テクニック

2012年5月29日

どうすれば弾丸シュートが打てる!?スーパープレーを科学で解決!

■腕を大きく広げれば、足を思い切り振り抜き弾丸シュートが打てる!

 ここでしばらく姿を見せなかった平瀬智行さんが、「のり巻き」のようなスポンジを上半身に巻かれて登場しました。今度は、のり巻きを巻いた状態と巻かない状態で平瀬さんにシュートを打ってもらい、シュートの速度がどれだけ違うかをスピードガンで測定する実験を行いました。まずはのり巻きを巻いた状態でシュートを打つと速度は72km/h。続いてのり巻きなしで上半身を自由にしてシュートを打つと速度は96km/hとなりました。
 
 この実験で説明したかったのは、回転するもの、例えば回っているコマが回り続けようとしたり、止まっているコマが止まり続けようとしたりすることを「慣性モーメント」と言いますが、この原理が弾丸シュートを打つ時に重要になるということです。
 
のり巻き?に巻かれた平瀬智行さんがシュートを放ちます
 
 平瀬さんがのり巻きをしていて腕が縮こまった状態では、上半身は半径の小さいコマのような感じになり回りやすくなります。この状態だと下半身にある足は回りづらくなり、思い切り振り抜くことができず、強いシュートを打つことができません。
 
 一方、平瀬さんはのり巻きなしでシュートを打った際、腕をしっかりと広げてシュートを打っていました。腕をしっかり広げると、上半身は半径の大きいコマのようになり、「なかなか回らない」状態となります。こうなると上半身が安定し、下半身にある足は思い切り振り抜けるようになって、弾丸シュートが打てるようになります。
 
 「シュートを打つ時は腕を開いて上半身を安定させることが大事」ということを経験則から学んだ方も多いかもしれませんが、この経験則は科学的な視点「慣性モーメント」という視点からも正しいことだったのです。なお、右足で蹴る時には上半身を時計回りにひねると、左足で蹴る時には上半身を反時計回りにひねると、よりシュートの威力が増すという説明も稲田先生から補足されました。
 
回転する台に乗って、手を開いたり閉じたりして下半身がどの程度回転しやすくなるかを実験中の宮本恒靖さん
 
 

■「慣性モーメント」を「ねじれコプター」で体感!

 最後にこの「慣性モーメント」を理解してもらうため、参加者全員で「ねじれコプター」を作りました。ねじれコプターは羽が上下2つずつ付いています。ねじれコプターは人間の体をちょうど逆さまにしたものと考えると、下の羽(上半身)をしっかり固定し、ゴムの付いた上の羽(下半身)をたくさんねじった後手を離すと、上の羽が勢いよく回り出し、ねじれコプターを上に高く飛ばすことができます。
 
ねじれコプターの説明をする稲田先生
 
 このねじれコプターを親子で協力して作成し、最後にみんなで飛ばしました。ほとんどの参加者の親子がねじれコプターを高く飛ばすことができ、「慣性モーメント」の原理をしっかり学んで科学実験プログラムは終了となりました。
 
 なお、参加者の皆さんは科学実験プログラムの後サッカー教室を行い、その後ベガルタ仙台-名古屋グランパス戦を観戦。この試合のベガルタ仙台の1得点目、梁勇基選手のシュートは上半身をしっかり開いて、筋肉の付いた足を素速く振り抜いた見事なシュートで、このサイエンススクールで取り上げたことを全て実践したお手本のような弾丸シュートでした。参加者の皆さんは上半身を安定させることの大切さをスクールと試合観戦を通じて学べた一日になりました。
 
親子で仲良くねじれコプターを作りました
 
 科学実験プログラムを監修した講師の稲田先生は昨年のサイエンスサッカースクールの体験を踏まえ、「いろんな科学で解き明かせるものはありますが、よりインパクトのあるものをと思い、テーマに弾丸シュートを選びました」と今回のプログラムについて説明。参加者の保護者の皆さんからは「何となく分かっていたことを分かりやすく説明してもらえてとても勉強になりました。体も動かせて楽しかったです」「親子でやるプログラムが多くて楽しかったですし、良い汗もかけました」という声が聞けました。また、子ども達も「理科もサッカーも好きなので、どっちも勉強になりました」と楽しく弾丸シュートの原理を学べたようです。
 
みんなでねじれコプターを高く飛ばしました
 
 今年は6月30日に川崎、8月26日に甲府、10月に熊本での開催が予定されており、全て今回と同様に弾丸シュートのプログラムで行われます。ゲストのJリーガー宮本さんは「トラップも大事なので動きながらどう止めるかなどサイエンス的にできると良いのでは」、平瀬さんも「来年はぜひトラップをやって欲しいですね」と今度はトラップを科学してほしいという要望がありました。今後のサイエンスサッカースクールの展開もとても楽しみですね。
 
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