スポーツ先進国の親たちが学ぶ!スポーツペアレンティング講座とは

2016年11月23日

コントロールできるのは自分だけ。あなたの子どもが身につけるべき"ELMツリー"とは

米国には“スポーツペアレンティング”という言葉があります。これはスポーツをする子どもを持つ親を対象に、親として子どものスポーツにどのように関わるかを考えるものです。
 
筆者は米国の『ポジティブ・コーチング・アライアンス』という団体が提供している親向けのオンラインコースを受講しました。
 
第1回目のレポートでは、「子どもがどのようなことを身に着けることが、親としてのあなたのゴールですか」についてお伝えしました。
 
2回目となる今回は、スポーツを通じて子どもが成長していくために、親はどこに焦点を当てるべきかということがテーマです。(取材・文 谷口輝世子)
 
 
<<なぜ、あなたは子どもにスポーツをしてほしいの? 親が本気で考えるための10項目
 

■子どもたちに身につけてほしい“ELMツリー”とは

『ポジティブ・コーチング・アライアンス』では、“ELMツリー”というものを推奨しています。ELMツリーとは、子どもたちにスポーツを通じて身に着けて欲しい3つの事柄の頭文字をとって作った言葉です。3つの事柄は次のようなものです。
 
Eは、Effort(努力)
Lは、Learning and improvement( 学びと向上)
Mは、Mistake, how we respond to mistake and the fear of them(ミスと、私たちはどのようにミスに反応し、ミスを恐れてしまうのか)
 
ELMをよりわかりやすく表すと次のようになります。
 
1.常に自分自身の最善を尽くすこと。
2.起こったことから学ぶ、学ぶ意欲を持つ。
3.ミスによって何かを止めてしまわない。
 
私が受講したオンライン講座では、ELMツリーはスポーツ選手としても、子どもたちが成長していくうえでも役に立つとしています。
 
子どもたちがなにかを習得することに焦点を当てるELMと反対の概念として、スコアボードに焦点を当てることが挙げられています。スコアボードを重要視するというのは、結果の重視、他者との比較」、失敗への不寛容と言い換えることができます。
 
プロ選手やオリンピックやパラリンピックの代表でも、スコアボードより“ELMツリー”を取り入れるほうが、最終的には結果につながるともいわれています。
 
この講座のブックレットには、2000年夏季五輪で英国バーミングハム大のスポーツ心理学者がオリンピック選手を対象にした調査が紹介されています。選手自身が「習得」(ELMに相当)できることを重点に置いたコーチングと、「結果を重視」(スコアボードに相当)したコーチとでは、「習得」に重点を置いたコーチングを受けた選手のほうがオリンピックで明らかに良い成績だったことが分かりました。
 

■お子さんがコントロールできる3つのこと

筆者もプロスポーツの取材で、選手たちが「コントロールできるのは自分だけ。相手はコントロールできない」と話しているのをよく聞きます。
 
対戦相手を自分の思うままに動かすことはできません。しかし、自分は、自分の考えたようにプレーできるよう努力することはできます。
 
ELMでも同じことです。
 
選手たちは対戦相手や試合結果をコントロールできません。しかし以下の3つは、自分自身が意識して、達成に向けて努力することができます。
 
1.自分自身が最善を尽くすこと
2.試合を通じて何かを学ぶこと
3.ミスをしたときにどのようにして立ち直るか
 
オンライン講座によると、最善を尽くすこと、習得すること、失敗からうまく立ち直ることが自覚できるようになると、不安に思うことが減り、自分で自分をコントロールできていると感じるようになるそうです。それが自信につながり、その自信によって、練習熱心にもなり、そのスポーツを長く続けていくことにつながるという調査結果があるようです。
 
ただし、私自身の親としての経験から、小学校3、4年生までは、子どもは、自分はベストを尽くしているのかよく分からないこともあるのではないかと思います。
 
試合の前に「自分にできるだけのプレーができるよう努力しよう」と言い聞かせても、大人から見るとぼんやりとしているように見えることがあります。大縄跳びに入っていけないのと同じように、他の選手たちのプレーに絡んでいけないこともあるのではないでしょうか。また、相手と接触する怖さ、強いボールに対する怖さなどから、子ども自身が無意識のうちに自分の動きにブレーキをかけているような姿も見受けます。一生懸命にやるということを意識するあまり、ゲーム状況を判断することや、味方にパスを出すことを忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。
 
 
次ページ:低学年のうちは具体的な目標を考えよう
 

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