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これからの世の中に必要な能力はすべて、遊びとサッカーが育ててくれる

2017年2月 6日

「よのなか科」を推進する藤原和博さんが考える「正解ではなく"納得解"を導く能力」をサッカーで育もう

キーワード:情報編集考える力能力遊び

劇的に世の中が変化している現代、お父さんお母さんたちが当たり前だと思っている"常識"が通用しなくなってきています。2020年、東京オリンピックが開催される年にはセンター試験に変わる新たなテストが導入されるなど、大幅な教育改革も予定されています。
 
そんな時代を生き抜くために、子どもたちに何が必要なのか?
 
少し大きなテーマですが、サッカーを通じて自分で考える力を身につけること、子どもたちの可能性を広げることを掲げるサカイクでは、こんなこともみなさんと一緒に考えてみたいのです。
 
そんなぼんやりとした、でもとても大切なテーマの連載で今回お話をいただくのは2003年から5年間、都内初の義務教育の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務め、現在は奈良市立一条高校の校長をされている藤原和博さん。一条高校は今冬の高校サッカー選手権出場を果たしたサッカーの強豪校でもあります。
 
藤原さんは、「正解が必ずしもひとつではない世の中の問題」を子どもたちと一緒に考える『よのなか科』を実践している教育者でもあります。
 
「正解主義、前例主義、事なかれ主義」で進んできた日本の教育に風穴を開ける活動を行う藤原さんに、サッカーのこと、サッカーを通じて何をどう学べばいいのか? そして、親は子どもたちにどんなサポートができるのか? を聞きます。(取材・文 大塚一樹)
 
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■新鮮だったサッカーとの出会い

「小学校5年生の時に釜本が現れた。それまでは他の子どもたちと一緒で野球しか知らなかった僕が、サッカーに出会って『なんかこれかっこいい』と思ったんですね」
 
それまでは「巨人軍の王・長嶋で育った」という藤原さんは、小学校5年生のとき日本の伝説的なFW、釜本邦茂選手の活躍を通じてサッカーに出会ったそうです。スポーツと言えば野球しか知らなかった藤原少年は、ピッチ狭しとボールが行き交うサッカーの自由な雰囲気に魅了されたと言います。
 
「そこからは自分でサッカーチームを作って、小学校卒業までボールを蹴る毎日でしたね」
 
中学校では当然サッカー部にと思っていた藤原さんでしたが、思いもよらぬ理由でサッカーを断念することになります。
 
「なんと中学にサッカー部がなかったんです。ないならどうするかなと考えて、何を思ったか剣道部に入ってしまう。これが失敗だったんだよなぁ」
 
クラブチームや地域の少年団などの選択肢がある現在と違い、部活がなければ別の競技をするのが当たり前だった時代、藤原さんは剣道部に所属することになり、すぐに大きな間違いに気がついたと言います。
 
「剣道が悪いとかそういうことじゃないんですけど、僕には球技が合ってるんですね。剣道部に入ってすぐに『これは間違えたな』『球技が好きなんだな』と気がつきました」
 
その後2年生の秋まで剣道を続け、高校ではこれまたサッカーではなくバスケットボール部に。教育者に転身後も自分で身体を動かすことは定期的にやっているという藤原さんは、社会人になってから「ダブルスだと結構な年齢まで楽しめるから」とテニスを始め、いまでも仲間とテニスを楽しんでいると言います。
 

■「校長がミスってる」一緒に汗を流す意味

「和田中学にいた頃は、テニス、サッカー、バスケットボールは部活に顔を出して、子どもたちに遊んでもらっていたんです。顧問の先生は別にいて、私は専門的な指導なんてできないけど、人数が足りないときにミニゲームに参加していました」
 
放課後、テニス部に顔を出し生徒たちとラリーをし、グラウンドに出てサッカーボールを蹴り、体育館を覗いてバスケットボールの5対5に加わる。校長という立場で子どもたちとスポーツをすることには、自身の健康以外のメリットもあったようです。
 
「まず汗を流すのが清々しい、スポーツは楽しいですよね。それと校長が生徒と一緒になって、たまに空振りしたり、コケたりしているのって、なんか良いみたいなんですよ。生徒に『校長がミスってる』って笑ってもらうのが、とても良い交流になっていたんです」
 
現在、校長を務める一条高校では、「一条高校のサッカー部はレベルが高いから練習に加わるのは無理。ケガしちゃうよ」と笑う藤原さんですが、こうした行動には、「子どもたちと世の中の接点」を創出する目的があるのです。
 

■考え抜いて"納得解"を導くよのなか科の授業

藤原さんが民間人として初めて校長を務めた杉並区立和田中学校では、「正解が必ずしもひとつではない世の中の問題」を子どもたちと一緒に考える『よのなか科』という取り組みが話題になりました。そこではさまざまなゲストがやってきて黒か白か、○か×かではない、世の中の仕組みやそうである理由についてのヒントが得られるコミュニケーション型の授業が行われるのです。
 
「教科書に書いてあることだけを勉強していたら、自分と世の中の関わり方や関係性がわからなくなるんです。学校では正解主義で世の中の仕組みを教わるのに、社会に出ると世の中はどうやらそういうことで回っていない。それなら世の中を知る活動を実践しよう、というのが『よのなか科』なんです」
 
よのなか科では、子どもたちが主体になり、身の回りのさまざまな問題、絶対的な正解を出すのが難しい問題に挑戦していきます。
 
授業の一例を紹介しましょう。
 
近所に新規のハンバーガー店を出店することになりました。あなたはその店の店長です。地図やさまざまな情報を元に「どこに出したら儲かる店になるか?」を考えてください。
 
「正解はひとつじゃないんです。どこに出店したら儲かるかをリサーチするために、いろいろな情報が必要になりますよね。体験や経験、知識をフル活用して、なぜそこに店を出すのか? という根拠をはっきりさせていく。先生がいて生徒が正解を教わるのではなく、一緒に考えて、ブレストして、自分の意見を出し合って、ディベートして、プレゼンする。よのなか科の授業は、コミュニケーション型の授業なんです」
 
生徒たちは新規出店をするハンバーガー屋の店長という役割を演じることで経済の仕組みや経営の本質に触れることになります。藤原さんは、よのなか科では「ゲーム感覚で誰かの立場で物事を考えるロールプレイングと、その立場ならどうするだろうというシミュレーションを多用する」と言います。
 
「こういう取り組みに必要なのはすでにご説明した"情報処理型ではない情報編集型"の能力なんですね。先生が正解を知っていて、みんなでそれを見つけ出しましょう。早く見つけた人が勝ちね、ということではないんです」
 
自分で考えた結果、いろいろな人を納得させられる答え=「納得解」を導くというのが、よのなか科で行われている学びです。
 
次ページ:身近な問題から社会とつながる

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取材・文 大塚一樹

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