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「チームプレーができない選手は個人でも活躍できない」Jのアカデミーを下して日本一、Jリーグ育成組織より強い街クラブが行う育成とは

公開:2019年8月20日

キーワード:Jリーグ育成組織ジュネッス大阪バーモントカップ全日本U-12少年サッカー大会日本一育成街クラブ

普段練習するのはフルコートがとれない学校の校庭。先着順で選手が加入するため、サッカー歴が浅い選手も珍しくありません。

どこにでもある普通の街クラブと言える「大阪市ジュネッスFC」ですが、昨年度はJFAバーモントカップで初出場ながらも日本一になると、全日本U-12サッカー選手権大会でも準優勝。個人としてもクラブOBのDF起海斗選手がレノファ山口FCへの入団を果たしました。

街クラブでもJアカデミーと互角以上に戦えるのはなぜなのか。清水亮監督の言葉から、ジュニア年代の育成についてのヒントを探ります。
(取材・文:森田将義)

 

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昨年はバーモントカップ初出場で日本一、全日本U-12少年サッカー大会でもJクラブと互角に戦い準優勝したジュネッス大阪

 

■指導者が戦術を押し付けても子どもたちにはキャパオーバーなことも

2013年に全日本U-12サッカー選手権大会に出場して以来、6年で2回出場。「全国に行けるようになったのは、11人制から8人制になってスペースが広くなった恩恵が大きい。僕らは運が良いだけ。全国に行けた代はミラクルなプレーも多くて、選手も僕も持っていた。あんなに上手く行くとは思わなかった」と清水監督は話しますが、試合内容や練習での声掛けなど細部まで拘った指導が結果と育成を両立するジュネッスの秘訣かもしれません。

特徴的なのは試合への挑み方です。普段のリーグ戦では選手の成長のためにはジュネッスらしい技術・判断に拘ったサッカーを展開しますが、指導者が戦術を押し付けてしまうと子どもたちの頭がいっぱいになり、思い切ってプレーできないリスクもあります。そのため冬の全日本U-12サッカー選手権大会で、ジュネッスらしいサッカーで勝つことを目標に、戦術を与えず思い切ってプレーする試合と戦術的に戦う試合とを意図的に使い分けています

例えば、新チームを立ち上げてすぐは戦術的な指示を与えず選手がどんな動きをするのか個性をチェックします。また、格上と言えるJリーグのアカデミーとの対戦では勝つために細かく戦術を与えたくなりますが、あえて清水監督は戦術的に戦いません。Jリーグアカデミーとの試合は子どもたちにとって特別です。試合前からユニフォームやチーム名に怯んでしまい試合開始すぐに連続失点することが多いため、戦術よりも思い切ってプレーする方が大事だと考えるからです。

 

■相手も同じ小学生、ビビる必要なし! と背中を押してやる

「Jリーグのアカデミーと対戦する際は、今持っているベストプレーができなくても何が何でも戦うという姿勢を見せて欲しい」と話す清水監督は、選手たちにこんな話をするそうです。「同じ小学生なのに何をビビッているんだ。相手はセレクションで合格した選手ばかりかもしれないけど、お前たちもジュネッスの中で選ばれてピッチに立つ選手なんだから、自信と誇りを持ちなさい」。

今年7月にリーグ戦でセレッソ大阪U-12と対戦した際も清水監督は細かい戦術を与えず、選手をピッチに送り出しました。暑さの中で行われた一戦とありクタクタになりながらも選手はチームメイトのために懸命に走り、1-0で勝利したのです。

「昨年(のチーム)みたいに上手くはないけど必死に走って、彼らなりの良さが出た試合。もう少しサッカーの内容は突き詰めないといけませんが、懸命に戦って勝った経験は絶対次に繋がる」と清水監督は話します。戦術的に戦うメリットと同様に戦術的に戦わないことで得られるメリットがあります。指導者は状況に応じた使い分けが必要と言えるでしょう。

 

■チームプレーができない選手は個人でも活躍できない

戦っていたのは選手だけではありません。清水監督もベンチから大声で守備についての指示を送り、選手を鼓舞し続けました。「やっていて楽しい、観ていて楽しいサッカー」をスローガンに掲げるため勘違いされることも多いそうですが、サッカーを楽しむつもりで練習会に参加した選手が叫んでいる清水監督に戸惑うことも珍しくありません。そうした選手に対しては「楽しさの中に厳しさも必要」と伝えています。

ただ楽しいだけでは試合に勝てません。楽しい=ラクではないのです。そこをはき違えてはいけません。勝つためには厳しい状況を乗り越える経験も必要なのです。

褒めることは大事にしていますが、叱るべき時にはしっかり叱るのが清水監督の指導法で、厳しい言葉によって子どもたちが泣くことも時にはあるそうです。そのため、スタッフで気をつけているのは指導者の気持ちの切り替えで、怒った後は一緒にボールを蹴ってすぐに仲直りするのがジュネッス流です。「最初に叱る時はあえて大きな声で言いますが、人格否定などはせず、起こした言動について叱るようにしています。(漫才・コントなどの)ハリセンと同じで音は大きく鳴るけど実際はそんなに痛くない。大きな音で子どもに気付かせるのが大事だと考えています」。

セレッソ戦での勝利のように苦しい時こそチームのために頑張る気持ちを求めるのもジュネッス流の一つで、清水監督は「プロサッカー選手や日本代表になりたい気持ちは分かる。でも、何のためにサッカーをしているのかも考えて欲しいし、ジュネッスというチームを選んだのならジュネッスのためのプレーもして欲しい。チームプレーができない選手は個人としても活躍できません。周りを活かしながら、自分も活かしてもらう考え方を説かないと小学生年代は『自分が』という気持ちばかりになってしまう」と口にします。こうした指導法や考え方は子育てにも役立つかもしれません。

後編では、ジュネッス大阪がどうして人間教育に力をいれるようになったのか、そのきっかけや子どもたちの個性に合わせたアプローチの方法などを掘り下げます。

 

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清水亮(しみず・りょう)
大阪市ジュネッスFC副代表/ジュニア監督
チームとして「スポーツ、サッカーは本来楽しいものであるべき」、「高い技術を持ち、個性豊かな自分自身の意図、判断、工夫でプレーできる選手を育てること」を指導方針に掲げ、サッカーの楽しさ、おもしろさから入って、年齢、技術、体力の向上に伴ってより本格的なトレーニングを実施している。

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取材・文:森田将義 写真提供:ジュネッス大阪

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