バルセロナ発!賢い選手を育てる指導法

2012年8月22日

「スペースの認知」を学ぶトレーニング【グローバル・メソッドの指導実践②】

 
 
「ヨーロッパチャンピオンズリーグで活躍する選手」の育成をテーマに、FCバルセロナの練習内容、分析、改善、コーチの育成なども手がけ、シャビやプジョルなど多くの選手からの信頼もあついサッカーサービス社。彼らが実践する「グローバル・メソッド」のトレーニングメニューを4つのテーマに沿って紹介しています。
 
グローバル・メソッドとは>>
 
前回の『パスのレベルアップ』に続き、2回目となる今回は『スペースの認知』を学ぶトレーニングについてお届けします。
 
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■テーマ2 『スペースの認知』

練習メニュー 3vs3+3フリーマン
 
 
【進め方】
  1. 1つのグリッドにマーカーを置き、4つにわけます。
  2. 4つのゾーンのうち、3つのゾーンに選手が2人ずつ入ります。
  3. フリーマンは外側に2人、中央に1人。外側のフリーマンはライン上を動くことができます。中央のフリーマンはなるべく真ん中から動かないようにポジションをとります。
  4. ボールを持った選手はパスをしたあと、誰もいないゾーンに走ります。2人の選手(味方同士)が同じゾーンにいることのないよう、意識して動きます。
 
 
【トレーニングのポイント】
●空いているスペースを認知する
これは「空いているスペースがどこにあるか」を認知するための基本的なトレーニングです。パスを出した後に、人がいないゾーンに動かなくてはいけないので、空いているスペースをみつけるため、周囲を見るようになります。ボールを持っていない選手は、パスを受ける前にどこにスペースがあるかを見ないといけません。それをすることで、ボールを受けてパスをしたあと、すぐにスペースへと動き出すことができます。トレーニングのルールに慣れてくると、パスを出した選手が、空いたスペースに次々に走りこむ連動性が生まれます。
 
●周りを見ることを習慣化
選手がいつ首を振って周囲を見ているのか、注目するといいでしょう。多くの選手はボールばかりを見ていますが、このトレーニングをすることで、周りを見ることが習慣化されるようになります。
 
 
【コーチングの例】
「相手からプレスがかかっていない場合は、落ち着いて周りを見て」
「ボールから遠いところにいるフリーマンも、パスコースを作るように動こう」
「空いているスペースを見るのはいつ?」
「ボールを持っているときに、空いているスペースをみつけるのは簡単?」
「パスをした後になにをしなければいけない?」
 
 
【サッカーサービスからのアドバイス】
●質問を通じて選手に考えさせる
トレーニングをする際、選手自身に考えさせることを心がけましょう。我々は決して、選手がロボットのように、オートマチックに動くことを期待しているわけではありません。選手が考え、自ら答えを見つけることを期待しています。時間がかかったとしても、選手自らが答えにたどり着くことを求めています。
 
トレーニング中、逆サイドのフリーマンに、「なぜそのポジションがいいの?」と質問をしました。その選手は「他の選手と重なっていないから、パスコースができる」と言いました。すばらしい答えです。そこで、次の質問をしました。「別の相手がそのコースに入ったらどうする?」選手は考えて、3歩、横に動きました。すると、相手と重ならずにパスコースができました。選手は自ら考え、決断したのです。考えるための質問をする。それが大切なことです。指導者が「3m横に動け」と指示をするのは簡単ですが、我々の仕事は答えを与えることではありません。選手自身が考えるように仕向けることです。
 
また、同じゾーンに2人の選手が入ってしまったとき。私は「どっちの選手が、別のゾーンに動かないといけない?」と質問をしました。1人の選手が「後ろにいる選手」と答えました。「なぜ?」「手前の選手は見えないけど、後ろの選手は前の選手の動きが見えるから」「そのとおり、すばらしい。後ろの選手が前の選手の動きを見ながら、動かないといけないね」とアドバイスをしました。
 
次に、パスをして、スペースに動こうとした選手が、仲間の1人が前のゾーンにいることがわかったので、判断を変えて、右斜め前のゾーンに入りました。これは、とても良いプレーです。ボールだけを見ていたら、そのまま動いていたことでしょう。しかし、彼は周囲の選手の位置取りを見ていたので、違うポジションに入ることにしたのです。考えながらプレーしていたことが、プレーから見てとることができました。これは、とても良いプレーでした。
 
次回は、「サポートの意識を高める」トレーニングについて紹介します。
 
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ジョアン・ビラ・ボスチ//
Joan Vila Bosch
FCバルセロナでクライフと共にプレーし、引退後はバルサの下部組織で14年間監督を務めた。現在はバルサのメソッド部門ディレクターとして、下部組織におけるトレーニングの進化・改善、コーチの指導を担う。監督時代はシャビ、プジョルなど現在のバルサの中心選手を育てた。
 
 
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