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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2019年3月 1日

高校野球の投球制限と少年サッカーに通じる「仕方がない」

キーワード:スポーツマンのこころプレーヤーズファースト投球制限高橋正紀高野連

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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「スポーツ」の正しい理解とは。

■新潟県の「投球制限」に待ったをかける高野連は、選手の卒業後は考えていない

今回は、サッカーと並んで日本の2大プロスポーツと言われる野球の話をしましょう。

公益財団法人日本高校野球連盟が、投手の1試合の球数を100球というように「投球制限」を導入すると発表した新潟県に、再考を申し入れました。

多くの投手をそろえられる強豪校との差を助長する可能性が高いといった理由を挙げ「勝敗に影響をおよぼす規則だから」と説明しています。

1980年以降の甲子園での投球数は、最多が松坂大輔選手(横浜高校)が夏の大会準々決勝PL学園戦で投じた250球。斎藤佑樹が投げた2006年春2回戦の231球は5番目に多い。
最近では2013年春に現在楽天に所属する安楽智大(済美)が232球を投げています。

いずれの選手もその後肩を壊すなど、故障を抱えてプレーしてきた様子がうかがえます。

勝利至上主義の観点からしか、判断ができておらず非常に残念な行動です。本来なら、新潟県が先んじるのではなく、高野連が故障のリスクを軽減する配慮をしなくてはならないのに。

なぜ、選手の健康に配慮ができないのか。

それは、スポーツの正しい理解がなされていないからです。

スポーツがゲームであり、とことん真剣な競争をして、とことん勝負にもこだわることが楽しさの質を上げるためには必須の条件であるということ。かといって、その真剣さも勝負へのこだわりも、ルールという枠の中で追及されるべきであること。スポーツというゲームは日常生活内での様々な余裕(身体的、時間的、経済的)があってこそ営めるものなので、身体を壊してまで追及されるべきものではないこと。そんなとらえ方ができていません。

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(C)高橋正紀


以前、野球の強豪校の監督さんと話したことがありました。
そこの野球部は、部員が150人以上いました。県内やその地方の優秀だといわれる中学生を大量に獲得していました。そうすると、上手いけれど試合に出られない生徒がたくさん出てきます。

「みんな上手いですね。ここの野球部員なら、よそへ行けばみんな試合に出られるでしょうね」
私がそう話すと、その方はこう答えました。
「そうですよ。よそで出られたら困りますからね」

よそで出られたら、困る。
だから、大量に選手を獲るのか。
勝たなければいけない。勝つことが最も尊いことだと考えているのだろうと思いました。その理解であれば、すべて納得できるのです。

もちろん、野球をしている人、かかわっている人たちが全員そうだとは思いません。しかし、スポーツに対する理解が仮に「スポーツは勝つことが目的」「勝たなければ意味がない」「勝つためにやる」という理解が優先されるのであれば、勝つためならば反則もOKとなります。もっといえば、高野連が目標に掲げている指導現場の暴力の根絶も難しくなるのではと感じます。

これと同じように、「勝つため」ととらえれば、最も頼れる(=最も勝利を得られる)エースに200球くらいは我慢して投げてもらわなければならない。卒業後のリスクまでは知りません、と言っているのと同じかもしれません。

■長時間練習も試合に出られない子がいるのも「仕方がない」!?

大人たちは「勝つために」とは表立っては口にしません。代わりに、子どもたちにとって良くない現状が変わらないことに対し、「仕方がない」という言い方をよく聞きます。

あるサッカー指導者の知り合いの息子さんが小学1年生でサッカー少年団に入って、親として少しかかわったときの話です。

その方は県のサッカー指導者を養成している立場もあるので、あくまで親として距離をとっていたそうです。

そして年に数度、保護者やコーチが集まる総会にも出たそうです。
すると、サッカーとは無縁そうな、息子が入りたてのお母さんたちが「正解」を言うのだそうです。
「練習時間が長すぎはしませんか?」
「試合に出られない子がいるのはよくないのではないでしょうか?」
子どものからだのこと、心のことを考えてまっとうな意見を言うのだそうです。

この話を聞いて私は、スポーツの側にいない人のほうが、はるかに健全なんだなと思いました。人間的で、常識的でまったく間違っていない。ところが、スポーツの現場にいる人たちはそこに気づくことが難しくなってしまっている。多くのコーチは自分が経験したのと同じ接し方、考え方で子どもを教えます。素人でも理解できることに気づかずに......。
つまり裸の王様です。自分たちが裸と気づきません。

3時間半の練習の中身も一人一人の子どものプレーできる回数が少なく、一番楽しいはずのゲームは最後に10分だけ。試合に行っても、出るのは先発組だけ。まったく出られずに帰ってくる子がたくさんいたそうです。これでは、子どもたちがサッカーを主体的に楽しめているのかは疑問です。

その方は見かねてお母さんたちの正論を後押しする意見を"専門家"として進言したそうですが、少年団側はそれをまったく受け付けなかったそうです。

「わかるけど、仕方ないでしょ」と言うのだそうです。


効率の悪い長時間練習も、試合に出られない子がたくさんいるのも「仕方ない」

こちらで言葉を挟むとすれば、「勝たなければならないんだから、仕方ないでしょ」ということです。

その方は、その少年団の小学生の多くが、中学でサッカーを続けないということを知り「みんなサッカーをやめてしまいますが、そのことについてはどう思ってますか?」と尋ねたそうです。

すると「いや、中学はいろんな部(競技)があるから仕方ない」「ジュニアで十分やり切ったんでしょう。仕方ないですね」と納得したような顔でおっしゃったそうです。

次ページ:解明すると都合が悪いことは「仕方がない」!?

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」

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