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テクニック

ハードなプレッシングを90分間持続させた、チリ代表の身体の動かし方

2014年7月 6日

キーワード:プレッシングワールドカップ体力守備運動

ブラジルワールドカップで席巻したスタイルは、90分間持続するハードなプレッシング。その代表的なチームがチリでした。すでに敗退してしまいましたが、彼らは前線のフォワードからハードなプレッシングをかけ続け、グループリーグでスペインを破り、そして決勝トーナメント1回戦ではブラジルを苦しめました。個人技術の高いスペインやブラジルの選手たちが中盤でボールをキープできないほど、彼らのそれは強烈だったのです。
 
この影響はJリーグの指導者にも飛び火。ハードなプレッシングをベースとしたサッカーを標榜する松本山雅の反町康治監督は、6月にあるリーグ戦の直前に選手たちにチリ代表のプレーを見せてイメージをふくらませたそうです。
 
彼らはなぜ、90分間持続する強烈なプレッシングを放ち続けることができたのでしょうか。
 
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取材・文/杜乃伍真 写真/田川秀之
 

■骨盤をリセットするとプレッシングで疲れない!?

 
「体重移動」ではなく「重心移動」の重要性を説くフットボールスタイリストの鬼木祐輔さんは「骨盤(全身)のリセット」にそのヒントを見出しています。
 
「彼らは90分のなかで、意識している・していないにかかわらず骨盤をリセットする動きを何度も入れているんです。守備をするスタートを切らないといけないと感じた瞬間に、少しだけお尻をあげるようにして、背筋をシュッと伸ばすような動作を入れている。そうすることで骨盤がリセットされるので、骨盤の根元に埋まっている両脚がフリーの状態になって動きやすくなるんです。イメージとしては、身体の中心=重心が前へ先行して、その後追いとして両脚がくっついてくるような運動ができているということですね」
 
たとえば、チリが2対0で退けたスペイン戦の85分。スペインのセンターバックが自陣ペナルティエリア内でボールを持ち、左右どちらに展開しようかと覗っているシーンでは、チリのボランチ、マルセロ・ディアスがミドルサード付近まで前へ顔を出して、前から連動してプレッシャーがかけられるように相手の様子を覗っています。このときディアスはボールホルダーを見ながら、トンという感じでお尻をあげて、シュッと背筋を伸ばし、左右どちらに展開されてもすばやく追い込めるような準備をしています。そして、ボールが出された瞬間に移動して連動したプレッシングとその強度を保つことができています。85分という疲労が蓄積しているだろう時間帯にもかかわらず、です。
 
「チリの選手たちは、このシーンで瞬間的にお尻を上げ、背筋をシュッと伸ばすようにして骨盤(全身)をリセットしています。お腹の下の辺り=重心を高く保って守備ができているので、両脚が地面に居着いておらず、相手のビルドアップのパスがサイドに出された瞬間に反応して、重心を先行させながらスムーズに身体を動かすことができているんです。だから、前へ前へというハードなプレッシングを90分間続けることができたのです」
 
もしもこれが、お尻が下がった状態のまま、そのために両脚で地面を蹴るようにしてプレッシングのスタートを切らなければならず、つまり、筋肉の力で踏ん張るように前へ進む移動(体重移動)を繰り返していたらどうでしょうか。果たして90分間、あれだけの激しい動きを続けることはできるのでしょうか。
 

■伸ばす筋肉は強く疲れにくい

 
 鬼木さんはこう補足します。
 
「“伸ばす筋肉”は強く、疲れにくいと言われています。つまり、お尻を上げて、背筋をシュッと伸ばすような体勢をつくることで、結果的に強く、疲れにくい筋肉を使うことができるのです。一方、“曲げる筋肉”は、思ったよりも力が出にくく疲れやすい、と言われています。出そうとすればするほど、より大きな力を出さなければならず、それを繰り返すと疲れてしまいます。プレッシングをかける瞬間に、お尻が下がっていると自ずと背筋も丸く、猫背のようになりがちなので、結果として地面を蹴るように両脚の筋力に頼ってスタートを切らなければならず、疲労が蓄積しやすいのです。この差は、90分トータルの積み重ねとして大きな差になると思います」
 
 また、鬼木さんの見立てでは「格上と対峙するときには、たいがい無用な力が入って身体が力んでしまい、それによってお尻が落ちて背中も丸まり、曲げる筋肉を使うことになりがち」とのことですが、今大会のチリの選手にはそういうネガティブな素振りはほとんど見受けられませんでした。
 
「それはグループリーグの素晴らしい戦いで世界王者スペインを撃破し、その自信からブラジル相手にもまったくひるまずに勇敢な戦いができた、ということが言えるのかもしれません」 
 
チリの人々は、真面目で集団性に優れており、日本人に近い国民性を持つと言われています。また、その選手たちの平均身長は今大会の出場参加国のなかで最下位でした。同じように欧米の列強に対してサイズで劣り、“集団的に前から奪う攻撃サッカー”を標榜していた日本が、今大会のチリの戦いぶりから学ぶべき点は多いのではないでしょうか。
 
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取材・文/杜乃伍真

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