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サッカー豆知識

誰だってファンタジスタになる資質は持っている!?元イタリア代表ロベルト・バッジョの名言

2013年3月 7日

キーワード:イタリア欧州サッカー

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 ボールを受けた瞬間に始まる選択の時間。次はシュート? パス? ドリブル? シュートならどんな弾道のシュート? フェイントはどうかな? パスなら誰にどれくらい強さで出せばいい? ドリブルのコースは?
 サッカーは90分間絶え間なく瞬時の判断を求められ続ける“選択のスポーツ”といわれています。
 
 優れた技術を持ったものだけが選べる究極のプレー。特別な才能を持った選手だけが思い描ける選択。そんなプレーができる選手を“ファンタジスタ”と呼びます。
 サッカーの名言からサッカーの本質を知るこのコラム。今回は“最後のファンタジスタ”ロベルト・バッジョにスポットを当ててみましょう。
 
 
「自分が思いついたプレーの中で、いつも一番難しいプレーを選択している」
    ロベルト・バッジョ(イタリア)
 
 

■“最後のファンタジスタ”ロベルト・バッジョ

 彼がボールを持った瞬間にスタジアムの雰囲気ががらりと変わります。「次は何を見せてくれるんだろう?」「どんなプレーが飛び出すのか?」相手チームのサポーターまでもが固唾を呑んで彼の一挙手一投足を見守ります。
 90年代に活躍したロベルト・バッジョは、たったワンプレーですべてを決めてしまう才能を持った希有な選手でした。そのバッジョが現役時代にプレーの秘訣を聞かれて答えたのがこの言葉です。
 当時のイタリアリーグ、セリエAは「世界最高峰リーグ」と呼ばれ、世界各国からきらめく才能の持ち主が集まっていました。日本のキング、カズ選手が目指したのもこのセリエA。長友選手がインテルで活躍するずっと前に中田英寿選手が輝きを放ったリーグとしても有名ですね。
 ジャンフランコ・ゾラ(現ワトフォード監督)にロベルト・マンチーニ(現マンチェスター・シティ監督)、同時代を生きた創造性豊かなフオリクラッセ(規格外の選手)たちと比べても抜きんでた才能を持っていたバッジョ。イタリアは伝統的にハードな守備で知られますが、バッジョの現役時代は、さらに中盤のスペースを狭める“ゾーン・プレス”が流行、コンパクトでスピーディーな現代サッカーの潮流が始まった頃でした。
 ゾーンプレスの提唱者、ACミランを率いたアリゴ・サッキ監督は「不確定要素を最小限に抑えるのがサッカー」と言い「不確定要素」の代表格“ファンタジスタ”たちは厳しいマークにさらされることになります。
 
 バッジョ以降、ファンタジスタたちはトッティ(ローマ)やデル・ピエロ(シドニー)のように、より前線のポジションに活路を見出したり、ピルロ(ユヴェントス)のように、レジスタと呼ばれる中盤後方に主戦場を移していきます。バッジョが“最後のファンタジスタ”と呼ばれるのは、サッカーの大転換期に圧倒的なプレーを見せつけたからに他なりません。
 バッジョがシーズン晩年を過ごしたブレッシアの監督で、良き理解者だったカルロ・マッツオーネは、バッジョに必要なアドバイスは、たった一言だけだったと言っています。
「90分間で一度だけでいい。君らしいプレーをしてくれ」
 マッツオーネは続けます。「それが私たちに最大の歓喜をもたらすことを私は知っているから」
 
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■シンプル=簡単? プレー選択にまつわる名言

「プレーの選択」に関してはバッジョだけでなく、かつての名選手も多くの名言を残しています。
 なかでも誰もが認める天才・マラドーナは一見するとバッジョと正反対のことを言っています。
「サッカーはシンプルだから美しい。複雑にしようとする人がいるがそれは間違いだ」
 しかし、これは、サッカーの複雑なシステム化、守備の組織化に対して苦言を呈した発言で、マラドーナは決して「簡単なプレーをしろ」と言っているわけではありません。シンプル=簡単ではありません。実際にマラドーナのプレーが簡単に見えたことはありませんし、バッジョのプレーはある意味ですごくシンプルなのです。W杯、EURO、チャンピオンズリーグにトヨタカップ、バロンドールなどあらゆるタイトルを取り尽くしたジネディーヌ・ジダンも「サッカーが簡単だったことは一度もない」という言葉を残しています。
 
 組織化が進み、動けない天才よりも、動ける才能を持った選手が評価され「ファンタジーを失ってしまった」と嘆かれることの多い現代のサッカー。それでも人々の心をつかみ、ワクワクを与えてくれるのは、ボールを持った瞬間に“何か”を期待させてくれる選手たち。空飛ぶオランダ人、ヨハン・クライフは「ボールを持てば主役は私だ。決定するのも創造するのも私だ」と言いました。ミランの黄金期を築いたオランダトリオの一人、フランク・ライカールトはサッカーを「真剣な遊び」だと言っています。
 どんなにサッカーが変わっても、自ら考えて、選択して、プレーするサッカーの楽しさは変わりません。
 
 自分で考えてプレーするには、自分で判断できる材料を増やすために練習をする必要があります。多くの選択肢を持つために技術を磨いておくことが大切です。才能は生まれついてのものと思っている人もいるかもしれません。“最後のファンタジスタ”ロベルト・バッジョはこんな説に真っ向から反論し、困ったような顔でこう言いました。
「誰だってファンタジスタになる資質は持っているんだ」
 
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(ダノンネーションズカップ2012より)

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