子どもたちを強力に支援するものです。
 
 協会主導で進められるミーティングの制度もあります。シーズン前に選手とコーチだけでなく、保護者とコーチ、そして地域の他チームのコーチ同士の間でもミーティングを持ち、チームの方針について話し合いが持たれます。この話し合いのメインテーマは「どうしたら子どもたち全員がプレーする機会を均等に得られるか」です。そのために地域のコーチと親、子どもたちが考えを出し合い、トレーニングや試合の方針を決めていくのだそうです。
 
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■ルール整備から変える育成

 フィンランドでは「プレー機会の確保」に協会を挙げて取り組んでいます。オールスターズプログラムは単なる目標ではなく、育成システムとしてフィンランドに根付いているようです。冒頭紹介したハメーンリンナのクラブ、その名もFCハメーンリンナというそうですが、このクラブには1,000人を超えるユースプレイヤーが在籍しています。このチームは学校や地域のコミュニティと連動、連携を深め、子どもたちにより良い環境を提供しているとしてUEFAからグラスルーツ賞を受賞しました。こうしたクラブの取り組みの根底にはフィンランド協会が国を挙げて掲げる「オールスターズ」の精神があったのではないでしょうか。
 
 フィンランドの育成年代の指導者はそのほとんどがボランティアの地域住民によってまかなわれています。フィンランドサッカー協会のホームページによると、フィンランドの成人の16%(536,000人)が、なんらかの身体活動やスポーツ、ボランティア活動に参加しているそうです。そのうちの16%に当たる84,000人の人はサッカーに関わる活動をしています。男女同権の意識が高いフィンランドではもちろん女子プレイヤー、女子指導者も多くいます。このフィンランドの例を見れば、日本ではボランティアの指導者が多いという言い訳は通用しません。
 
「すべての選手を主役に」日本でも多くのチームで素晴らしい取り組みがあり、日本サッカー協会でもこうした環境の構築に力を注いでいますが、まだまだすべての人に浸透しているとは言い難いのが現状です。国のサッカー協会を挙げてまずルールを整備したフィンランド協会の取り組みは、これからの日本サッカーの育成でも参考にできることが多いのではないでしょうか。
 
<<すべての人にサッカーを UEFAが大切にするグラスルーツの理念
 
 
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(第37回全日本少年サッカー大会

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