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身体が大きい=GKではない。 「勇気」も評価の指標!? GK大国ドイツから世界レベルのキーパーが生まれ続ける理由

公開:2018年8月 9日 更新:2018年8月21日

キーワード:GKゴールキーパーテア・シュテーゲンドイツ代表ノイアー川原元樹

■身体が大きい=GKではない! 適正や「勇気」指数も評価

――ゴールキーパーの人気についてはどうですか?

他の国に比べると、人気のポジションだと思います。もちろんゴールキーパーだけが飛び抜けて人気というわけではないですが、ノイヤーがバロンドール候補になったりするので、ゴールキーパーをやりたい子も多いです。ただ現在のドイツでは「身体が大きいから」という理由だけでゴールキーパーに指名されることは、幼少期はあまりありません。身長に関しては、将来どうなるかはわからないので、それを理由に判断するのはどうなのだ、という考え方なのだと思います。いま目に見える能力、たとえば運動能力色々な動きが器用にできること、教えたことをすぐに身につけられるという能力を重視します。

――ゴールキーパーを目指す子どもにとって、大切なことは何でしょうか?

先ほどあげた運動能力もそうですが、一番はメンタリティだと思います。最近ドイツサッカー協会で働く友人と、「育成年代の選手をスカウティングする際のゴールキーパーに必要な『タレント』とは?」というテーマで話をしていました。その際、ドイツでは現在主流になってきているのが「ゴールキーパーに必要なメンタリティを備えた選手」と言っていました。それは勇気、闘争心、リバウンドメンタリティ、コミュニケーションなどです。コミュニケーションの中には自分とのコミュニケーション、味方とのコミュニケーション、コーチや親とのコミュニケーションなども含まれています。トップレベルの選手になるためには、身長は最低限必要なものですが、そこだけを評価対象にしてしまうと、重要なメンタリティの部分を見落とすことになってしまいます。ドイツの「タレントターク」と言われる、トレセンセレクションでゴールキーパーを選ぶときは「勇気」を測るプログラムもあるぐらいですから。

――メンタリティや勇気を測るプログラムがあるとはすごいですね。

詳しいプログラムは説明しづらいのですが、私がドイツで指導をしていたときに、8、9歳の子どもの中に、大人が蹴ったボールに対して、臆することなく向かっていく子も少なくなかったです。私も多少の手加減はしますが「もっと強いシュートを打ってくれ」と言うんです(笑)。怖がらずにボールに向かって行くことができるのも、ひとつの才能ですよね。

――日本人は欧米人と比べて平均身長が低いので、子どもの時点で背が高いというのはゴールキーパーとしてプラス要素ですが、ドイツ人は基本的に大柄ですよね。将来的に身長はそれなりに伸びるだろうと仮定した中で、運動能力やメンタリティをチェックしているのですね。

ゴールキーパーにとって、メンタリティは本当に重要だと思います。FCバルセロナリカルド・シガラGKコーチとお話をさせていただいた時、「バルセロナのトップチームでは、身長190cmはひとつの目安だが、大事にしているのはメンタリティだ」と言っていました。「育成年代から指導をして、トップチームに上がる年代になったときに、技術が10段階で4のレベルの選手を8や9にすることはできる。でも、メンタリティが4の選手を8や9にするのは難しい。できても6ぐらいだろう」ということです。ドイツにもメンタルトレーニングを取り入れているチームはあるので、トレーニングをすることで多少伸びるとは思いますが、プロになるために必要なメンタリティがレベル8だとしたら、3や4のレベルでアカデミーに入ってきた選手を、アカデミーの指導だけで8にして卒業させるのは難しい。負けん気や挫折した時に乗り越える力は、周りに引っ張りあげられることもあるでしょうが、もともと持って生まれたものや、育った環境で身につけた部分が大きいのではないかと思います。ですので、選手の「こころ」の部分はプレーの部分だけで指導するのではなく、選手のご両親とも連携しながら、その子の「勇気」を育んでいくことが非常に大切だと思います。

川原コーチのお話はいかがでしたか。

日本で、特に小学生年代では身体が大きいという理由でGKに抜擢される子も少なくありませんが、ドイツでは「勇気」指標も良いGKの基準としてプログラムされているのだそうです。

運動能力や、メンタル的に向いている子を選ぶことで、子ども自身のモチベーションが高く維持されることもいい選手へ成長するカギと言えそうです。

「スポーツのこころ」を説いている岐阜経済大学の高橋正紀先生も、中学や高校など上のレベルに行くほど、やる気のない者や自分でモチベーションを上げられない者は置いて行かれると言います。こころはサッカーの練習環境だけでなく、家庭で育まれる部分が大きいですので、保護者の皆さんはお子さんが何かで失敗したときに挫けずに何度も挑戦する姿勢をサポートしてあげてください。

次回は、日本が良いGKを輩出するための課題と、小学生から意識しておきたいシュートを止めるための「準備」についてご紹介します。

後編:「GKは準備が9割」ドイツでGK指導を務めたコーチが教える、ゴールを守るために大事な"予測">>

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(C) Kaz Photography/FC GIFU

川原元樹(かわはら・もとき)/GKコーチ
大学卒業後ドイツに渡り、ケルン体育大学に通いながら、GKとして6部リーグでプレー。指導者転向後は、GKコーチとして名高いトーマス・シュリーク氏のもと、アルミニア・ビーレフェルトで育成からトップまで指導を行う。ハノーファー96ではU17のGKコーチ、酒井宏樹の通訳としてトップチームに帯同。VFBシュツットガルト、バイヤー・レバークーゼン、TSGホッフェンハイム、シャルケなどの育成チームで研修を積んだ後、2013年松本山雅FCアカデミーのGKコーチに就任。2017-18シーズンからはFC岐阜のGKコーチを務めている。

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文:鈴木智之 選手写真:新井賢一

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