あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2023年7月21日

ポジションの意識がない低学年の団子サッカーを解消したい、子どもたちに伝わる言い方を教えて

ポジションの意識がない低学年の団子サッカーを解消したい。みんなが点を取りたくてパスをしない子どもたちに、パスの意義や意味を伝えたいが説明を理解している気配がない。

この年代の子どもに伝わるような言い方はある? 今の伝え方でも成長と共に理解してくれるもの? とのご相談をいただきました。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレク
ターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、最近のご自身のク
ラブでのエピソードをもとに団子サッカー解消のアドバイスを送ります。

(取材・文 島沢優子)

池上正さんの指導を動画で見る>>

 


(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

<<事前に練習内容を共有しない、練習でしてないことを試合で求める年上コーチに対応を改善してもらう方法を教えて

 

<お父さんコーチからの質問>

初めまして。

池上さんの記事、大変勉強になります。

私が担当しているのは、まだ団子サッカーを続ける小学2年生のチームで、3年生になる前にポジション意識させ、3年生になったらポジションをハッキリさせていこうと考えています。

現状は、みんな自分が点数を取りたくてしょうがない様子で、パスをしません。これから先パスの意味、意義をどの様に教えたらその重要性を理解してもらえるのか悩んでいます。

現在は「シュートを打とう打とうとしてGKに向かって行ったって、そのままシュート打ったってそれはGKに当たってしまう。だから騙そう」と説明していますが理解している気配がしません。

この年代の子どもたちに伝わるような何かいい言葉はありますでしょうか?

今のままの伝え方でも成長とともに分かってくれるのか、ご意見伺えましたら幸いです。よろしくお願いします。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

つい最近まさしく同じような話題を、私のクラブの子どもたちの試合を観ながらコーチと話しました。

 

■まずは子どもたちが自分の判断でプレーしていることを見守ってあげる方が良い

それぞれの子どもたちのポジションを私が決めてしまえば、多分もう少しスムーズにいきます。ただし、そうしてしまうと子どもたちの伸びしろを奪うかもしれません。違うポジションの経験をすることで、その子がもっと違う発見をするかもしれないのに、私が「この子にはここが合っている」と主観で決めることの弊害がきっとあります。

プレーの一つひとつを見ても「いや、そっちに行くよりこっちのほうが良かったね」と思ったりすることがあります。でも、それは外から見るとそうなのですが、プレーした子がその状況をどう打開するかというのは、そのとき、その子にしかわからない。その子の判断になるわけです。

もしかしたらそのとき「自分の技術では抜けない」とか「パスできない」と思ったかもしれません。だからこそ、何も言わずに見守ってあげたほうがいいのです。そうすると、それぞれの子どもがやりたいように、あるいはやれる範囲で、あるいはやれないかもしれないけどチャレンジしようとします。その行為こそが、後々大きな成長につながります。

ここでため息が出たのではないでしょうか。「後々」の成長になる。育成年代の指導者は現在地ではなく、そこを見なくてはなりません。

 

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■団子サッカーを脱却するための指導

私のトレーニングを見た指導者からよくいただく質問が「パスばっかりする選手になりませんか?」です。私は微笑みながら「パスすることの何がいけないのでしょうか?」と話します。

私は小学生に、ワンツーで抜け出すことを指導します。パスしたらまた自分がもらいに動く。そうすると、もらった子も次にまたパスを出して動く。つまりずっと流動する。だんだんサッカー自体がダイナミックになります。

それを小学生のスタートのところから教えておかなくては、今の世界のサッカーの潮流には乗れません。

したがって、団子サッカーを解消する際は、ポジションを決めるといったことよりも「パスを出したら、次どこに行ったらもらえる?」「その次はどこに出したらシュートが打てる?」と言った問いかけをし、必要があれば原理原則を伝えます。そんなふうに指導をしていってもらえるといいかなと思います。

 

■スペインで指導経験のある佐伯夕利子さんもかつて団子サッカー解消で失敗

私も何度かお話ししたことのある佐伯夕利子さんはスペインで指導者をしてきた方です。彼女は著書『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』に、かつて低年齢の子どもたちが団子にならないようにするためにマーカーを置いた話を書いています。マーカーを置いて、子どもに自分のポジションをわかりやすく示していた、と。その指導をこう振り返っています。

「何と幼稚な指導をしていたか」

そんなことでは、団子サッカーからは脱却できません。日本では、指導者のみなさんは「広がれ、広がれ」と団子にならないよう声をかけます。一瞬広がりはしますが、チームとして繋がってはいません。それが現状なのです。

 

■サッカーを理解すると子どもたちの視点が変わる

「この年代の子たちに伝わるような何かいい言葉はありますでしょうか」とあります。例えば「サッカーで大切なのはチームゲームだよ」と言い続けてください。団子になりがちな幼児や1年生からそのことを理解させるのです。

理解すると、子どもたちはこんな視点を持つようになります。
「(小学)2年生の子たちが誰もパスしないんです!」
ある日、高学年の女の子たちが、不満そうな顔で私に訴えてきました。

「そうなの? それは大変やな」と彼女たちに対して共感を示したのち、「ちょっとみんな集まって」と声をかけ、話し合いをしました。

まず、私がこんな問いかけをしました。
「サッカーはチームでやります。みんなにすごいね! って言われたら、誰でも嬉しいよね。楽しくなるためにチームがあります。みんなが楽しめるようにするためにはどうしたらいい?」

すると、私に訴えてきた高学年の女の子が「チームのメンバー全員がボールに触らないとシュートできないっていうルールにしたら?」と言ってきたのです。

これはいい勉強になると思いました。じゃあ、そうしよう! と言って始めたら、みんながパスをつなぎ始めました。2年生の子どもたちも周りを見始め、パスを出し始めたのです。全体的にとてもダイナミックになりました。

 

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