あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2018年9月28日

説明しても理解できず味方とかみ合わない子。ポジションの役割や動きを教えるには?

説明してもポジションの役割が理解できず、筋違いな動きをする子がいる。試合の中で自然に覚えていくものだと思っていたけど、理解できない子もいるのかも。本人に気づかせる方法はある? それとも座学も含め、説明の機会を設けた方が良いのか......とご質問をいただきました。

みなさんは、知識ゼロな状態で試合の中で「考える力」や「認知力」を身につけられますか?

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが授けるコーチングを参考にしてみてください。(取材・文:島沢優子)

※写真は過去のサカイクキャンプのトレーニング写真です。 質問者及び質問内容とは関係ありません

<<子どもたちが100%の力を出し切ってない気がする。 やる気が出てサッカーも上手くなるトレーニングはある?

<お父さんコーチからの質問>

こんにちは。U-12年代を指導をしています。

高学年なのですが、説明をしてもポジションの役割や動きを理解できず、ちぐはぐな動きをしたり、味方と噛み合わずプレーに入れなかったりする子がいます。

試合中の動きは自分で考えて自然に覚えると聞きますが、そうでない子もいるのかなと思っています。

子どもたちが理解できるようになるまでに、座学などを含め都度一から全部説明したほうが良いでしょうか? それとも本人に気づかせる方法、練習方法、声掛けなどがあれば教えて下さい。よろしくお願いします。

<池上さんのアドバイス>
ほとんどの子どもはポジションについて練習すると、それなりにできますが、なかにはご相談者様が教えている子のように周りと違う動きをする子もいます。

守っていて攻撃参加したらそのまま戻って来ない。もしくは、フォワードなのにボールをもらいたいがためにどんどん下がってきてしまいます。そういったポジショニングのまずさがあるのかもしれません。

■子どもが「自然に覚える」ことはあり得ない

まず指導者が考えなくてはいけないことは、小学生の間にどんなことを学ばせるかということです。

練習では、自分とひとりの味方、二人の関係で何をするか。攻撃して、ボールを取られたら守る。つまり2対2です。そこで効果的なプレー、例えばワンツーを使うことなどを教えます。

次に守る側。二人で守るとお互いカバーし合いながら頑張れる。そういう関係を理解する。それが3人なったらどうする? 4人になったら? そのように段階を踏んだ練習をしてください。

座学もやってみてください。6年生なので頭でも理解できます。

例えば、ポジションごとに主な動きをホワイトボードに書く。ポジションごとにカードのような紙に、その役割を整理して伝える。図解したものを配ってもいいでしょう。6年生なのでもしかしたら自分たちでつくれるかもしれません。

それでも理解できない子がいれば、プレーを止めてでも説明する必要があります。


ベーシックな動きを教えてあげる。それを踏まえて、次は自分で考えてやってごらんと伝えてください。チャンスだと思ったら前に。ピンチだと思ったら、マークに走る。そこは任せるよということです。

結論から言えば、子どもが試合中に自分で自然に覚えるということはあり得ません。仲間の動きを真似するというのはあるかもしれませんが、指導者がベースをつくってあげてください。

■有名強豪校出身の子の方が「扱いづらい」理由

日本の子どもたちには、もっとサッカーの認知力を高めてほしいと私は考えています。今の日本の6年生で、全体を見て良い動きができる子どもはなかなかいません。例えば、全員が右に偏っているとします。

「みんな!左に誰かいなきゃ」と、チームの誰かが言えるようにしなくてはいけません。ひとりが気づくことで、他の子たちも気にし始める。もしくは、そうなるよう指導者が声かけします。

「いま、いい声が出たね」「コーチング、グッド」そんな指摘をします。

誰も気付けなければ、ストップをかけて「いま、左に誰もいないよね。誰が気づけるかな?」と促してもよいでしょう。

大事なことは「そこで誰がいかないといけないか」を決めるのではなく、「誰かがいかなきゃいけない」とみんなが認知できることです。

そうすれば「今のはボクだった。気づくのが遅れたから、次は注意するよ」と言えるし、他の子が「今のはA君がいったら良かったね」と指摘できます。

そこを大人が枠にはめてしまい「サイドバックだから、今のは君」「ワイドアタッカーだから、今のボールは君がもらわなきゃ」というふうにしてしまうと、子どもたちは決められたことしかできなくなります。

「気づける子」に育ててください。

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