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  4. 成果を出すことよりも大事なこと。子どもの心に火をつける大人の接し方とは

年中夢求 「夢を叶える力」「よりよく生きる力」の育て方

成果を出すことよりも大事なこと。子どもの心に火をつける大人の接し方とは

公開:2019年8月 5日

キーワード:1日100分24時間をデザインやる気凡事徹底大津高校川崎フロンターレ巻誠一郎平岡和徳年中夢求植田直通、谷口彰悟車屋紳太郎部活動鹿島アントラーズ

誰にとっても1日は24時間。時間は有限で、使い方は無限だから、24時間をデザインして勉強も日常生活もサッカーのために還元する。練習時間は1日100分。当たり前のことを人並み以上に徹底してやり抜く「凡事徹底」を理念に掲げる大津高校。

九州の小さな公立高校のサッカー部を全国の常連に育て上げ、これまで巻誠一郎、植田直通、谷口彰悟、車屋紳太郎など約50名のJリーガーを輩出した名指導者・平岡和徳さん(大津高校サッカー部総監督/宇城市教育長)の新著「年中夢求」は、家庭教育、学校教育、地域教育を通して子どもたちの「夢を叶える力」「よりよく生きる力」の育て方についてつづった1冊です。

今回はその中から子どもたちの夢中を育てる、これからの学校教育について内容を少しだけお送りします。第四回目は、やらされるよりも主体的にやる、努力する、夢中になって頑張ることの大切さ、チャレンジし続けることの意義、子どものやる気に火がつくような大人の接し方についてお送りします。

<<第三回:子どもたちに必要なのは「行動力」ではなく「考動力」

 

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日本代表を含む多くのJリーガーを生んだ平岡氏の功績を称えた表彰状

 

■「本気のオーラ」が、「心に火をつける」

――思春期には、教師や親に対して反抗的な態度を取る子、大人を馬鹿にするような子もいます。

平岡 自分の子どもだったら、自分の兄弟だったら、ということを考えて距離感を詰めないといけないと思うんです。子ども達には、先生たちの本気のオーラが見えますから、それが見えなければ心は動かないし、やる気スイッチはONにならないんです。素晴らしい指導者は生徒の心に火をつけます。心の変化を作り上げるには、本気のオーラを持っていないといけないんですね。心まで届かず、心が動くという現象がないから、肉体で反応して暴力的、反抗的になっているんです。

生まれてすぐから悪い子は誰もいませんよね。積み上げてきたものが、その形になって表れているんだと思います。そういう意味ではその子達は犠牲者なんですね。関わった大人が、ああいった現象を作っているだけだと思います。ということは、どこかで助けてあげなくてはいけない。

私も、親と同じレベルでその子を変えたいと思えば、やっぱり選手たちの前で涙することもあります。そうやって、教師の側の一生懸命さが伝わらない限り、その子も変わりません。要するに温度が上がらないわけです。

子どもたちを「鉄の塊」とした時、温度が上がらないまま形を変えようと思ったら、削るか叩くしかない。しかしそれは両方とも苦痛ですし、何も変わらないんですね。しかし鉄の温度を上げて柔らかくすれば、子ども達が自分から変化できる。それが、子どもの内側に、心に火をつける作業だと思います。

「この先生についていけば大丈夫」、「この人が言うことなら信頼できる」と感じさせられるかどうか。そういったものがないから、斜に構えたり、「大人なんか信用できるか」と、悪びれた態度をとるわけです。でも、成長に導いてくれると信頼できる大人が1人でも近くにいたら、「俺もこの人みたいになりたい」となる。お手本になる大人を見た時に、子どもは変わるんですよ。

尊敬できる本物の大人に会った時に、子ども達は本当に本気になるんですよね。そして、変化し、進化していくんです。本物を見せるというのも、そういうことなんです。

 

■一生懸命は、格好いい!

――例えば、一生懸命なところを見られるのが恥ずかしいとか、失敗した時に照れ笑いをするといったこともありませんか?

平岡 初任校の熊本商業高校にいた頃の話ですが、ある強豪校と練習試合をした時に、相手チームの選手が、うちの選手が空振りした姿を見て笑ったんです。すると当時のキャプテンが相手のベンチに走っていって、「何がおかしいんだ、一生懸命やっているやつを笑うな!」と言ったんですよ。それから時間が経って、チームとしても力をつけた後にもう一度練習試合をしたら、今度は接戦になるんです。勝てなかったけれど、いい試合をしました。そういう、集団を一つにする力を持った、周りを動かす働きかけができるリーダーや仲間が身近にいることも大事です。その点でも、スポーツをやる意味は小さくないと思うんですよね。

 

――確かに、一生懸命に何かに取り組んでいる姿を見ると、淡白な人の心にも火がつきますね。

平岡 小学校の運動会で挨拶をすることがありますが、「今日は、やる人、見る人、支える人、誰もがすべての立場になるので、どこで自分の心が動いたか、どこで感動したか、涙が出そうになったか、そういったことを今日は経験する場所だよ」という話をします。

一生懸命はかっこいいんだということ。それがなければ、この大会は成立しません」と。そして胸に手を当てさせてみて、「ドキドキしている人、いつもより心臓の音が早い人はいますか?」と聞くんです。「それは、心が成長する準備をし始めているんだね」と。そういう話をしてあげると、子ども達でもわかるんですね。

 

■よりよく生きるんだ

――とはいえ、必ず結果が出るとは限りません。その時に、努力が足りないからだとは言えない、つまり元々の能力や資質の問題だった場合はどうすればよいでしょうか?

平岡 たとえばトップアスリートの場合、100m競争は1位から8位まで全部、順位が出ますね。みんなが世界一になろうと、努力して練習しています。だけど何かが違う。自分を変えるエネルギーをここから発信するんだと、「好きなものに出会えたことによって、自分は成長できるんだ」ということで、続けていると思うんです。

勝つか負けるではなく、人生の中心にあるものに変わってきて、「この武器を活かして、よりよく生きるんだ」というふうになっていくんじゃないでしょうか。私にとってのサッカーもそうなんですよね。

結果が出て諦める若い子達は多いんですけど、それは「今できなかった」だけで、これからさらに努力をすれば、これからすごい大人に会えれば、変わる可能性はあるんです。自分を変えられるような素晴らしい出来事に、これからまだ出会える時間がある。

 

――だからこそチャレンジする姿勢が必要になってくると。

平岡 筋肉も鍛えなければ強くなりませんし、脳も鍛えなければ細胞が活性化されません。そのためには本人たちが無我夢中でチャレンジするのが大前提で、やらされるよりも主体的にやる、努力する、そしてそこで終わらず、夢中になって頑張るということです。多くの人はその手前で終わっていますし、努力するという、もうひと息のところで終わっている子もたくさんいるんじゃないでしょうか。だから成果になって出てこない。

成果を出すことよりも夢中になることの方が重要で、そこからしか次にはいけないと思います。「努力したけど、なんだよ、何にも変わらないじゃないか」、「俺はダメなんだ」と自分を責め始めたら、チャレンジもそこで止まってしまいます。そういう意味でも、人を責めない、自分を責めないことが大事なんです。

自分を責め始めたら、モチベーションや次のやる気は生まれてきません。「いやいや、これは今できなかっただけだ。俺は絶対この後、もっといい選手になるんだ」とか、「次こそこれが解けるようになってやるんだ」と考える方が、繰り返しチャレンジできるでしょう。

 

――結果的に達成できなくても、そこを目指してやり続けること自体に、尊さや価値があると。

平岡 大津高校サッカー部は2019年にJFA高円宮杯U-18サッカーリーグプレミアウエストに復帰しましたが、ミーティングでは「君たちみたいに、県立学校のチームが頑張ること、こういう場所に今いることが尊いんだ。結果云々じゃなく、ここからみんなのキャリアは変わってくる、この場所に大津高校がいるということが尊いことなんだ」という話をするんです。目配り、心配り、言葉配りといったものを大事なところでタイミングよく発信して、子ども達の心に火がつくようなコントロールをすることが重要で、家庭でも学校でも、地域でも、それをやらなくてはいけなんですよね。

 

<<第三回:子どもたちに必要なのは「行動力」ではなく「考動力」

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取材・文・写真:井芹貴志

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