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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2018年9月12日

憧れの女王を破ってメジャー初優勝。ゲームを大切にした大坂なおみ選手に学ぶべきこと

キーワード:スポーツマンのこころスポーツマンシップリスペクト切磋琢磨集中

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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大坂なおみ選手が見せた相手へのリスペクトとは

■大坂なおみが見せた相手へのリスペクト

テニスの全米オープン女子シングルス決勝で、大坂なおみ選手(日清食品)が幼少のころから憧れの存在だったセリーナ・ウィリアムズ(米)を破り、日本人初の4大大会優勝を成し遂げました。

この試合は大坂にとって、心理的なコントロールが非常に難しかったことでしょう。みなさんご存知のように、セリーナ選手が3度もの警告を受けたため、大坂選手へ1ゲーム与えられたからです。


試合は立ち上がりからほぼ大坂選手のペースでした。セリーナ選手は勝てばグランドスラム優勝回数最多記録の24回に並ぶという特別な一戦でしたから、36歳の元女王にとって20歳にかく乱され続ける時間は耐えがたいものだったに違いありません。

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(C)高橋正紀

心をかき乱された元女王は自ら試合を壊してしまったように見えます。が、対する新女王は、あのような異常事態になっても相手へのリスペクトを忘れず試合を大切に扱いました。

2度の警告に納得がいかないセリーナ選手が審判を激しく抗議していたとき、彼女は背を向けたまま、静かに試合再開を待っていました。

この時間を、優勝後のインタビューでこう振り返っています。
「スコアが5―3となっていたので、少し混乱した。でも、私は、彼女は偉大なチャンピオンで、どんな時点からでも追い上げることができると知っていた。だから、とにかく試合に集中しなければならないと感じていた。とにかく私自身のことに集中しようと努めていた」


あのような事態になっても相手へのリスペクトを失わず、純粋な気持ちで試合に向かっていたのです。

表彰式が始まると、前代未聞の大ブーイングが起こりました。
大坂選手はうつむいて、サンバイザーで流れる涙を隠しました。それでも、ブーイングをした観客に怒りや失望を見せることなく、こう言いました。
「みなさんがセリーナを応援しているのは知っていた。こんな結果でごめんなさい。でも、試合を見てくれてありがとう。セリーナも私と試合をしてくれてありがとう」

観客に「ソーリー」と頭を下げた彼女の姿は、観客の心を鎮め、ブーイングを拍手と喝采に変えました。
セリーナ選手の試合中のふるまいは女王としてのプライドによるものでしょうし、賛否ありますが、大坂選手の言葉の力はそれさえも浄化してくれたような気もします。

■仲間を大切にするこころが自分を成長させる

連載の前々回では、スポーツを楽しみながら成長するには「三つのこころ」が必要で、そのひとつめが「自分を大切にする」という視点だという話をしました。

二つめは仲間です。苦しい時間でも仲間を助けようとするこころは、いつか必ず自分を助けてくれます。「情けは人の為ならず」という日本のことわざの通りです。でも、それはチーム競技のことであって、テニスや柔道、陸上競技や水泳のような個人競技はそうじゃないと思われるかもしれませんが、ひとりでやるスポーツも同じです。


テニスも柔道も、一緒に練習する相手が強くなってくれたら、それは自分の成長にプラスになります。対人競技ではない水泳や陸上でも、チームの仲間の取り組む姿勢、更新するタイムが刺激になります。つまり、切磋琢磨しあえるわけです。

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(C)高橋正紀

その次の三つめが、「試合を大切にするこころ」。
これは、全米オープン決勝で見せた大坂選手の態度そのものです。

相手を敬い、冷静に対応しました。セリーナ選手の対応に時間を費やす審判に対しても、ひと言も文句を言わず尊重しました。ルールはもちろん遵守しています。

試合を楽しく行うためには......
ルールがなくてはできません。
自分と仲間(大坂選手の場合はコーチやスタッフ)、
そして、何よりもプレーしてくれる相手、さらに判定を委ねる審判、この五者が健全に存在してこそ成立するのです。

次ページ:自分の「楽しい」がみんなの「楽しい」に、そして勝利へつながる

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」、写真:GettyImages

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