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「無難にこなせる」も立派な長所! トレセン歴がない選手を磨いて約30人のプロを生んだ強豪サッカー部監督が語る長所の定義

公開:2021年5月19日

キーワード:Jリーガーセレッソ大阪全国大会南健司立正大学淞南高校高校サッカー部

中学時代にトレセン歴のような輝かしい経歴がない選手がほとんどなのに、高校時代に個性を磨きあげ、セレッソ大阪のDF松田陸選手、松田力選手を筆頭にこれまで28人ものJリーガーを輩出している立正大学淞南高校の南健司監督。

前回は現在発売中の南監督の著書「常に自分に問え! チームの為に何が出来るか 立正大淞南高校の個とチームの磨き方」から一部を抜粋し、前向きな志向の重要性について紹介しました。

後編となる今回は、立正大淞南がサッカーで大事にしている要素について紹介します。
(構成・文:森田将義)

 

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立正大淞南高校サッカー部(C)森田将義

<<前編:「トレセン歴なし」がほとんどなのに約30人がJリーガーに! 全国常連の強豪サッカー部監督に聞く「個とチームの磨き方」

■誰にも負けない武器が一つでもあれば、選手は成長できる

淞南に来る選手の多くは欠点が多くても、何か一つ誰にも負けない武器を持った選手ばかりです。長所が一つでもあれば選手は成長できると考えています。突出した武器があるから、他の部分も伸びていくのです。

多くの人が、「満遍なく卒なく無難にこなせる」のも才能だと気付いていません。過去にいた選手に、中学の指導者が「ストロングポイントがないから淞南には向いていない。身体能力や体格に優れておらず、パスが正確なだけ」と評する選手がいましたが、確実にパスが繋げるのも武器なのです。

日本は足が速い選手や身長の高い選手を、長所を持った選手として持て囃しますが、私の定義は違います。ピッチに立つ11分の1として、チームが勝つためのプレーができる選手が、長所を持った選手なのです。いくら足が速くても、試合で有効でなければ、長所ではありません。横パスしかできなくても、どんな状況でも落ち着いて正確にパスができるのなら、立派な長所です。

 

■長所があれば弱点を「ごまかす」こともできる

長所さえ持っていれば、短所もカバーできます。選手には、ごまかす力も大事だと常に伝えています。私は大学時代、技術がない選手でしたが、チームメイトはサッカーが私に下手なイメージを持っていないそうです。

とにかくヘディングが強くて、スライディングで突破を止めまくれるのに、左足でインサイドキックができなかった。相手に寄せられると慌ててパスができなくなるため、ボールを奪ったらすぐロングボールを蹴って、自ら「ナイスボール!」と叫ぶような選手でした。

プレッシャーに負ける姿を見せたら、相手に狙われるとも考えていました。私はロングキックが長所だったため、公式戦の緊張感のある舞台でも、弱点を誤魔化せたので、チームメイトに下手な印象を持たれていないのです。

ロングボールという武器を持っていれば、ロングキックを蹴るふりをして蹴らないというキックフェイントもできます。武器が一つあれば、二つの武器を手にしているのと同じと言えるでしょう。

 

■不平不満しか言わない指導者は選手の良い部分を見つけられない

私は良い所探しの天才だと自負しています。学校に対しての不満を一切言わないのも、良い所をたくさん知っているからです。淞南が実施しているサッカースクールでは、選手が子どもに指導するのですが、子どもへの説明が上手い選手がいます。プレーが下手であっても、指導力という良い所を持った選手なので、私は認めています。

不平不満しか言わない指導者は良い部分が見つけられない性格であるため、きっと選手の良い部分も見つけられず凄い選手を育てられません。良い所探しができる性格なのかは、良い指導者と言えるかどうかの条件でしょう。他の仕事でも同じで、「最近の若い奴は」と不満を口にする年配の人は、入社したての頃は会社の上層部の批判をしていたはずです。

 

■サッカーは全てのプレーに本質がある

サッカーは攻守の切り替えが速く考える時間がなさすぎるスポーツですが、野球は次のプレーでどうすれば良いかを考える時間があるため、分析が好きな日本人に合ったスポーツだと思います。それなのに多くの指導者はサッカーの分析をたくさんするうちに難しく考えすぎてしまい、本質を見失った練習メニューや指導法が溢れている気がします。

淞南のグラウンド横の掲示板には、私が就任した当初に記したサッカーの基本をまとめて張り出しています。淞南サッカー部ではAチームの選手として不可欠な10の絶対条件を掲げています。

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掲示板に張り出されているサッカーの基本10か条(C)森田将義

 

1.攻守の切り替えが速く、予測を持って連続で激しく動ける(基本動作)
2.ヘディングが強い(技術)
3.ロングキックができる(技術)
4.トラップの前にステップフェイントがあり、キックフェイントで突破できる(技術)
5.攻守に渡りゴール前で頭から飛び込める(基本)
6.ロングスローが投げられる(技術)
7.精神的に戦える(精神面)
8.全国で勝てる自主練習ができる(想像力)
9.基本練習を実践的に自ら難しくできる(想像力+責任感)
10.素直である(一流選手たる条件)

こうした掲示物を見ると、サッカーの基本は大きく変わっていないのだと思います。サッカーは進化していると口にする指導者がいますが、ボールを出したら周りを見る意識や、チャレンジ&カバー、ラインの押し上げは大昔から変わらないサッカーの本質です。

サッカーの本質が大事と表現しますが、全てが本質なのです。本質を強調しなければいけないのは、本質を抑えていない指導者が増えているからではないでしょうか。

 

■1つの技術だけでなくサッカーに必要な要素をすべて教えること

ドリブルスクールのように一つの技術を切り取って教えるのも間違っているように思います。他のスポーツでは一つの技術に特化したスクールがあるなんて話は聞きません。

同じ野球でも野手とは別種目に近いピッチャーですら、専門のスクールはないのにサッカーにだけ存在するのは不思議です。ラーメン屋に例えるなら、スープにこだわりながらも麺はスーパーで売られているのを使っているような店は繁盛しないのと同じだと言えるでしょう。チャーシューなどの具材だけではなく、器までこだわる店には敵いません。

1つの技術だけでなく、サッカーに必要な要素を全て教えなければ、良い選手に育たないのです。テクニカルなチームが、なぜドリブルの練習をたくさんしているのか意図すらも理解できず、型だけを真似している指導者が多いように思います。

 

■必要な技術はどの年代でも同じ

野球の練習法は日本全国どこに行っても大きく変わりません。それ以上の練習方法がないと行きついているから、30年前も今も同じ練習をしているのです。日本サッカーはまだ行きついていないから違いや流行り廃りがあると考えています。ジュニア年代に応じた練習メニューが提唱されたりもしますが、必要な技術はどの年代でも同じです。教えるべき技術を幼少の頃から、きちんと徹底して指導すべきです。

 

※この記事は常に自分に問え! チームの為に何が出来るか 立正大淞南高校の個とチームの磨き方(竹書房・刊)より抜粋したものです。

 

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南健司監督
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構成・文:森田将義

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