蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2018年8月 8日

上の学年へ飛び級していたのに補欠にされ、移籍考えてます問題

4、5年生の時は飛び級で上の学年とプレーしていたのに、6年生になった途端、何の前触れもなく「補欠の補欠」に落とされてショック。コーチに聞いてみたけど理由を教えてくれない。子どもも不安がっているし、今からでも移籍させた方が良い? というご相談です。

ジュニア年代によくある「逆転現象」とは?

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、今回もジャーナリストとしての知見やご自身の経験を通して、アドバイスを送ります。壁にぶつかったお子さんの成長を見守るときの参考にしてください。(文:島沢優子)

※写真はU-12ワールドチャレンジ2017のものです。 質問者及び質問内容とは関係ありません

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<サッカーママからの相談>

移籍するか迷ってます。

息子は4、5年生の頃は一つ上の学年に飛び級していました。6年になりコーチが変わり同級生とやれるって喜んでいたのですが、何の前触れもなくいきなり補欠の補欠にされました。これまで飛び級していたので、まさかそんな評価をされるなんて、息子はショックを受けています。

補欠の補欠に落とされた理由を子ども自身もコーチに質問しましたし、私も単純に理由を知りたいと思いコーチに伺ってみたのですが、はっきり教えてくれないのです。

子どももどうすれば良いのかわからず『コーチに嫌われていたらずっと試合に出られない』と不安になってます。このままでは試合にも出られず、コーチの評価におびえながらサッカーを続けることになります。今からでも入れるチームへの移籍を考えた方がいいでしょうか。


アドバイスお願いします。

<島沢さんのアドバイス>

ご相談、ありがとうございます。

2年間飛び級して上の学年でプレーしていたのに、最上級生になって「補欠の補欠」つまり、3番手くらいになったわけですね。それは息子さんもショックを受けたことでしょう。そして、お母さんもかなり動揺されている様子が見てとれます。

とはいえ、「補欠になったから移籍する」というのは、いささか性急ではありませんか?

しかも6年生の夏を迎えているなかで移ったとして、それまで6年間一緒にやってきた新チームの仲間のなかにすんなり溶け込めるでしょうか。「試合出たさに移籍した」子に対し、チームメートの親たちはもしかしたら快く思わないかもしれません。

さらにいえば、移った先で必ず試合に出られるという保証はありません。強豪チームでのレギュラー定着を目指し、ジプシーのように渡り歩く親子を何組か見たことがあります。彼らを「少年サッカージプシー」として、私はずっと注目していました。

 

■試合出たさに移籍を繰り返した子の「その後」

彼らがその後、どうなったか。
中学校になって子どもがサッカーをやめたりする子もいます。継続している子もいますが、いずれにしても親御さんが期待したほどには伸びてはいません。それが現実です。

彼らを指して周囲の人たちから必ず出るのは「最初のチームにいればよかったのに」という言葉です。「親御さんが勘違いしちゃったかな」とか「欲が出たんだろうね」という辛辣なものもあります。すべてが正解ではないかもしれませんが、私は当たらずとも遠からずというふうにとらえています。

また、お母さんに尋ねたいのですが、そもそも下級生からずっと補欠の子はどうなるのでしょうか。その子たちは少々技術が劣ったとしても、今のチームの仲間と一緒にサッカーをやるのが楽しくてここまで頑張ってやってきた。そして、その親御さんたちもわが子は補欠だけれど、そのチームで楽しくやって、成長できると考えてそこにいるのだと思います。

その意味でいうと、息子さんは今、何のためにサッカーをしているのでしょうか? お母さんは、なぜ息子さんのサッカーをサポートしているのでしょうか? ぜひ一度親子で考えていただければと思います。

これを機に、お母さんに考えてほしいことが二つあります。

■「逆転現象」は珍しくない

ひとつめは「目の前の結果が良ければそれでいいのか?」ということです。

2年間も飛び級してプレーしていた息子さんが補欠になった理由は私にもわかりません。ただ、一般論では理解しています。

3年、4年、5年生とそんなに目立たなかった子が、体の発育にあわせスキルが上達し、サッカーの認知度も上昇してぐぐっと伸びてくるケースは珍しくありません。どのチームも、この「5年伸び」の子が何人かは出てきます。

それとは逆で、足が速くて上手かった子が目立たなくなったり、体が大きくて周囲を圧倒していた子がなかなか伸びなかったりという現象は起きてきます。

つまり、ジュニアサッカーは「逆転の現象」が起きやすい場所なのです。そして、ベテランだったり、若くても優秀なコーチはこのことをとてもよく理解しています。その理由も、背景もわかっています。

息子さんは、この逆転の現象に当てはまるかもしれません。しかも、飛び級で上の学年にいたのは前のコーチの判断です。新しいコーチは、息子さんに何かが足らないと判断したのではないでしょうか。

もし息子さん自身が理由がわからなくて、それが気になるならコーチにこう尋ねたらよかったかもしれません。

「コーチ、僕は何が足らないんでしょうか?」

もしかしたら、自分で考えなさいといわれるかもしれません。であれば、自分で一度考えてみたらいい。実際にコーチはなぜ出られないかを教えてくれなかったと書かれていますね。恐らく新しいコーチは、息子さんが自発的に考え、自分に足りないことに取り組むことを期待しています。そして、その時間が息子さんを成長させると考えているはずです。

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