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年中夢求 「夢を叶える力」「よりよく生きる力」の育て方

子どもの学習効果が上がる教育とは何か。 サッカーでも重要な子どもたちの「夢中」を育てるこれからの学校教育

公開:2019年7月12日 更新:2019年8月 5日

キーワード:1日100分24時間をデザイン凡事徹底大津高校川崎フロンターレ巻誠一郎平岡和徳年中夢求植田直通、谷口彰悟車屋紳太郎鹿島アントラーズ

誰にとっても1日は24時間。時間は有限で、使い方は無限だから、24時間をデザインして勉強も日常生活もサッカーのために還元する。練習時間は1日100分。当たり前のことを人並み以上に徹底してやり抜く「凡事徹底」を理念に掲げる大津高校。

九州の小さな公立高校のサッカー部を全国の常連に育て上げ、これまで巻誠一郎、植田直通、谷口彰悟、車屋紳太郎など約50名のJリーガーを輩出した名指導者・平岡和徳さん(大津高校サッカー部総監督/宇城市教育長)の新著「年中夢求」は、家庭教育、学校教育、地域教育を通して子どもたちの「夢を叶える力」「よりよく生きる力」の育て方についてつづった1冊です。

今回はその中から子どもたちの夢中を育てる、これからの学校教育について内容を少しだけお送りします。第一回目は、子ども達の学習効果が上がる教育、サッカーでも勉強でも伸びるために重要な「夢中にさせる3要素」などをご紹介します。

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練習時間は100分。 小さな町の公立校なのに50名ものJリーガーを輩出している理由は......

■「can not」を「can」にする

――平岡先生が考える「いい授業」とはどういうものでしょうか。

平岡 子ども達の学習効果が上がる授業だと思います。具体的には、「can not」(できないこと)を「can」(できる)にするということです。サッカーの指導も同じですが、そのためには教えすぎないこと、子ども達に「気づかせること」が大事です。

教室内での学習規律を整え、学びやすい環境を作り、できる子ができない子に教えてあげる、できない子はできるためにコツコツ努力を重ねる。そういう環境を整備することが大切で、その繰り返しを毎日やるしかないと思います。本人の得意なものを伸ばしてあげて、ウィークな部分は時間をかけて教え、克服させてあげる。

子どもたちが教えあうことも実はとても重要で、傲慢になったり攻撃性を持ったりすることなく、子ども同士で学ばせあう、その環境をどう作るかも、教員の仕事だと思います。子ども達が自然に教えあったり、わからないことを聞いたりできるグループの雰囲気や場を設定することは、サッカーの指導でも大事なことです。お互いが学び合えるような教室環境、学習規律を整えていくと、あのクラスはいいクラスだな、あの学校はいい学校だな、という評価にもつながっていきます。そういうところでは「安心」「安全」「安定」が確保されていて、子ども達が夢中になってチャレンジできる環境があるわけですからね。

 

――問題が解けたり、分からなかったことが分かって達成感を味わったり、自信をつけたり、そういう瞬間の子ども達の表情を見て、その時の喜びを知っていると、「できないことを、できるようにさせたい」と、親も思うことです。

平岡 子ども達には高揚感や達成感を味あわせてあげたいですよね。オーバーコーチングにならずにそこへ誘導するには、何でもかんでも喋りまくるのは決していいこととは言えません。先生が喋る時間をどう減らして、子ども達の発言や気づきをどれだけ増やしていくかが求められています。夢中になって取り組む時間を作ってあげることで、子ども達は変わっていきます。いい指導者、先生は、生徒を本気にさせるのがうまい。子どもたちを本気にさせる、夢中にさせるのが、本当のプロフェッショナルではないでしょうか。

 

■子どもを夢中にさせる三要素――「ビジョン」「ミッション」「パッション」

――プロフェッショナルな先生に必要なものは何でしょうか?

平岡 「ビジョン」「ミッション」「パッション」の3つです。まず、どこに連れていくか、何を作るかという構想(ビジョン)が必要で、そのために何をすべきかという使命感(ミッション)を持った上で、やり遂げるために、最後には情熱(パッション)がなくてはいけないと思うんですね。いつも子ども中心に考えていけば、その3つの要素はブレないでしょう。子ども達が夢中になって、進化につなげるために変化を繰り返そうと努力しているのなら、それに対して、その3つを使いながら、形を整えていく。それが、子ども達の未来に触れていくということだと思います。

くわえて、学校の授業で必要なのはテクニックだと思います。子ども達のモチベーションをコントロールするのは、教員としてのテクニックですね。いい先生の授業はあっという間に終わりませんか? 早く感じるということは、それだけ子ども達を夢中にさせて、モチベーションを高める仕掛けをたくさん作っている証拠です。一生懸命、夢中になって何かにチャレンジしているときは時間を忘れるでしょう。

 

■ストーリーを作る

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授業改革について語る平岡和徳さん。保護者のみなさんも退屈な授業は長いと感じた事があるのでは?

――そこには計算というか、ビジョンに基づいた計画があるということですよね。

平岡 大切なのは、ずばりストーリーですね。子ども達それぞれの個性を見ながら、一人ひとりの本気スイッチがどこにあるのかを観察し、その場所を知っている先生こそ、子ども達を成長に導くことができると思います。子ども達みんなが思う「先生に認められたい」という気持ちを受けて、「認めてあげる」。そのキャッチボールがスムーズにできる先生なら、子ども達は安心して相談できるでしょうし、何をやっても安定感があるでしょう。そして事故なく、安全に、その1時間の授業を過ごせる。

それはストーリーがあるからだと思います。例えば足し算の授業をした時に、「今日の授業、楽しかったなぁ、次の授業が楽しみだな」と感じさせるか、「今日の授業は、全然分かんなかったな、算数はちょっと苦手だな」と思わせるかは、教員の資質の違いなのです。

退屈な時間は長く感じるものです。先生がずっと喋っているだけ、子ども達は聞くだけで何もすることがなければ、退屈な授業になってしまいますよね。逆に、「はい、じゃあみんなもやってみよう!」というチャレンジの機会が増えれば増えるほど、子ども達は集中して夢中になり、授業はあっという間に終わるでしょう。そういうことも授業改革の1つだと思います。

 

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取材・文・写真:井芹貴志

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