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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019

『ワーチャレ』で悔しい敗戦を喫したヴァンフォーレ甲府U-12。『サッカー観』を高めて、さらなる成長へ

公開:2019年9月11日 更新:2019年9月30日

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ナイジェリア選抜の優勝で幕を閉じたU-12世代の国際大会「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2019」には、Jリーグの育成組織も参加しています。

初日はバイエルン・ミュンヘンに引き分け、決勝トーナメントで広州富力足球倶楽部(中国)に敗れたヴァンフォーレ甲府U-12

体格差に優れた相手との戦いで、感じるところがたくさんあったようです。アカデミーに力を入れ、育成に定評のある甲府の監督以下、選手たちはさらなる飛躍を目指します。チームを率いる西川監督のインタビューをお送りします。(取材・文 鈴木智之)

 

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グループリーグではバイエルンとスコアレスドロー(C)U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ大会事務局

 

■「その戦い方は嫌です」選手から反対されたことも......

今春開催の『ダノンネーションズカップ』日本大会で優勝した、ヴァンフォーレ甲府U-12。スペインのバルセロナで開催される世界大会への出場が決まり、過去には同大会で準優勝に輝くなど、国際舞台で活躍した実績を持っています。

そんなヴァンフォーレ甲府U-12が『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019』の、ラウンド16で対戦したのが、広州富力足球倶楽部(中国)。スピードとパワー、フィジカルに優れる相手に対し、0対3で完敗を喫しました。

西川陽介監督は「相手の速いプレッシャーをかいくぐれなかった。蹴られたボールに対してタフに戦っていたけど、自分たちも同じように跳ね返すしか術がなく、相手のサッカーに付き合ってしまった」と、悔しそうな表情を見せていました。

甲府の持ち味である、パスワークで相手の守備を崩そうとしましたが、サイズとフィジカルに優れた相手に潰され、なかなかシュートまで持ち込むことができず。守備では相手のスピードとフィジカル、思い切りの良いプレーの前に後手に回ってしまいました。

西川監督が「ペナルティエリア手前の崩しで怖がってしまい、リズムを握ることができませんでした。試合終盤になってボールを引き出そうとする選手、関わろうとする選手が出てきたのですが...」と振り返ったように、ゴールにたどり着く手前で相手にボールを奪われるケースが多く、チャンスを作り出すには至りませんでした。

過去(2016年)に参加したワールドチャレンジでは、準々決勝でFCバルセロナと対戦し、0対4で敗戦。西川監督は「3年前のバルサ戦は自分たちがやるべきことにトライして負けたのですが、今回は少し違いました。相手に合わせてしまい、弱気な姿勢が出てしまったのかなと思います」と振り返ります。

2016年のワールドチャレンジ。西川監督は選手たちに「バルセロナに勝つことは、ヴァンフォーレにとっても、日本サッカーにとっても大切なことだから」と話し、現実的に勝つプランとして「バルサ相手にプレッシャーを掛け続けるのは難しいから、ある程度引いて守り、カウンターで攻撃しよう」と提案したところ、選手たちからは「その戦い方は嫌です。真っ向から戦いたい」と反対されたそうです。

「それで、よしわかった。お前たちが積み上げてきたものを全部出そうと言って戦った結果、0対4の敗戦でした。今回はその時とは違って、相手に合わせてしまいました。ただ、相手の方が体が大きいからとか、フィジカルが強いというのは、絶対に言い訳にしたくはないんです」

 

■「ああしろ、こうしろと言い過ぎた」ことを反省

過去の大会ではFCバルセロナ、今回は広州富力という海外勢と対戦し、フィジカル面で劣勢に立たされる場面が多い中、「うちの選手たちがどこで勝負するかというと、サッカー観だと思うんですよ」と西川監督は言います。

「そのためには、もっと選手たちとの会話を増やさなければいけないと思いました。ただ、広州富力との試合に関しては、僕が選手たちに言い過ぎちゃったんですよね。選手たちはしっかりしたサッカー観を持っているのに、相手の圧力に焦りを感じたのか、ああしろ、こうしろと言いすぎてしまいました

劣勢の展開をベンチからの指示出しで挽回しようとしましたが、状況を変えるのは難しかったようです。傍目に見ても選手の体格の違いは明らかで、コンビネーションで打開しようとしても、鋭い寄せと球際のパワーで圧倒されていました。

今大会ではバイエルン・ミュンヘン、広州富力という海外勢と試合をし、貴重な体験を得たヴァンフォーレ甲府。過去にオランダで指導経験を積んだ西川監督は、ワールドチャレンジの意義をこう話します。

「僕がオランダにいたときは、少し車で走ればドイツやベルギーに行って、異なる国のチームと試合をすることができました。でも、島国の日本ではそうも行きません。その視点から考えると、日本にいながら、しかもU-12というカテゴリーで海外クラブと真剣勝負ができるのは、本当に良い経験だと思います。うちの選手の中には、この遠征で初めて電車に乗った子もいました。山梨から遠征するときは大体車ですから。自動改札の切符を取り忘れたりして(笑)。そういうのも良い経験ですよね」

アカデミーの強化に力を入れる、ヴァンフォーレ甲府。西川監督は「プロビンチャ(注・地方の小さなクラブ)が、ビッグクラブに立ち向かう姿を見せられたと思う」と話し、ワールドチャレンジには社長やGM、アカデミーアドバイザーが見に来たそうです。遠方のジュニアの大会に、クラブの上層部が視察に来るというエピソードは、クラブがいかに育成を重視しているのかを現しています。

「山梨県のジュニアのクラブは75。それに比べて、神奈川には700近くあります。競技人口が少ない中でも、良い選手を育成することができるんだと証明するのが、我々の仕事です。山梨からは中田英寿さんが出ていますし、良い選手が出てくる土壌はあるんです。山梨県を引っ張っていくのが、Jクラブの役割だと思っています」

さらに、大会を次のように総括してくれました。

 

■大事なのはスピードの速い展開の中でどれだけ精度の高いプレーができるか

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プレースピードが上がるなかで精度の高いプレーができることが大切だと西川監督は語りました(C)U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ大会事務局

 

「ワールドチャレンジで夏が終わり、これから次の学年に向けて、積み上げていくだけです。いまはサッカーのセオリーを学んでいる年代でもあるので、スピードがある中でどれだけプレーできるか。それが大切です。プロもアカデミーもスピードはどんどん上がってきています。その中でプレーできる精度を高めていかなければいけません。クラブはアカデミーを大事にしてくれるので、その想いに応えないと、という気持ちでいっぱいです」

ダノンネーションズカップやワールドチャレンジなど、世界大会での豊富な経験を活かし、真摯に育成に向き合う西川監督。ヴァンフォーレ甲府アカデミーの今後の成長が楽しみです。

 

【全試合結果・詳細】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019 公式ホームページ>>

 

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▼これまでの大会の記事はこちら

【2018年】3連覇狙うバルサが日本チームに大苦戦
【2017年】「ソルティーロ世界選抜」躍進の影に本田圭佑の哲学
【2016年】バルサ選手のふるまいに世界中が大絶賛
【2015年】バルサに勝った東京選抜が見つけた世界との差
【2014年】バルセロナに0-9で負けたチームが学んだこと
【2013年】久保建英選手が「バルサの選手」として出場

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取材・文:鈴木智之 写真:U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ大会事務局

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