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なぜファウルをしてはいけないのか サッカーのルールとのつきあい方

2012年11月26日

キーワード:ルール

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 さていきなりですが、問題です。サッカーのルールで「手を使ってはいけない」という大前提と同じくらい古く、大切なルールとは何でしょう?
 
 正解は「トリッピング(足を掛けて転ばせる)あるいはハッキング(相手の脛を蹴る)の禁止」。19世紀、英国パブリックスクールの紳士のスポーツとして普及しつつあったサッカー(フットボール)。1863年、世界最古のサッカー協会FAによって、初めての統一ルールが作られました。その統一ルールに、手を使ってはいけないという大前提とともに並んで記載されているのが、いまで言う「ファウル」の反則を禁じた条文です。
 
 

■ファウルはどうして反則なの?

「どうしてこれがファウルなの?」「なんでさっきのがイエローカードで、いまのは違うの?」
 
 小学生というと、なんでも「なぜ?」と聞いてくる好奇心旺盛な時期。「レフェリーは絶対なんだ」「判定に文句を言ってはいけない」と一喝することもできますが、子どもたちは判定に対する不満ではなく、素朴に不思議と思って聞いたのかもしれません。実はこの質問、子どもたちの好奇心を摘み取らず、しかもサッカーそのものをサジェストできるチャンス。あなたならなんと答えますか?
 
 オフサイドはなぜ反則なのか?にも書きましたが、サッカーはその歴史、成り立ちからいっても「紳士のスポーツ」です。初めての統一ルールにトリッピングとハッキングが禁止事項として盛り込まれている理由も、相手選手をケガから守るという側面よりも、サッカーにふさわしくない、「紳士らしくないから」の一語に尽きます。1891年にゴール近くでのファウルを抑制するためにペナルティキックのルールが導入されますが、基本的に「紳士がするスポーツ」ですから、罰則を規定するよりも紳士は卑怯な振る舞いをしないという前提に立った「性善説」に基づいて試合が運営されていました。
 
 その後サッカーは世界中で爆発的な普及を果たし、人種や考え方の違うさまざまな国それぞれの「サッカー」になっていきました。普及の課程で、さまざまなルールが誕生し、それぞれが時代と競技に合った形で改変され続けています。
 
 

■どんな行為がファウルなのか?

 現在はトリッピングやハッキングなど、ファウルの種類を限定して呼ぶことはなくなり、下記の競技規則第12条にある、ファウルと不正行為を総称してファウルと呼んでいます。
 
第12条 ファウルと不正行為
 
競技者が次の7項目の反則のいずれかを不用意に、無謀にまたは過剰な力で犯したと主審が判断した場合、直接フリーキックが相手チームに与えられる。
 
?相手競技者をける、またはけろうとする。
?相手競技者をつまずかせる、またはつまずかせようとする。
?相手競技者に飛びかかる。
?相手競技者をチャージする。
?相手競技者を打つ、または打とうとする。
?相手競技者を押す。
?相手競技者にタックルする。
次の3項目の反則のいずれかを犯した場合も、直接フリーキックが相手チームに与えられる。
?相手競技者を押さえる。
?相手競技者につばを吐く。
?ボールを意図的に手または腕で扱う(ゴールキーパーが自分のペナルティーエリア内にあるボールを扱う場合を除く)。
 
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■「相手の足を蹴ったら痛いし、ずるい」サッカーの精神を身につけよう

 子どもたちにルールを教える場合も、試合や練習ゲームの中で徐々に経験して覚えていくことが多いと思います。なかには「ファウルの基準」がわからず悪気なくファウルをしてしまう子どももいるかもしれません。そんなときには「サッカーはボールを蹴るスポーツ。相手の足を蹴ったら痛いし、ずるい」と声をかけてあげましょう。
 
ファウルの判定に対して、よく意図的か意図的でないか「ボールに行っている」という反論を耳にしますが、わざとであっても不可抗力でも危険行為はファウルと見なされます。ボールに行ったとしても後ろから無理に身体を入れてボールを奪いに行き、結果相手が負傷したならそれは悪質なファウルです。「そんなつもりじゃなかった」は通用しないのです。サッカーのルールは他のスポーツに比べてもとてもシンプルに作られています。細かい条文を覚える必要はありません。紳士のスポーツであることに照らし合わせて、サッカーの精神、「ずるい」か「ずるくないか」の判断ができるようになれば、小さな子どもも紳士の仲間入りです。
 
 さまざまなローカルルールが存在していたサッカー黎明期、試合にレフェリーは存在せず、微妙な判定はキャプテン同士の話し合いで決められていました。ルールは誰かを罰するためにではなく、試合を楽しむために存在し、非紳士的な行為は勝敗とは別に不名誉な行為として敵味方問わずに糾弾される。校庭で子どもたちが草サッカーをやっているのを見ていると、審判もなしに自分たちでルールを守ってプレーしているのに驚きます。彼らは彼らなりに、どんなルールがあればケンカせずに楽しくプレーできるかを考えているのでしょう。
 
 いまではサッカーの試合で目にしないことがない「イエローカード」や「レッドカード」が導入されたのは、なんと1968年。それまでも退場者や警告の概念はありましたが、観衆やテレビ視聴者にもわかりやすく判定を伝えるためのシンボリックな存在としてルールに加えられました。「ルールだから」守るのではなく、自分の感覚に照らし合わせて「ずるいプレー」をしない。世界的なメジャースポーツになったいまも、サッカーの本流はここにあります。
 
「勝負の世界だから綺麗事だけでは済まない」
 
 そんな声もあるかもしれませんが、それこそ育成年代に関わるすべての人に議論して欲しい議題です。その点については、もう少しルールにとのつきあい方について理解を深めてから、再度取り上げてみたいと思います。次回は今回お話しした基本的なルールへの理解をもとに、それでもやっぱり納得いかないこともある「判定との向き合い方」について考えてみます。
 
 
続きの記事「レフェリーの判定とどう向き合う?サッカーの精神からレフェリーについて考える」を読む>>
 
 
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(ダノンネーションズカップ2012より)

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