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ヘディングを必要以上に恐れる必要なし!脳しんとうの正しい知識を知ろう

2016年4月 4日

キーワード:けがヘディング指導者脳しんとう

昨年11月、アメリカサッカー協会は、10歳以降の子どもはヘディング禁止、11~13歳の子どもにも練習中のヘディング回数に制限を設けることを発表しました。
 
この「ヘディング禁止令」を受けて、日本でもヘディングによる脳しんとうのリスクについてさまざまな反応が見られたことは、前回記事『ヘディングって本当に危険なの!?アメリカの"10歳以下はヘディング禁止!"について専門家に聞いた』にてお伝えした通りです。
 
「サッカーよりもほかのスポーツをさせたほうがいいの?」
「うちのチームではヘディング練習があるけど、大丈夫なの?」
 
ヘディングに脳しんとうのリスクがあるという話を聞けば、サッカー少年の親ならだれもが心配になるものです。
 
しかし、もしあなたがヘディングや脳しんとうについてしっかりとした知識を持っておけば、ひとつの情報に右往左往する必要はないのかもしれません。前回に引き続き、ヘディングを繰り返すことが本当に危険なのかどうか、新潟医療福祉大学の健康スポーツ学科にて講師を務める熊崎昌さんに話をうかがいました。前回記事と合わせてご一読ください。(取材・文 大塚一樹)
 
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[前回記事]
<<ヘディングって本当に危険なの!? アメリカの"10歳以下はヘディング禁止!"について専門家に聞いた
 

■ヘディングを繰り返すと危険?

――ヘディングだけが脳しんとうのリスクかなどの問題はあるにしても、小さな子どもが日常的にヘディングを行う危険性はお母さんならずとも心配するところです。
 
ヘディングを繰り返すことで認知機能に問題があったという論文も拝見しましたが、サンプルが少なすぎるのと、サッカーをプレーしていない人との比較データもありませんでした。サンプルのあるプレイヤー(若く健康なアマチュアプレイヤー)は、10ヵ月間に5400回のヘディングを行ったと記録されていますが、どんなプレーでもやりすぎは身体によくありません。小学生が10ヵ月に5400回もヘディングをしているとすれば、いますぐやめるべきですが……。
 
――成長段階の子どもだから心配というのは素人考えでも納得してしまうのですが。
 
子どもの方がしんとうが起きやすいというのは一般的には言われていることです。身体の成長段階でバランス的に頭が先に大きくなり、頭を打ちやすいなど様々な理由が考えられます。サッカーに限って言えば、過剰に心配する必要はないと思いますが、少年用のボールではなく、大人用のボールでヘディングを繰り返すのは首への負担を含めてリスクが高いと言えるかもしれません。
 
――ヘディングによる脳へのダメージというのはどうなんでしょう? ヘディングを繰り返すことで、わかりやすく言うと、ボクサーのパンチドランカーのような症状になる危険性はあるのでしょうか?
 
ボクサーのパンチとヘディングで明らかに違うのは、衝撃の大きさですよね。しんとうを起こすほどの衝撃があるとすれば、ヘディングを繰り返すことと、パンチを受け続けることは、一直線上にあるものだとは思います。パンチドランカーになる可能性もゼロではありませんが、いまの研究では脳しんとうとパンチドランカーに明確な関連性は証明されていないのです。
 

■ヘディングを必要以上に恐れる必要なし でも、脳しんとうを正しく恐れることは必要

スポーツをプレーすることによる脳しんとうをはじめとする脳へのダメージを研究している熊崎さんの話を聞くと、ヘディングだけを切り取って危険を煽るのは受け止め方として一方的なようです。しかし、サッカーで脳しんとうが過小評価されていることも事実だと熊崎さんは言います。
 
――ここからはヘディングでよく起きる脳しんとうについてお聞きします。ラグビーやアメフトでは、脳しんとうの対策が進んでいるといいますが、サッカー、特に少年サッカーでは、脳しんとうが起きることをあまり想定していないように思います。
 
そういう意味では、アメリカサッカー協会の発表した内容の後半部分『監督や審判、保護者、選手に脳しんとうの危険性を知ってもらうための啓発キャンペーンや、試合に戻る場合の手順が示された』というのは意義深いと思います。ラグビーやアメフトは、脳しんとうが起きる前提でルール整備が進んでいます。空中にいる相手にアプローチしてはいけない、首から上にタックルしてはいけないなど、相手にけがをさせないようにプレーするためのルールがプレーヤーを守る機能を果たしています。脳しんとうの診断、脳しんとうからの復帰プログラムも、グラスルーツまでに浸透してきています。
 
――タックルのないサッカーでも脳しんとうは起きている?
 
脳しんとうが起きると思っていないから報告されない、認識されない“かくれ脳しんとう”の数はラグビーやアメフトに比べて多いでしょうね。指導者の方にはぜひ、脳しんとうの診断や簡易テスト、復帰プロセスを学んで欲しいと思います。ヘディングや身体の衝突などで明らかに脳を損傷した場合は、脳挫傷になります。脳挫傷はその症状や後遺症についてかなり細かく解明されています。しかし、脳しんとうは、CTスキャンなどの現在の画像診断では、脳に異常が見られず問診やテストによる診断しかできません。
 
――アメリカなどでは、採用が進んでいるようですが、サッカー用のヘッドギアなどもあります。ああいう保護具の効果はどの程度あるのでしょう?
 
裂傷を防ぐ効果はあると思いますが、ヘッドギアをつけていることで脳しんとうが減ることは少ないと思います。脳しんとうは衝撃によって脳が揺さぶられることで起きますから、アメフトのヘルメットのような硬い素材のものをかぶっていても、衝撃の加わり方によっては意味がないのです。
 
 
熊崎さんは「ヘディングを禁止する」ことや「サッカーは危険なスポーツ」として子どもがプレーすることを制限することについては、専門家の視点から「脳へのダメージ軽減の効果も疑わしい」と言います。
 
「言ってしまえば、リスクゼロのスポーツはありません。どんなに安全に見えるスポーツでも度を過ぎた強度や回数で行えば、けがをします。大切なのは、リスクをきちんと把握して、対処すること。正しく恐れることが必要だと思います。サッカーのプレーの中でヘディング“だけ”が危ないかというとそうではないし、脳へのダメージとの関連性も科学的に証明されたわけではありません」
 
冒頭で熊崎さんが指摘したように、ヘディングを悪者にしてヘディングという技術を正しく身につける機会を奪ってしまえば、側頭部や頭頂部でボールを受けたり、空中でうまく競り合えず地面に頭を打ち付けるなどの、別のリスクも生じる可能性もあります。
 
ヘディング問題は、「ヘディングが危ないからサッカーが危ない」という短絡的な視点で捉えるのではなく、安全にプレーするため、脳しんとうやその他のけがに対処するためのきっかけとして捉えた方がいいようです。
 
 
※脳しんとうのリスクと診断法、対処法と復帰プロセスについて熊崎さんが解説したレポートも併せてご覧ください。
 
 
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熊崎 昌(くまざき あきら) 新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科講師。専門はアスレティックトレーニング。早稲田大学スポーツ科学部スポーツ医科学科を卒業後、同大学院スポーツ科学研究科にて博士課程を修了。ラグビー、アメリカンフットボール、サッカーなどでのアスレティックトレーナー経験をふまえ、スポーツ現場における脳しんとうの研究や啓蒙活動に従事。博士(スポーツ科学)、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、JATI-ATI

 
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取材・文 大塚一樹

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