■体育会の文化は、考え行動する力を阻害する
「人災」に対処する人材育成と言う観点では、“リーダーシップ”が最大のキーだと思われます。平時には目立たない社会的なリスクが、非常時には顕在化します。「リーダーシップの内容/スペック」を具体的に検討すれば、「決断」と「実行」に尽きます。つまり、ここで必要なのは、「自ら考える力」と、それを「実行する身体の力」です。
「頭と心と体」を一致するためには、スポーツが一番有効であることは、いま一度強調しておきます。ただし、これまでの日本の体育教育は、身体の動きを重視し、“考える力”を軽視してきた嫌いがありました。コーチや先輩の言う事には絶対服従といった、いわゆる「体育会」的な文化は、「自ら考え、行動する力」を育成する上では、むしろ阻害要因となります。スポーツは「心と体のバランス」をとる上でも有効です。
近代スポーツは19世紀の中ごろに、英国のパブリックスクールで誕生したものですが、当時のスポーツは「スポーツマンシップ」を示すゲームだと考えられていました。「スポーツマンシップ」こそは、「自ら考え」「他者を尊重し」「勇気をもって」「誠実に行動する」心性を指すものです。そして、スポーツはスポーツマンを育てる場なのです。(この点でも錦織君は良いお手本を示してくれました。)
そこで、「スポーツマンシップ教育」を導入し、リスクの多い現代の社会生活においてしなやかに生きる「レジリエンス能力」を身につける人材を育成すること。同時に日本という社会のレジリエンス能力を高めるための人材教育を開始すること。この事が日本にとって、今ほど大切な時はないと思います。
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文 広瀬一郎 写真 田丸由美子