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こころ

トランスジェンダーに学ぶ!差別とは、リスペクトとは、サッカーとはなにか?

2015年3月 6日

キーワード:リスペクト差別

『ネクスト・ゴール 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』という映画をご存知でしょうか? アジアにおける日本のライバルでもあるオーストラリアに大敗し、すべてを諦めかかけたアメリカ領サモアの代表チームが、オランダ人監督を招聘し、再びサッカーと向き合い、成長していく姿を描いたドキュメンタリー映画です。
 
この映画はサッカーをプレーする子どもたちとその両親に多くの教訓を与えてくれます。自分を信じること、努力することの大切さ、ひたむきさの価値、サッカーの素晴らしさ……。ぜひ、映画本編も観てほしいと思いますが、今日は映画のお話ではなく、その映画に出演したひとりのサッカー選手についてのお話をしようと思います。いつものサカイクとは少し趣が違うテーマになりますが、そのサッカー選手のお話から私たちが学べることは必ずあります。サッカーで何を学ぶか? 何のためにサッカーをプレーするのか? 今日はサッカーを通じて、人生の大切な問題について考えてみましょう。(取材・文 大塚一樹)
 
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■トランスジェンダーを知っていますか?

2011年、映画の主役であるアメリカ領サモア代表チームがブラジルW杯を目指すオセアニア予選に出場したとき、ひとりの選手が世界から大きな注目を集めました。その選手の名前はジャイヤ・サエルア。ジャイヤ選手が渦中の人になった理由。それは“彼女”がトランスジェンダーとしてはじめて、W杯予選に出場した選手だったから。
 
当時このことについてコメントを求められた彼女は「W杯予選に出場した最初のトランスジェンダー選手になれたことを光栄に思うわ。でも、もっと大切なことがあるの。“誰”ではなく“何をしたか”で人を評価することよ」と答えました。「人と違うこと」「誰かと比べられること」にはっきりとNOを表明したジャイヤ選手はどんな人物なのでしょう?
 
サカイクでは先日行われたヨコハマ・フットボール映画祭のために来日したジャイヤ選手にインタビュー。トランスジェンダーについて、差別や偏見、違いに対する恐怖、誤解、そして人間愛やお互いの尊重しあう方法など幅広いテーマについてお話を聞きました。
 
「そんな大ニュースになるなんて思っていませんでした。私がW杯予選に出場したはじめてのトランスジェンダーだということも後から知りました」
 
アメリカ領サモア男子代表としてピッチに立つジャイヤ選手は、女性の心を持つトランスジェンダーです。“第3の性”とも言われるトランスジェンダーとは一体どんなものなのでしょう? まずはジャイヤさん本人にお聞きししました。
 
――サカイクの読者の中にはトランスジェンダーという言葉に耳馴染みのない人も多いと思います。第三者の解説で誤解を産んでもいけないと思うので、トランスジェンダーがどういうものなのかジャイヤ選手からご説明いただけますか?
 
「私の理解ではトランスジェンダーとは、間違った身体で生まれてきた人のこと。物理的な性別と内面的な性別が一致していない人のことです。人間には身体のほかに感情や精神、魂があります。私の場合、肉体は男性でも魂、パーソナリティは女性なのです」
 
トランスジェンダーは一般的には「伝統的に社会に認知されている性別、性的役割に収まらない人たちのこと」と解説されています。優しい語り口で質問に答えるジャイヤ選手は男性の体を持って生まれてきた女性の心を持つ人物です。
 

■他者を尊重(リスペクト)するポリネシア文化

「ジャイヤ選手が男子としてサッカーをプレーする上で困ったことはありますか?」という質問に対して、ジャイヤ選手ははっきりと「NO」と言い切ります。
 
「これまでサッカーをプレーしてきて特に大きな問題はありませんでした。アメリカ領サモアが属するオセアニアのサッカー連盟はポリネシア文化を受け入れているのですが、ポリネシア文化では“ファファフィネ”と呼ばれる“第三の性”が地域社会の一部として尊重されています」
 
ポリネシアの国々では“ファファフィネ”というジェンダーがずいぶん以前から尊重されていて、それはスポーツの世界でも同じ。ジャイヤ選手が知るかぎりバレーボール男子代表に3人、テニスの代表選手にも1人ファファフィネの選手がいるそうです。
 
「他国との試合で名前を呼ばれたり、ターゲットにされていると感じたことはあるけれど、それも試合の一部。試合に集中しているからきになりません。それにそういう状況のほうがやる気が出るの。いい影響のほうが大きいわ」
 
「女か男か? その前にサッカー選手よ!」という言葉はジャイヤ選手の過去の有名なコメントですが、ジャイヤ選手にとってサッカーという競技は、自分が自分らしくいられる特別な競技なのだといいます。
 
「私がサッカーを選んだというよりサッカーが私を選んだ。そんな運命的なものを感じています。地元の小学校にはサッカー以外にプレーできる競技がなかったんです」
 
アメリカ領サモアではアメリカンフットボールが人気スポーツ。高校の時にはキック力や足の速さを見込まれアメフト、高身長だったためバレーボールをプレーしたこともあるというジャイヤ選手ですが、サッカーに惹かれ、サッカーを続けてきました。
 
「子どもの頃からサッカーでは男女の区別なくプレーしてきた」
 
そう話すジャイヤ選手に、子どもたちにとっては「人と違う」ことがときに仲間はずれの理由になったりするのでは? と聞くとジャイヤ選手は首を横に振ります。
 
「子どもの頃も問題はありませんでした。サモアの女の子はとてもタフなので、いつも同じレベルでプレーしていました。サッカーの中で差別はまったくありませんでしたよ」
 
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取材・文 大塚一樹

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