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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019

サッカーとともに人間性を育てる。日本式指導で結果を残す、広州富力アカデミーの取り組み

公開:2019年9月 9日 更新:2019年9月30日

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ナイジェリア選抜の優勝で幕を閉じたU-12世代の国際大会「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2019」ですが、この大会ではアジアのチームの躍進も目立ちました。

中国スーパーリーグに所属する広州富力足球倶楽部アカデミーは、指導のメインを日本人スタッフが担っています。ジュニアサッカーワールドチャレンジでは決勝に進出し、惜しくもファイナルで敗れましたが、組織的かつクリーンなプレースタイルでインパクトを残しました。

成長著しい広州富力アカデミーは、日本式指導でどのような成果を上げているのでしょうか? チームを率いる日本人監督にお話を聞きました。

(取材・文:鈴木智之、写真:吉田孝光)

 

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広州富力足球倶楽部は決勝戦でもナイジェリア相手に接戦を演じました(C)吉田孝光

 

■中国人に高く評価される「日本人指導の考え方」

今年のU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジで準優勝に輝いた、広州富力足球倶楽部(中国)。準決勝でFCバルセロナを破ったトヨタ・タイランド(タイ代表U-12)に2対1で勝利すると、決勝戦でもタレント揃いのナイジェリア選抜と接戦を演じました。

チームを率いるのは足高裕司監督。ガンバ大阪のジュニアを率いてワールドチャレンジに参加した経験を持ち、今回は広州富力の監督として、大阪の地に戻ってきました。

広州富力アカデミーは日本人指導者が多く活躍し、東京ヴェルディや年代別日本代表、横浜F・マリノスのアカデミーで長く指導をした菊原志郎氏など、元Jリーガーが多数指導にあたっています。トップチームの監督は日本でもおなじみ、元名古屋グランパスのストイコビッチ。コーチは喜熨斗勝史氏が務めています。

足高監督は中国での指導について「中国人の特徴を受け入れて、そこに日本の良さをミックスさせる指導をしています」と説明します。

「私が中国に渡ったのが昨年で、文化や言葉、生活習慣も違いますが、日本人の良いところを出しながら、中国人の特徴を受け入れて指導をしています。日本の良さは規律や献身制、仲間との協調性、連帯感や自己犠牲の精神。それがピッチの中でハードワークできることにつながっていると思います」

広州富力のアカデミーはクラブとして、「指導の日本化」を進めており、日本人スタッフに求められるのは、サッカー以外の部分も成長させることです。

「中国の人たちは教育家庭ではなく、学校やクラブに委ねる傾向が強く、そういった意向をくみ取って我々は『普段の生活がサッカーにつながる』という考え方で指導しています。多くの日本の指導者が取り組んでいる、サッカーを通じて人間性も成長させるという考え方は、日本が世界に誇れる部分だと思います」

中国サッカー界は国を上げて強化していて、アカデミーにも莫大な投資が行われています。各クラブはスペインを始め、ヨーロッパから多くの指導者を呼び寄せ、選手の強化に励んでいます。しかしながら、サッカーだけを教える指導者も多く、「サッカーと人間教育」の両方にアプローチする日本人指導者の考え方は、高く評価されているそうです。

「広州富力のアカデミーに入ると、サッカーだけでなく人間的にも成長できるという噂が口コミやメディアを通じて広まり、『広州富力に入れたい』という保護者が増えてきました」

 

■身体能力の高さだけではない。戦術的にも理解し対応できている

クラブでは、教育的な部分を大事にしているそうです。「レフェリーに文句を言わないこと」を始め、クリーンなプレーをモットーにしていて、決勝戦ではチャンスの場面で相手チームの選手が負傷して倒れているのをみつけると、ベンチの足高監督は大きな声で「プレーを切れ!」とボールを外に出すように指示。勝負のかかった決勝戦にも関わらず、相手を思いやる振る舞いは、チームの哲学を感じさせる場面でした。

ピッチ内外で選手にアプローチし、成長に導く広州富力アカデミー。ピッチの中では組織的な守備をベースに、個の身体能力を打ち出し、ワールドチャレンジでは決勝戦まで勝ち上がりました。足高監督は日本人であれ、中国人であれ「サッカーというスポーツに変わりはありません」と言います。

「中国にはマンツーマンの守備をするチームが多い中で、我々はラインを作って、ゾーンの中で選手に役割を与えて......という形の守備に取り組んでいます」

ワールドチャレンジでは4バックと3バック、5バックを相手の特徴に応じて使い分け、個の身体能力の高さを活かし、強固な守備ブロックを作り上げました。

「選手たちが戦術を理解して対応してくれました。ここまでできるんだと驚きましたね。準々決勝は4バックでスタートして、準決勝は3‐4‐3から5‐4‐1のような形で相手にスペースを与えず、一人が抜かれても周りがカバーすることを意図的にやっていました。中国の子たちも、戦術的に対応できるんだというイメージが与えられたのなら、僕たちがやってきたことが評価されるのではないかと思います」

 

■一生忘れられない経験

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広州富力を率いる足高監督(C)吉田孝光

 

準決勝の試合後「(声を出しすぎて)疲れました」と笑顔を見せた足高監督。「ベンチからのコーチングが多いと見えたかもしれませんが、選手たちを励ましながら、鼓舞しながらプレーさせることは意識的にやりました」と、熱い声掛けで選手たちの背中を押し、決勝戦へたどり着きました。

「(ナイジェリアとの決勝は)選手たちは本当に頑張ってくれました。過去を振り返っても、ここまで頑張ってくれた試合はないと思います。選手たちには、一生忘れられない経験になったと思います」

ワールドチャレンジで得た経験を中国に持ち帰り、「今大会で、自分たちの力はまだまだだと痛感しました。決勝のナイジェリアや対戦したタイ日本のチームの技術は素晴らしく、ほとんど何もさせてもらえなかった。この経験を元に、さらに上のレベルを目指してチャレンジしたい」と話した足高監督。

ピッチ内外で日本式の質の高い取り組みを重ね、サッカー選手として、人として成長することを見据える広州富力アカデミー。異国の地でチャレンジする日本人指導者の情熱が花開く日は近そうです。

 

【全試合結果・詳細】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019 公式ホームページ>>

 

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取材・文:鈴木智之 写真:吉田孝光

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