こころ

2015年1月13日

サッカー王国ブラジルの"負けん気"の育て方

昨年、U16、U19日本代表が立て続けにアジア選手権で敗退し、世界への切符を逃しました。選手のメンタルに問題があったと指摘する声を聞くたびに、筆者はワールドカップ期間を含む1ヵ月を過ごしたブラジルを思い出しました。
 
ピカピカの天然芝での試合や裸足限定のストリートサッカー、美しい海岸線でのビーチサッカー、ファベーラと呼ばれるスラム街のコンクリートコートなど、色々な場所、シチュエーションでたくさんの子どもたちとボールを蹴りました。
 
ワールドカップ最多の優勝回数を誇り、“サッカー王国”と呼ばれるブラジルでは、あらゆる場所で、子どもたちがボールを蹴ります。サッカーが生活に根付き、「習慣となっている文化を肌で感じ、“サッカー王国”たる所以を改めて思い知らされました。
 
今回は、そんなサッカー王国・ブラジルの子どもたちと、筆者が立命館大学スポーツ健康科学部在籍中に指導した“サッカー途上国”の日本の子どもたちとのプレーの様子を客観的に比較しました。
 
現状、ブラジルと日本とではどの程度の「レベルの差」があるのか。実際に子どもたちと一緒になってボールを蹴った経験から感じた“メンタルの差”に着目しました。(取材・文 岡島智哉 写真 遠藤由次郎)
 
 

■負けたくないという気持ちの差

意外に思われるかもしれませんが、日本とブラジルの子どもを比べたときに、トラップやドリブルなど、細かい技術レベルはほとんど差がありません。もちろん驚くような技術、アイデアを持っている子どももいましたが、それは日本の子どもたちにも言えることです。
 
むしろ、ボールを足元に置く技術や細かなドリブルは、日本の子どもたちのほうが上かもしれません。
 
そもそも代表レベルにおいても、日本代表の“技術力”は世界レベルだと言われています。細かいボールタッチの技術やアジリティを活かしたドリブルは、日本人のストロングポイントです。ブラジル人に遜色ない技術を日本の子どもたちは持っていると言えるでしょう。
 
しかし、メンタルの部分においては、明確な差を感じました。ブラジルの子どもたちは、とにかく負けず嫌いが多い。ピッチ上では度々口喧嘩が起こります。喧嘩相手はたいていがチームメイト。「なぜパスをしないんだ!」「じゃあお前はしっかりディフェンスしろよ!」といった内容を激しく言い合います。シュートに躊躇してチャンスを潰そうものなら、チームメイトからの容赦ない罵声が浴びせられます。
 
華麗にゴールを決めた際には、仲間同士抱き合って喜びを爆発させていたので、もちろん仲が悪いわけではありません。
 
思ったことは我慢せずに口に出し、とにかく「負けたくない」という思いからガムシャラにプレーする。 彼らを“未熟な子ども”と捉えることもできます。しかし、その姿は実に子どもらしく、純粋そのもの。
 
一方、日本の子どもたちはどうでしょうか。私は日本で4年間、小学生年代を対象にした指導者としての活動を行ってきましたが、ブラジルの子どもたちのようなチームメイトとの言い合いや衝突の場面、あるいはゴール後に喜びを爆発させる場面に、ほとんど遭遇したことがありませんでした。
 
日本の子どもたちを見ていると、チームメイトはもちろん、指導者や保護者の顔色を伺っているのか、感情を表に出さぬまま黙々とプレーする子どもが多いように感じます。
 
言い換えれば、“子どもらしさ”が足りない。負けず嫌いという人間の本能を、胸にしまい込んだままプレーしているのではないでしょうか。
 
試合に負ける、シュートに失敗する、ドリブルで置き去りにされるなどといった失敗経験は、サッカーをしていれば必ずあります。それに対して、「悔しい」「次こそは」といった負けず嫌いの感情を次のプレーに活かさなければ、さらなる成長は見込めません。
 
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