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こころ

「高すぎる目標はプレッシャーになる」いまこそ振り返りたい"日本サッカーの父"の言葉

公開:2015年9月25日 更新:2021年1月27日

9月17日、“日本サッカーの父”と呼ばれたドイツの名指導者デットマール・クラマーさんが90歳で亡くなられました。1964年の東京五輪に向けたサッカー日本代表の強化を目的として来日以降、指導者養成やユース育成等の礎を築いた人物です。68年のメキシコ五輪では、日本の銀メダル獲得にも貢献しています。日本や母国ドイツのみならず、世界90か国以上でサッカーの普及・強化活動を精力的に行われ、11年にはドイツサッカー協会より初の名誉指導者として表彰されました。最後にお会いした時には85歳とご高齢にもかかわらず、「今でも定期的に体は鍛えているよ」と笑っていました。「指導者が自分を律し模範となることなく、どうして選手に要求することができようか」と最後の最後まで指導者の鑑でした。本質をついたクラマーさんの言葉はサッカーの世界だけではなく、人生一般にも通じる深いものがたくさんあります。その中から、私が感銘を受けたいくつかの言葉を今回はご紹介します。(取材・文 中野吉之伴 写真 Getty Images)
 
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■審判の判定に文句を言わない気持ちのコントロールは親にも必要

『偶然が人を支配する。人が偶然を支配することはない。人は偶然の犠牲者なのだ。偶然に対して激高するのではなく、それを受け容れ次のプレーに望むことが大切だ』
 
サッカーボールは丸い。だからいろいろなことが起こります。サッカーの試合ではまったく予想もつかないことがよく起こるものです。放ったシュートがポストの内側に当たり、ゴールラインを超えそうになりながらまたフィールドに戻ってくることもあります。味方選手に出したパスが審判に当たることも、相手選手がこちらの予想通りの戦い方をしないこともあります。
 
偶然の範疇には審判の判定も入るのかもしれません。もちろん可能なかぎり正確な判断はされるべきですし、審判の技能も向上されなければ試合の質が上がってくることはありません。本気で試合に臨む選手の気持ちをないがしろにするような審判の不安定な判定には誰だってイライラさせられます。当然ミスがあればしっかりと改善されるように対策は練られるべきです。しかしだからといって、その瞬間で周りがどう叫ぼうとも試合は進んでいきます。目の前の「小さな正しさ」にこだわるあまり、「今日は不運だった」と試合全体の流れを手放すのはあまりにももったいない。気持ちをコントロールすることは選手だけではなく、指導者、そして観戦に来ている保護者にも求められるはずです。
 
クラマーさんはそうした自分の弱さと立ち向かう言葉として「大和魂」という日本古来の言葉を引用していました。そこにはクラマーさんの深い思い入れがあるのです。
 

■親だからこそ「つい」「悪気はない」と言い訳をしてはいけない

『私にとって大和魂とは自分を征するということだ。ドイツでは【苦しいことを征する主とならなければならない】ことを自分を征すると考えられている。これは日本の古き良きしきたりにも通じるものだと思うのだ。大和魂とはそういうものではないか。これは生きるために必要な哲学なのだ』
 
苦しい時、投げ出したくなる時、でもそこでぐっとこらえて耐えなければならない。一見すると、試合後の罰走について否定的な見解を示した前回の記事と矛盾する内容かもしれません。しかし文中でも指摘しましたが、厳しい練習そのものが必要ないというわけではなく、「どのように厳しい練習を課すのか」という点が重要だと強調しました。試合や長時間の練習後に“罰”という理由で追加練習を加えることはネガティブにしか作用しないのですから、選手のパフォーマンスをさらに上げるためには練習の質を向上させるのが必要不可欠になります。ここでの質とは量と反比例するものではありません。質を求めるトレーニング=量が少ないトレーニング、ではないのです。質の高い練習とは限られた練習時間の中でも十分にへとへとになるだけの負荷がコントロールされている練習のことを言います。練習時間内に技術や戦術だけではなく、選手に戦う気持ちを最大限に要求していく、勝つことへのこだわりを植え付けていく、レベルアップするために自分と向き合っていくことの大切さを伝えていく。その中で厳しさと立ち向かい、歯を食いしばって戦うことも学ばなければならないのです。
 
この言葉は両親の立ち振る舞いにも通じるものだと思います。例えば「感情的に応援することはダメだってわかっているけど、どうしても……」というお父さんお母さんは多いかもしれません。でも子どもたちに冷静にプレーすることを要求するなら、われわれ大人も「自分を征する」努力をしなければならないはずです。大人だけが「つい」「悪気はないから」と言って、やってはいけないことをして許されるわけがないのですから。応援に気持ちが入るのはわが子や自分のチームに頑張ってほしいからでしょう。何とか勝ってほしいからでしょう。それは自然な感情です。でも知らないうちにハードルを高くしすぎていませんか?
 
次ページ:設定した目標が子どもの負担になっていませんか?
 

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取材・文 中野吉之伴 写真 Getty Images

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