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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

選手の価値は個人の技術? 日本人に合うのはティキタカだと思うがリフティングやドリブルを極める方針でいいのか?

公開:2019年1月12日 更新:2019年3月18日

キーワード:コーチングショートパススペイン代表ティキタカリフティング個人技池上正

指導するクラブは個人技を重視するクラブ。試合もリフティングの課題ができた順に選んでいるけど、日本人は「ティキタカ」を目指すのが路線では? 新米コーチからのご相談をいただきました。

どうしても身長のイメージから日本人はスペインなどのプレーモデルの方が向いている、という意識を持っている方がいらっしゃるようですが、果たして本当にそうでしょうか。
少年時代に身につけるべきスキルとは?

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、コーチの悩みに寄り添います。(取材・文:島沢優子)

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※写真はイメージです。 質問者及び質問内容とは関係ありません

<<勝たないと納得しない親たち。結果重視の保護者対応、どうしたらいい?

<お父さんコーチからの質問>

中学生のクラブチームの新米コーチです。
うちのチームはリフティング、ドリブルを徹底的に極める、サッカー選手の価値は個人の技術だと、それがうちのチームの育成方針だとクラブの代表に言われます。

試合もリフティング課題が出来た順に選手を選考しています。

U13-U15の年代で戦術よりもドリブル、テクニックに特化したチームです。試合に負けても個人の技術が成長したならそれでOKといった感じです。

一応プロ選手も排出していますがこの育成方針は間違いではないのでしょうか?


日本人はティキタカを見本にするのが路線だと思うのですが...
よろしくお願い致します。

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

「ティキタカ」は、ショートパスをつなぐサッカーのことで、スペインから生まれた言葉ですね。日本でも若い指導者や選手たちが「日本もティキタカでやろう」と言ってしまうけれど、ティキタカを実践するためにはどんなベースが必要なのか、そのためには何をしたらいいのかということが理解されていないように思えます。

■ティキタカを実践するのに必要な技術とは

スペインが2010年のW杯をこのパスサッカーで制し、その後、バルセロナレアルマドリードといったスペインの強豪が世界のサッカーをリードしてきました。

では、2018年W杯優勝国フランスのサッカーはどうだったでしょうか。

機を見て一気に前に運ぶスピーディーで豪快なアタックは、新たな潮流が生まれていることを見せつけました。

これをどう見るか。

スペインのようにショートパスでつないでいくサッカーではなく、チャンスあればどんどん前へ運ぶ。どちらかといえばドイツのサッカーに近いかもしれません。ボールをつなぐのは基本ですが、よりスピーディーに、そして臨機応変に、バラエティーに富んだ攻撃がピッチで表現されています。

「日本もティキタカでやろう」となった場合、そこをどう考えたらいいのでしょうか。

先ほども申し上げましたが、ボールをつなぐこと自体は必要な技術です。では、ボールを「つなげられる」選手に求められるものは何か。

それは、「判断力」です。どこに出せば一番チャンスがあるのか。その判断を、確実に実行できる力、しかもスピードプレーのなかで選び取っていく、感じ取っていく力を育てることをまず考えなくてはいけません。

■日本人は高い技術を持っている。不足しているのは「判断力」

日本人はテクニカルだと言われます。止める、蹴る。非常にいい技術を持っている。しかしながら、すごい技術を持っていても、その技術を最適な状態で生かす「判断力」がまだまだ不足しています。

例えば、2019年1月9日に行われたアジアカップ。日本代表対トルクメニスタン戦をご覧になった方は多いと思います。

日本が挙げた3ゴールはどうだったか。最適なポジションに選手が動く。そこに最適なボールがいく。それが点に結び付いていました。

大迫選手の先制点。彼がとったポジション、そして縦に供給された速いボール。あのようなボールが出てくると、相手はそこに飛び込めません。よって前に向かせないための守備をしようとしますが、大迫選手にはその上をいける技術がありました。

彼がボールを流し込んだ場所は、一番点に結びつくエリアであり、彼の仕事場です。そのポジショニングを見つけてタイミングよくパスができた時点で、ほぼゴールは決まっていたとも言えるでしょう。

今の日本代表は海外で活躍する選手が主力です。海外ではあんなプレーや、あのような場面が何度も繰り広げられます。それを逃さない目、判断力が植え付けられているのも、そんな環境で経験を積んできた結果でしょう。

■やっぱり○○が必要、という考えは危険! 小学生年代に最も必要なことは......

一方で、若い選手はまだまだ判断力が及びません。

例えば、富安選手は慣れないボランチでの出場で難しかったかもしれませんが、みていて、「どうしてそんなところにパスするの? 運ぶの?」 と感じる場面がありました。いくつかは判断が間違っていたかもしれません。

もちろん、原口選手や柴崎選手が毎回一番いいところにボールを供給できたかと言えば、そうではありません。もっとよいポジションにいる選手を見逃したり、ボールをさばけてもその精度が低くてカットされたりしました。

とはいえ、彼らのような海外での経験を積んだ選手は、見つけられるようになってきています。それは海外でやってきたおかげでしょう。パスが何センチかずれるだけでミスになる。クオリティーのハードルが上がるわけです。

ただし、少年サッカーの指導者にそのような話をするのは、実は危険な議論だと考えています。なぜなら、「やっぱり個人技術が重要だ」「リフティングだ」「ドリブルだ」という話になってしまいがちだからです。

小学生時代に何が最も重要かといえば、「いい判断ができるトレーニング」なのです。

例えば、ミニゲームのなかでも、そのことは意識付けできます。
「今のプレーさ、判断OK。でも、技術がなかったね」
「今のドリブル、上手いんだけど、もっとゴールの可能性が高い選択はなかった?」

判断と技術を分けて伝えます。そうすると、選手は理解しやすいはずです。ドリブルにしても同じです。いい判断のドリブルなら、失敗してもOKとします。

「もう少しとられないようなドリブルを磨こう」と伝えればいいわけです。

次ページ:判断力を身につけるトレーニング、声かけは

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文:島沢優子 写真:吉田孝光

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