考える力

2023年7月18日

【文武両道】宿題がない夏休みもコツコツ勉強するようにはどうすればいい? 「小学生の究極の自学ノート図鑑」著者の森川先生がアドバイス(前編)

もうすぐ夏休みがやってきます。夏休みは学校がないので、学習習慣が身についてない子は、勉強から距離をとりがち。保護者の立場としては、夏休みの終わりに課題を一気に片付けるよりも、毎日取り組む姿勢を身に付けてほしいもの。

では、お子さんに「自ら学習する姿勢」を身につけてもらうには、どうすればいいのでしょうか? この悩みを解決するためのヒントを関西学院初等部教諭の森川正樹先生にうかがいました。

『自学』を通じて、子どもたちの学ぶ力の向上に取り組む森川先生のアドバイスを、ぜひ参考にし、夏休みを過ごしてみてください。
(取材・文 鈴木智之)

 

 

夏休みもコツコツ勉強するようにはどうすればいい? 「小学生の究極の自学ノート図鑑」著者の森川先生がアドバイス(後編)>>

 

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■「学び」を遊びにしてしまえば勉強に対して前のめりになる

関西学院初等部教諭で『自学』を教育に取り入れている森川正樹先生は、自学ノートなどを通じて「自ら進んで学ぶ力」をつけるためのアプローチをしています。

森川先生は「僕がしているのは、『学びの遊び化』です」と柔らかな口調で語ります。

「学びを遊びにしてしまえば、子どもたちは勉強に対して、前のめりになるのではないか? と思い、自分で好きなテーマを決めて、見開き2ページにまとめる『自学』を始めました」

自学の輪は全国に広がっており、子どもたちが作成した自学ノートが掲載された書籍が出版されるなど(昨年の自学コンテスト(小学館さんとの共催)では応募総数約1700作品)、日々の学習に取り入れるケースも増えてきています。

「『自学』は見開き2ページにひとつのテーマをまとめる学習のことです。テーマは何でもOK。好きなサッカー選手でも恐竜でも生き物でも、スイーツでも宝石でも、興味があるものについて、まとめてみようという取り組みです」

 

■これからの時代に必要なのは、調べればわかる知識ではなく情報をもとに考える力

森川先生は自学の良さを「学びを俯瞰することができ、見開き2ページで自己完結できること」と言います。

「自分の好きなこと、興味のあることに対して、本やインターネットから情報を集めて、見出しを作って項目を立てて、イラストなどで表現する過程に、様々な学びの要素が入っています。いまの時代、インターネットやAIの発達で『知っていること』の価値は減ってきています。調べればわかる知識ではなく、『この情報をもとに、どう判断するか』といった、考える力や取捨選択の力が大切になってきています」

自学では、自分の感想を書くようにしているそうで、そうすることで「情報の書き写しではなく、考えることにもつながる」と言います。

「例えば恐竜をテーマにした場合、『ティラノサウルスは肉食だとわかった』『足はあまり速くないと知って驚いた』など、自分の考えがとても大切なんです。最初は1行でもいいので、感想が入っていたら『これはあなたの自学だよ。すごいね』と褒めています」

高学年にもなると、感想をたくさん書けるようになり、自分の考えをまとめて、文字で表現することに慣れてくるそうです。

「子どもたちは自学のノートを、得意気に見せてくれます。その表情を見たときに、やらされている勉強ではなくて、自ら進んでやる学びになっているなと感じます。ノートを上手に書けるようになると、自己肯定感も上がっていくんですよね」

 

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■保護者など身近な存在が感心してあげることで子どもは伸びる

森川先生は「自学を通じて、最後までやりきる力がつくことで、学校の成績にも影響がある」と言います。

「自学ノートに文字をていねいに書くことや、定規を使ってスペースを作り、その中に文字を入れて見やすくまとめることを身につけることで、学校の勉強にも良い影響があると思います」

とはいえ、子どもに突然「自学をしなさい」と言っても、何をどうすればいいかわかりません。また、何のためにするのかがわからないので、やる気が出ないといったことになりがちです。

そこで森川先生は「大切なのは、保護者や教師が、ちゃんと感心してあげること。身近に感心してくれる存在がいるといないのとでは、圧倒的に伸びが違うと感じています」とアドバイスを送ります。

「大人の当たり前は子どもの当たり前ではないので、自学のノートを見て『定規できれいに線を引いて、タイトルを揃えて書けてすごいね』など、些細なことでもいいので、良いところをみつけて褒めてあげるといいと思います。その環境で育まれるお子さんは自己肯定感も高いので、落ち着いて勉強に取り組むことができるようにもなります」

  

■保護者が一緒に取り組むのも大事、きれいに完成するとやる気が出ることも

また「親子で一緒に取り組むのも大事」と言います。

「お父さん、お母さんが『あなたの好きなことについて教えてほしいから、ノートにまとめてみて?』と言うのもいいですよね。そして『夏休みの間、1,2週間に1つのペースで自学ノートを作ろう』など、やれる範囲で目標を立ててみましょう。低学年の子であれば、保護者の方が手伝ってあげるのもいいと思います」

自学ノートの挫折ポイントは、ハサミで上手に切れない、線がまっすぐ引けないなど、技術的なことも多いそうです。

保護者が手伝ってあげて、きれいに切れたり、ぴったり貼れたりするとやる気が出るので、助けてあげられるところはやってあげると良さそうです。

「最初はどんな形でもいいので、完成品を作ってみてください。そこで『すごいね』『いいのができたね』と声をかけると、お子さんはニコっと笑顔になって、やる気が出てくるはずです」

夏休みの自由研究など、テーマを自分で決められるものがあれば、自学ノートを作成するのもおすすめ。自学の書籍もたくさん出ているので、参考にしてみてはいかがでしょうか? きっと、学びの楽しさ、面白さに気づくことができるはずです。

 


森川正樹(もりかわ まさき)
関西学院初等部教諭  
平成32年版学校図書国語教科書編集委員 
教師塾「あまから」代表 教師のためのセミナー「詳細辞典セミナー」講師
日本シェアリングネイチャー協会ネイチャーゲームリーダー、日本キャンプ協会キャンプディレクター、日本自然保護協会自然観察指導員、CEEプロジェクトワイルドエデュケーター

国語科の「書くこと指導」「言葉の指導」に力を注ぎ,「書きたくてたまらない子」を育てる実践が,朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞,日本教育新聞などで取り上げられる。県内外で「国語科」「学級経営」などの教員研修,校内研修の講師をつとめる。社会教育活動では,「ネイチャーゲーム講座」「昆虫採集講座」などの講師もつとめる。

★森川正樹の教師の笑顔向上ブログ
https://ameblo.jp/kyousiegao/

 

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