1. トップ
  2. コラム
  3. 考える力
  4. ゆるい指導なのに強い大豆戸FCが支持される理由は「持続可能なクラブマネージメント」

考える力

2017年12月 8日

ゆるい指導なのに強い大豆戸FCが支持される理由は「持続可能なクラブマネージメント」

キーワード:やる気大豆戸FC指導者池上正育成自主性

読者のみなさんはご存知のように、サカイクの連載コラム『蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~』を執筆している島沢優子さんは、少年サッカーのカリスマ指導者と言われる池上正さんの書籍や連載のお手伝いを10年やってきました。

叱らず、指示せず、選手を縛らない指導でスキルを伸ばす。

前編では、そんな「池上さんスタイル」で結果を積み上げた「NPO法人大豆戸フットボールクラブ」の躍進の秘密を紹介しました。後編は同クラブ支持される理由を探ります。(取材・文:島沢優子)

mamedo2.jpg
(写真提供:大豆戸FC)
<<前編:「ゆるい指導じゃ強くならない」と言われたけれど......周囲の予想を裏切った町クラブ躍進の秘密

■今や都内・他県から指導者が見学に来るほどに

現在の高校3年生が小学3年の年から実に9年。子どもたち自らがサッカーを楽しめる環境を整えるには時間はかかりましたが、魅力的なクラブに成長しました。今や都内や他県から「練習を見たい」「話を聞きたい」と見学に訪れるサッカー関係者もたくさんいます。

町クラブながら、神奈川県の強豪クラブのひとつとして君臨する大豆戸FCは、他のコーチからも支持されているのです。
「大豆戸はいいチームですよ。選手が本当に楽しそうにやっている」(横浜市内のコーチ)
「大豆戸の試合は罵声とか余計な指示が一切なく、勉強になる」(都内のコーチ)

首都圏で指導するある指導者は「神奈川に遠征に行くとよく大豆戸の名前を聞く。いい指導をしているそうなので、一度訪ねてみたい」と言います。そのコーチは数年間指導していたクラブを昨年辞めました。代表コーチと指導理念が合わなかったそうです。

怒鳴って、やらせて、厳しくしたほうが伸びると信じて疑わない代表と、池上正さんや大豆戸FCのように「自分で考えてやらせたい」と考えるコーチの間で溝が深まったのだそうです。彼のように指導方針の違いでクラブを辞め、他チームに移る若手コーチは決して少なくありません。

他のクラブへ移るのであればコーチのキャリアは続きますが、なかには指導自体をやめてしまう人も少なくないと聞きます。J最盛期に選手だったり若手コーチだった人たちの多くが30代。家庭を持つなかで、正規雇用が決して多いと言えないプロコーチ市場は厳しいものに映るようです。

Jリーグは来年に設立25周年。サッカー人気の上昇とともに登録数、クラブ数、指導者数と増えていったものの、ここへきて上げ止まり感は否めません。

■指導者の雇用環境整備が、指導内容をブラッシュアップする基盤に

ジュニア層のクラブがさまざま課題を抱えるなか、大豆戸のクラブ運営は異彩を放ちます。

小中とも、各学年(カテゴリー)の選手数は30数名。通常はA・Bの2チーム体制で、それぞれにコーチがつきます。専任の指導者は末本さんを含め8人。全員が正規雇用、つまり社会保険のついた「正社員」なのです。それ以外に非常勤のスポットコーチがいて、ラモス瑠偉さんの長男であるラモス・ファビアーノさんなどがスタッフに名を連ねています。

サッカーはもちろん、どんな競技のクラブでも運営基盤の強弱はイコール、スタッフの雇用状況の良し悪しではないでしょうか。そう考えると大豆戸のクラブ運営は非常にうまくいっているように映ります。

前編で述べた子どもの「余裕」は、そのまま指導者の余裕につながるのですから。

逆に、長い練習、たくさんの試合、遠方への遠征が続けば、過去の大豆戸のように子どもが「あと伸び」しないばかりか、指導者側も移動時間を含めた拘束時間は週60時間の「過労死ライン」に簡単に到達してしまいます。

末本さんは「一般企業に比べて、まだまだ労働時間は長いと思う。さらなる働き方改革を推進しなくてはいけません」と話しますが、他クラブに比べれば雇用の状態は悪くないはずです。

大人が疲労困憊でフラフラしていては、子どもをしっかり見ることなんてできないと思います。スタッフの雇用が安定しておらず、定着しない状態では、指導実績を積み上げられません。特にうちのクラブは小中一貫指導なので、指導者が同じメンバーで、共通のビジョンを持ち、試行錯誤の繰り返しを蓄積し、長く活動することでブラッシュアップできます」(末本さん)

小中でコーチの入れ替わりも当然あります。ずっと小学生ばかり見るわけではないため、中学生の指導をして発見したことをジュニア育成に生かすこともできるし、その逆も然りです。

次ページ:持続可能なチームマネジメント

サッカー少年の子育てに役立つ最新記事が届く!サカイクメルマガに登録しよう!

※メールアドレスを入力して「登録」ボタンをクリックしてください。

メールアドレス

1  2
文:島沢優子

関連する連載記事

関連記事一覧へ

関連記事

関連記事一覧へ

考える力コンテンツ一覧へ(291件)

コメント

  1. トップ
  2. コラム
  3. 考える力
  4. ゆるい指導なのに強い大豆戸FCが支持される理由は「持続可能なクラブマネージメント」