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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

グリット(やり抜く力)をつける正しい方法とは? 子どもの「内側から」のやる気を起こす指導のありかた

公開:2018年12月12日 更新:2019年2月15日

キーワード:やり抜く力グリットスポーツマンのこころスポーツマンシップ勝利至上主義指導者

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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※写真はサカイクキャンプです

■小2の頭を蹴った沖縄の指導者から見る少年スポーツの「圧迫指導」

沖縄の少年サッカークラブに所属する小学生2人の後頭部を蹴ってけがを負わせたとして、県警が40代の男性監督を傷害容疑で那覇区検へ書類送致されていたことが報道されました。

一生懸命やらないと仲間から信頼されないということを伝えたかった」
小さな子どもの頭を蹴った監督はそう話しているそうです。

8年ほど前になるでしょうか。ある地域の指導者からこんな話を聞きました。
「強豪の少年団のなかには、保護者に対し"念書"を書かせたうえで、暴力を指導に持ち込むところもあります」

詳しい念書の内容は定かではありませんが、恐らく「コーチの指導に干渉しない」「指導のやり方に干渉しない」といった抽象的な文言でしょう。そこには、間接的であるにせよ「手を挙げても文句を言わないでください」というメッセージが込められているわけです。

このような念書を、ミニバスケットボールのクラブや少年野球でも、保護者に書かせているクラブがあったと聞きました。

しかも、それが常態化していたようなのです。
「親公認だから、指導に暴力を持ち込んでも構わない」
そんな認識が広がった背景には、指導者の焦りのようなものが横たわっているようです。「この地域の子は自由でのんびりしている。だから、意図的に厳しい指導をしないと頑張ろうとしない。それでは他地域の子どもに勝てない」
そう語るコーチの話を聞いたことがあります。

そもそも、その地域に限らず、私たちアジア人は実りの多い肥沃な土地から恵みを得られるため、平和的でのんびりした気質の民族であるといわれています。さらに、モンスーン気候の中で逆らうことの不可能な大自然の猛威の中で生きるうちに、受け身的で耐え忍ぶ生き方だともいわれます。恵みの乏しい環境の中で、自ら狩猟をして攻撃的に生き抜いてきた欧米のアングロサクソン系の民族とは、もともとの文化の質が異なります。

時間の経過とともにそういった文化が交わり平準化していくわけですが、そういう気質のかけらは残っているのでしょう。

そして、その地域の指導者は、自分たちもそういったのんびりした気質があって、勝てなかったと、経験的に学んでいる。よって、グリット(やり抜く力)を子どもたちに求める際に、厳しい態度で接してしまうのではないのでしょうか。

本来は主体性を求められることが一番の厳しさですが、彼らのなかでは、走れ、頑張れと「外発的に圧迫する指導」になっている。そしてその圧迫は、ちょっとしたことで体罰にまでつながります。

■やりぬく力=グリットを身につけさせる方法

グリットを身につけさせる正しい方法は、まず「子ども自身が納得してやる」ことが重要です。

ただ、放置していてはいけません。
自分を大切にするとは、ベストを尽くして自分を磨くことだという「スポーツマンのこころ」を理解させた上で、「君は自分を大切にできているか?」「それでいいのか?」「それで自分磨きになってるか?」コーチが言葉や態度に様々な工夫をすることで外発的なきっかけを与えます。

そこから子どもが気づいて自分で考え始める、動き始める。そこで初めて内発的な主体性に近づきます。大人がきっかけを与える「外発性」から、子どもが主体的に行動する「内発性」へ連動させることが肝です。

私が学生を指導するときも同じです。
サッカーのメニューは工夫して、楽しいけれども、むちゃくちゃきついものをやる。そこでやり抜くかやり抜かないかは「おまえの人生だからじぶんできめろ」と話します。もしもそこでやり抜けなかったとしても、次がある。一度ダメだったから「ダメなやつ」で終わらせません。

「次、どうする?」

そんなコーチと選手の対話の積み重ねが、グリットを育てていきます。
ほんの少しの外発的な刺激で、より内発に近づけていく。それが優秀な指導者がとるプロセスだと考えます。

ボトムアップ理論の普及を進めている広島県立安芸南高校サッカー部監督の畑喜美夫さん"トップボトムアップ"という考え方を提唱しています。この考え方を私なりに解釈すると、その時々の対象によって、トップダウンとボトムアップの割合は変化するが、最終的にはボトムアップで行えるようになることを目指すということです。

現在の日本の学校教育では、子どもが最初から主体的に動くことは非常にまれなので、こういったプロセスを経る必要があります。

そのプロセスは実は思った以上に手間ひまがかかるのですが、指導者は自分の意思で貫く必要があります。

5年前、スポーツ界と教育界は文部科学省をはじめ、すべての機関や団体が一斉に「暴力根絶宣言」を行い、暴力的な指導を禁じてきました。中学や高校の生徒たちが顧問の暴力や理不尽な指導に苦しむ「ブラック部活」の問題が続いたからです。

次ページ:大人自身がやり抜く力を持っているのか

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」

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