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高校サッカー選手権優勝の静岡学園が、部員が多く1日2時間半程度しか練習できないからこそ身につけたタイムマネジメント術

公開:2020年2月18日 更新:2020年2月20日

キーワード:タイムマネジメント静学静学スタイル静岡学園高校サッカー選手権

今年の高校サッカー選手権で青森山田を逆転で下し、優勝を果たした静岡学園。南米のサッカースタイルをベースに世界で活躍できる選手育成を目指し、足元のスキルなど個人技に優れた静学スタイルは多くのファンを魅了しました。

高校サッカー選手権に出場する強豪校がどんな練習をしているのか、興味を持っている保護者の方も多いかと思います。

静岡学園の部員数は部員は260名。今回の出場校でもトップクラスに選手が多いのですが、練習グラウンドはフルコート1面と小コート1面という環境。グランドを使える時間が限られているなかでサッカーも勉強も両立するために選手たちがどんな工夫をしているか、部のOBでもある齊藤興龍コーチにお話を伺いました。

(取材・文:元川悦子 写真:森田将義)

 

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部員数が多く、練習時間が限られているからこそ自分で時間管理する力が身に付いていく

 

 

■サッカーにフォーカスするだけではダメ、勉強との両立が心身の充実につながる

2020年1月13日に行われた第98回高校サッカー選手権大会決勝。静岡学園高校(通称:静学)が高円宮杯プレミアリーグ王者・青森山田高校に前半から2点のリードを強いられながら、3ゴールを奪って、見事な逆転勝利を挙げたのは記憶に新しいですね。74回大会で鹿児島実業と両校優勝してから24年。ついに悲願だった単独優勝を果たしたのです。

当時、高校2年で、先輩たちの同校全国優勝を目の前で見ていた齊藤興龍コーチ兼部長は感慨ひとしおだったと言います。

「僕らが高校生だった頃のレギュラークラスの選手は、プロか社会人になってサッカーを続ける選手がほとんどで、大学に進学する選手は少なかったんです。自分の代も選手権に出たレギュラーの中で大学に行ったのは僕1人。今は松村優太(鹿島)のようにJリーグに行く選手を除いて、ほとんどが大学に進むようになりました。優勝メンバーの小山尚紀は選手権後にセンター試験を受け、キャプテンの阿部健人はアメリカの大学進学を決意するなど、学業の部分でも非常に意識が高い。そこは大きな違いだと感じています」

静学の文武両道路線が加速したのは、井田勝通前監督(現総合監督)時代の2000年代半ば。「中高6年間の一貫指導」を目指し、中学のサッカー部強化に本腰を入れ始めたことが1つのきっかけになったそうです。

「12歳から選手たちを預かってよい選手に成長させようと思うなら、単にサッカーにフォーカスするだけでは足りません。挨拶や礼儀作法など生活面の基本から徹底させ、人間的な成熟を図って選手を大人にしていくことも非常に重要です。グランドでは『サッカー小僧』、学校では勉強をしっかりする『学生』というようにメリハリをつけることが心身の充実につながる。そう考えて僕自身も指導するようになりました」と齊藤コーチは言います。

 

■部員数260人! 練習前後の空いている時間をどのように使うかが文武両道のカギ

井田前監督が退任して川口修現監督が就任し、学校が草薙運動公園前から現在の東鷹匠町へ移転した2009年以降はよりその傾向が強まりました。学力レベル引き上げを目指す学校側の考えもあって、水準は年々上がり、今では中学の内申点が「5教科の合計が最低16点」でなければ入学が許されなくなっています。

こういった文武両道のスタンスが選手自身や保護者にも好意的に受け止められ、2015~16年頃から部員数が200人を突破。2019年は260人となり、2020年入学組は280人になる見通しです。

しかしながら、練習環境は齊藤コーチが高校生だった頃と変わっていません。静学の練習場は現校舎から自転車で約30分の距離にある谷田グランド。ここはフルコート1面と小コート1面しかないため、300人に迫る勢いの部員全員を一度に練習させるのは不可能です。そこで、200人を超えた4~5年前から午後練習の2部制を導入し、効率的にトレーニングできるような工夫を凝らしているといいます。

「静学サッカー部員の1日は6時半の朝練習から始まります。僕らの頃は旧校舎の校庭か草薙運動公園で毎日朝5時半からやっていましたが、現校舎に移ってからは時間を少し遅らせて回数も週4回に減らし、近隣住民への配慮から音の出るリフティングなどを控える形で実施しています。

この朝練の際、スタッフ間で選手たちの授業や学校行事などの予定を確認し、話し合いの中で臨機応変に午後練習の時間の振り分けを決めます。学校は8時の朝学習からスタートしますが、1年生は毎日7限まであり、2・3年もコースによっては7限に出席しなければいけない。授業終了は16時15分とかなり遅いので、16時半からの1部練に参加するのは難しくなります。そういった事情をしっかりと把握したうえで、どのチームを何時から練習させるかを決めています。

今年の場合は5チーム編成でしたから、A・B・Cチームが16時半~18時半、D・高校1年チームが18時半~20時半か21時までといった2部制で形で活動していました。選手権に出たAチームの選手でも毎日早い組と決まっているわけではない。帰宅が遅くなることもあったと思います」(齊藤コーチ)

遅い組になった選手は練習までの待ち時間が生じます。その空いている時間をどう使うかが文武両道の大きなポイントです。川口監督や齊藤コーチは「空いている時間をどうするか自分で考えろ」と常日頃から口癖のように言って自主性を促していましたが、大半の選手が図書館や教室で学校の課題や予習復習をこなしていたというのですから、意識の高さに驚かされます。

 

■誰にとっても1日の時間は有限だから、自ら時間の管理することが重要

実際、高校生がサッカーと学業を両立させたいと思うなら、1日のどこかで勉強時間を作らなければいけません。部活動に励んでいる普通の高校生の場合、放課後はグランドに出て練習し、18時頃には終えて帰宅。食事や入浴を済ませてから勉強するというパターンが一般的です。けれども、静学のサッカー部員は練習環境の問題があって全員がそのサイクルで動けるわけではありません。2部練に参加した選手は帰宅が21~22時になるため、その後に勉強するのはかなり難しいです。選手である前に成長期の子どもたちには休養も大事だからです。だからこそ、選手それぞれの空いている時間を有効活用することが肝要なのです。

「自ら時間を管理していくことは非常に重要なテーマです。『一日の中での細かい隙間時間や月曜日のオフの使い方、土曜日や日曜日の空いている時間を効率的に使うことが大切である。将来のなりたい自分に近づくために、努力に時間を使おう』といったアドバイスを個別、あるいはチームごとにアプローチを行っています」と齊藤コーチは言います。

そういう日々の積み重ねが静学の文武両道の実現につながっている。そこは特筆すべき点と言っていいのではないでしょうか。

 

 

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齊藤興龍(さいとう・おきたつ)
1978年生まれ、静岡県田方郡函南町出身。静学DFとして75回選手権ベスト4の原動力に。97年春に国士舘大学へ進み、2001年に母校の教諭に。
中学サッカー部強化に着手した1年目から中学でコーチなり、現在は高校サッカー部の部長兼コーチを務める

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取材・文:元川悦子 写真:森田将義

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